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cruising with ruben & the jets

9. QSTを徴収しなければならないのは誰か
 
 一般に、QST制度の下で登録しており、ケベック州内で課税対象の譲渡等をする全ての事業者は、小規模事業者を除いて、州税庁(Ministere du Revenu Quebec:MRQ)から委任を受けているため、受取人からQSTを徴収し、州税庁に納付する義務があることになる。
 州税庁のためにQSTを徴収する義務に加えて、事業者は各課税期間における差引税額を計算し申告書を提出する必要がある。
「差引税額」とは、事業者によって徴収されたQSTから仕入税額及び、一定の場合によっては適用される他の控除額や払い戻し額を控除した額である。「差引税額」がプラスであれば、事業者はそれを申告とともに納付しなければならない。差引税額」がマイナスであれば、事業者はそれを申告により還付の請求ができる。
 
 例外として、ケベック州外で作られたものの譲渡等を受けた者は、一定の場合には、自己申告をする義務がある。
 これは、ある者がケベック州内に持ち込んだ、または何らかの理由で持ち込むことになった有形資産の場合で、その者が税金を支払っていたとしたならばその資産に関して仕入税額控除を行うことができなかった場合である。
 言い換えれば、ケベック州内に資産又はサ-ビスを持ち込む、又は、持ち込む状況になってしまった者が登録事業者であり、その資産をその者自身の事業活動だけに消費、あるいは使用する場合を除いて、その者は必ず自己申告をしなければならないということである。
 同様に、ケベック州在住の者が州外で課税対象(ゼロ税率取引を除く)となる無形動産の譲渡を受けた場合や、ケベック州外でサービスの提供を受けた場合には自己申告をする必要がある。これは、その者が税金を支払っていたとしたならば受けられる仕入税額控除の控除を受ける権利がない場合に限られる。
 言い換えると、その譲渡等がその者の事業活動の課程で消費または使用されない限り、ケベック州外において、課税対象となるゼロ税率取引以外の無形動産の譲渡等を受けたり、サービスの提供を受けた者は自己申告をしなければならないと言うことである。
 
10. 譲渡等の種類
 
 QST制度における譲渡等には三種類ある。税率7.5%の譲渡等、ゼロ税率の譲渡等(0%による課税対象の譲渡等)、そして非課税の譲渡等である。
 
 課税対象になるのは事業活動中の譲渡等で、QSTが7.5%の税率で適用される場合である。事活動中の譲渡等なので、事業に関連する支出について仕入税額控除が受けられる。
 
 ゼロ税率の譲渡等も事業活動中のものは課税対象であるが、課税率は0%である。これらは課税対象の譲渡等に該当するので、仕入税額控除を受けることが可能になる。ゼロ税率の譲渡等は、次の通りである。
●処方薬、及び生物学的物質の譲渡等
●医療、及びその補助的装置の譲渡等
●基本的食料品の譲渡等
●農業、及び漁業関連の譲渡等
●輸出、例えば、一定の売買条件に従ってケベック州外に送る意図を持つ受取人へのケベック州内で作られた有形動産の譲渡や、ケベック州在住でない人に対するケベック州内でのサービスの提供
 また同じくゼロ税率の譲渡等中には次のようなものも含まれる。
●ツアー・パッケージの提供 
●(乗客及び貨物の)輸送サービスの提供
●国際的組織やその代表者等のための一定の譲渡等
●金融サービスの提供
 連邦の物品・サービス税制度(GST)では、非課税取引とされている金融サ-ビスの提供が、ゼロ税率の譲渡等として扱われていることはケベック州の税制度における特徴と言える。ゼロ税率の譲渡等は、課税対象となる取引となるので、事業に関連する支出に関しては仕入税額控除を受ける権利があることになる。
 
非課税取引
 
 非課税となる譲渡等とは事業活動の課程外でなされるもので、それらは課税対象の譲渡等には該当せず、従ってQSTの対象とはならないことになる。従って、そのような譲渡等をする者は、それら
の活動が事業活動を構成しないので、それらの譲渡等に関しては仕入税額控除を受ける権利はないことになる。
 非課税取引とは何か。次のようなものがある。
●一定の不動産の譲渡等、例えば、中古の集合住宅の販売や1ヶ月以上の長期賃貸
●保健サービスの提供
●教育サービスの提供
●子供の世話や大人の介護サービスの提供
●訴訟経費扶助サービスの提供
●公共部門団体に対する提供
●フェリー、有料高速道路、及び有料橋
 これらの譲渡等に関する支出関しては仕入税額控除を受けることはできない。
 
11.還付
 
 QSTには、種々の部門や個人に対し、一定の緩和措置がある。細かい点はともかく、 QST制度には、次のような還付がある。
●ケベック州外に出荷され、ケベック州外に在住する者が入手した資産
 以下も同じく還付がある。
●ケベック州外に出荷された芸術作品
●短期宿泊設備
●慣習の一部として負う支出
●被雇用者及びアソシエイト
●新築住居用設備(一定額まで)
●訴訟経費扶助
●誤納付税額
●公共サ-ビス団体
 
公共サ-ビス団体
 
 一定の資格を有する公共サ-ビス団体に関しては、仕入税額控除を受けられない購入についても、支払ったQSTの部分的還付が受けられる。
 例えば、公共サ-ビス団体が非課税取引となる活動の課程内で使用するために、課税対象の資産やサービスを入手する場合などである。公共サ-ビス団体」というのは、非営利団体、慈善団体、自治体、学校、及び病院当局、並びに公立の短期大学と大学を含む。
 有資格の団体が受ける還付の割合は、その団体の種類によって決まることになる。例えば、慈善団体や有資格の非営利団体には一般に50%の還付が適用されている。
 しかし、自治体による譲渡等は、非課税の適用を受けるため、それらの譲渡等を行うために入手した資産及びサ-ビスに関しては、それらの譲渡等の性質上、これらの団体はこの還付の利益を受けることはできない。1997年1月1日以来、そのような資産等の入手に関しての部分的な還付を受けられなくなっていたこれらの団体や自治体に公平な取り扱いを保証することが、求められていた目標であった。
 病院当局は、およそ購入した対価の70%に関して還付を受けられ、学校、大学、及び公立短期大学は47%の割合である。
      
12. 政府とQST
 
 各省、団体、受託者を含むケベック州政府は、他の事業者と同じように課税対象となる譲渡等をする場合、連邦の物品・サービス税(GST)とQSTを徴収する必要がある。同様に、たばこ、燃料、アルコール飲料その他の、一定の資産とサービスに関して払う個別消費税も同じである。
 財政上の免除により、ケベック州政府は課税対象の譲渡を受けた場合、一般にQSTを支払うことはない。また、今回のカナダ政府とケベック州政府相互の課税協定に従って、ケベック州政府は資産とサービスの入手に関して連邦のGSTを支払うこともない。 それに対して、カナダ政府は課税対象の譲渡等をする場合は、GSTとQSTを徴収する必要がある。また、カナダ政府は、購入する際はGSTを支払わなければならない。しかし、カナダとケベック相互の課税協定を理由に、カナダ政府は、購入に関してはQSTを支払うことはない。 
                              エレナ・クロチアッティ
                                      1998年6月

この文章は、10年前のもので古いです。
誤訳、誤解等もあるかと思いますが。
現在のQSTについては、General Information Concerning the QST and the GST/HST
IN-203-V
を見てください。
 
by nk24mdwst | 2008-03-03 13:01 | 租税法(日米以外)

the concentration camp

 以下は、1998年6月8日、ケベック州税庁において、担当者のMs.エレ-ナ・クロチアッティによるケベック州売上税に関する説明の全訳である。

ケベック州の 消 費 課 税 制 度
 
第1部  歴史的展望
 
1. 連邦政府と各州政府の関係
 
 一般に1867年憲法と呼ばれる1867年の北米英国領法の第92条2項は、各北米英国植民地(州)の立法議会が、植民地(州)内で「各植民地(州)の目的に適う歳入を調達するための州内の直接税」に関する法を起草する責任を負うとしている。
 連邦政府に関しては、1867年憲法の第91条3項で「課税に際し、あらゆる方法あるいは制度を用いて徴税を行う」ことに関する独占的決定権を与えており、そこには間接税同様、直接税も含まれている。
 従って、連邦政府には直接税及び間接税を含む、課税に関する無制限の権限があったということになる。
 一方、州立法議会の権限は州の領土及び目的の範囲内における直接税の課税権に制限されていた。
 直接税と間接税の違いを正確に言うと何なのか 。
 他者の負担によって納税することを意図し期待する間接税に対し、直接税とは、所得税や土地税のように負担する当人に課税されるものをいう。
 つまり、間接税とはある者に課せられるが、その者は第三者と取引する際にその税を回収するというものである。
 
1.2歴史的展望
 
連邦政府の売上税
 
 1924年に導入された売上税は、導入以後何度も改定を繰り返されてきた。
 最初にその制度が施行されたとき、連邦の小売売上税は、カナダ製物品の製造者の価格に賦課されていた。
 輸入された物品の関税額が、連邦税率が課される課税ベースになった。
 この売上税は複数税率を持ち、通常は13.5%だったが一定の目的税もあり、建設資材には9%の税率が適用されていた。
 この税金には重大な構造上の欠陥があった。カナダで購入される物品とサービスのわずか3分の1にしか影響を与えていないという、課税ベースの狭いこともその一つだった。
 この税はまた、カナダにおける事業の競争にとっては不利なものだった。例えば、燃料や事務用品のように、製造業者が購入する資産の大部分が課税対象だった。そのような資産にかかる支出が物品の販売価格を高くし、その物品自体も課税対象だったので、これが仕入価格に対する二重課税につながることになっていた。
 それに対して、外国製物品は、この二重課税の対象とならなかったので、実質的にカナダ製物品よりもかなり有利となった。
 結局、この税は国内製品には不利で、輸入品を優遇することになってしまった。事実、輸入された製品に輸入業者が負うべきマーケティング及び流通コストが含まれていなかった場合は、関税に相当する金額に課税されいた。反対に、これらのコストは同種のカナダ製品の販売価格に反映されていた。
 その結果、1956年という早い時期に、この税に代わって小売売上税を採用するよう推奨する諸研究が出された。
 
現在の州税について
 
 売上税なしの税制を選んだアルバータ州以外の諸州は、小売売上税の導入を決めた。
 最近であるが、ニュー・ブランズウィック州、ノヴァ・スコシア州、ニュー・ファウンドランド州は、各州の売上税システムを連邦の物品・サービス税(GST)法に統合させた(訳者注:Harmoni-
zed Sales Tax,HSTと呼ばれる)。
 一般に、各州の売上税は州内での小売販売に課される。
 これらは、州内での消費や使用を目的とした商品や一定のサービス、電気、電話、照明の購入にのみ適用される。さらに、州内で使用するための商品であれば特定の州外での購入にも適用される。
 各州の売上税は、各州の(州民に対する)直接税を課税する権限により、最終消費者を負担者としている。
 その結果、州外への転売や州外配達目的の商品販売は、売上税の対象にはならない。
 一般的な課税規定は、いくつかの例外の設けている。その中に、転売用に卸売業者が購入した商品に関する非課税規定がある。
 また、他者のために物品の製造等を行う業者のための原材料や部品は、各州の売上税法の規定により非課税とされてる。
 そのような非課税取引の際には、非課税証明書が必要となる。
 
1.3 連邦の改革
 
 カナダ政府がその売上税制度の改革を導入しようと試みたのは、1980年代後半であった。
 連邦の改革を通じて政府に求められた中心的目標は、より競争力のあるカナダ産業、中立的税システム、信頼できる財源、より公平な税制度であった。
 その結果、一般にGST と呼ばれるようになった物品(Goods)・サービス(Services)税(Tax)
が、1991年1月1日より施行された。
 これまで述べたように、新しいGSTは、(前段階の)税額控除メカニズムの導入によって仕入に
係る税額を控除することができ、カナダの産業の競争的地位を向上させるという利点を持っている。
 このメカニズムは、後で検討することになるが、事業者に事業活動中に購入した商品やサービスに課された税額の控除を求めることができる、というものだ。
 また、新しいGSTでは、ゼロ税率の導入で輸出品に係る税額を免除している。
 さらに、新制度では、この税はカナダ製品と同じく輸入品に適用されており、課税の中立性が確保されている。
 最後に、年収が3万カナダ・ドル未満の世帯に対して、新しくGST控除制度を導入することで、
連邦政府は消費課税を主要な歳入源としながら、このような税の特徴である逆進性を排除することができることになった。
 
2.ケベック州の消費課税

2.1 連邦政府の改革に対するケベック州の対応
 
 当初、連邦政府のGST計画には重大な問題点があったが、特にケベック州が強く非難したのは行政上の問題だった。
 一つには、小売の分野に介入することにより、連邦政府は、既に各州のレベルで存在する制度を重複させることになった。
 連邦政府にとっては、GSTをケベック州の売上税制度に重ねることが、登録、徴収、情報収集、
調査のための第二の制度を構築することを意味していた。
 事業者にとっては、二つの異なる租税制度に関する知識を得、理解し、かつそれに従わなければならないということであり、それはまた、同時に、二つの異なる行政庁と相対したり、異なる日付に納付をしたり、さらに二重の徴収制度を構築しなければならないことを意味していた。
 実際の業務はかなり複雑になるため、中には新型の高度な設備を必要としたり、なおかつ外部の専門家の助けを求めざるをえない事業者も多く出てくることが予想された。
 1990年、二つの制度の併存によって生じる問題を軽減するため、ケベック州はGSTと自州の売上税を統合させることについて連邦政府との合意に至った。
 この目標に進むための準備は、1991年に始められた。ケベック州税の課税ベースを、動産の小売に関しては、ほとんどGSTに一致させるということになった。
 課税ベースはこうして広くなったが、それに関しては9%から8%に税率を軽減することによって補われることになった。
 更に、これらの改定の中には、ケベック州売上税(Quebec Sales Tax・QST)に飲食・ホテル税を統合させるというものもあった。
 ケベック州の税制改革の主要な目的の一つには、州の財政政策に関する方向づけと管理面で、ケベック州が重要な役割を確実に維持し続け、州の利益を守るというものがあった。
 また一方で、租税制度における公平性、特に低所得世帯に対しての公平性が求められた。
 最後に、もう一つの目標は、特に事業における生産コストを削減することで、経済成長を促すことであった。
 
2.2 QSTの実施
 
GSTと調和のとれた立法
 
 連邦の税制とケベック州の税制を統合させる改革は、1992年7月1日に最終段階を迎えた。
 いくつかの例外はあったが、その時導入された新しい売上税は、GSTの対象となる全資産とサービスの譲渡等のときに、それらの購入者に適用された。
 例外というのは、専ら転売、賃貸、転貸を目的とした仕入と、販売を予定した商品の部品仕入に関するものだった。これらの例外は、先程述べたように、ケベック州憲法に基づく課税権が直接税に限定されていることによって正当とみなされた。
 以前の売上税とは逆に、新税の目的は最終消費者への販売にのみ適用されることだった。そこでGSTの場合と同様、新税は、業者が仕入時に支払った税金を控除するメカニズムが組み込まれていた。
 更に、新税はGSTと同じ課税ベースを採用し、一般的にGSTが適用される動産、不動産全てとサービスとに適用された。そのため、その影響は国民のより多くの階層によって感じられるようになった。
 この税と並行して実施されたもう一つの重要な制度が、低所得納税者に対する戻し税法式による売上税の税額控除である。この税額控除の方法によって、低所得納税者が税額負担の増加を負わなくてもよくなるはずであった。
 最後に、当時のケベック州政府との「合意覚書」の中には、ケベック州政府による州内におけるGSTの執行も含まれていた。
 
 
合意覚書
 
 ケベック州政府へのGSTの執行権の委譲をも伴う、前例のない権限委任の法令が制定された。つまり1990年、ケベック州は連邦政府と権限委任の協定を定めた最初の州になった。
 さらに明確に言えば、ケベック州政府によるGSTの執行期間と条件もその協定に含まれていた。
 という訳で、それには二つの政府間でのアイデアや情報交換の方法も含まれていた。
 他には、協定文を元に作成される法律、規則及びその解釈に関する規定があった。
 そして、この協定の中では、財政上の補償の他に、登録、納税申告、納付、還付請求、査定、調査、不服申立、異議申立を扱っていた。
 この協定は、人的資源と物質的資源に関する大きな変化をもたらした。
 実施の条件には、組織の再編成と、それに伴う増員要求があった。
 コンピュータの機能改善の必要性と共に国税庁のコンピュータ・システムを改良する結果になり、
そのためにそれを使う人間を養成しなければならなくなった。
 
2.3 その他の消費課税
 
 当時他にも個別消費税が適用されていたが、一定の製品とサービスの消費に関しては、いくつかの税が今日も適用され続けている。
 現在、個別消費税は、燃料と煙草に課せられている。酒類や保険料にも同じことが言える。またその他に、通信税が1992年7月の改革後QSTに組み込まれた。飲食及びホテル税は、1991年の過渡期に売上税に組み込まれた。
 
3. 現在のQST
 
3.1 期待されたQSTの利点
 
簡素
 
 まず、第一に簡素が挙げられる。
 1990年にできた合意覚書では、QSTとGSTの簡素で統一された執行運営を導入した。
 更に、GSTとQSTの統合によって、他のカナダの諸州においては生じている二つの異なる課税制度の併存から起こり得る重複状況を排除した。
 また共通の課税ベースは、両方の制度の執行を簡素化するものである。先に述べたように、QSTとGSTは両方とも物品及びサービスに適用される。
 また、課税対象取引が年間3万カナダ・ドルを超えない零細事業者の納税義務を免除することによっていて、徴税業務がさらに簡素化された。
 
競争力
 
 他に、QST導入で予想されたもう一つの利点は競争力である。
 これは、一つには、先程述べた付加価値メカニズムの結果である。つまり、付加価値税は、実際は、生産と流通の各段階における製品やサービスの価値の増加に課税される税だということである。
 また、仕入に係る税額も税額控除メカニズムにより控除されることになる。
 そして最後に、この税は最終消費者を対象とし、資産とサービスの双方に単一の税率を適用しているので中立的な税といえる。
 
公平性:より公平な租税制度
 
 QST導入に関して予想された三番目かつ最後の利点は、公平性、言いかえるならば、より公平性
の高い租税制度であることである。QST導入に伴い、低所得世帯では生活にかかる費用が増大することが予想される。これは、いわゆる逆進性と呼ばれるものである。
 租税負担も課税ベースの広がりによって増加する。それは資産にもサービスにも適用されるからである。この税の逆進性を幾分緩和するために、戻し税方式の税額控除による納税者補償施策が導入されている。
 
第2部   法律制定
 
1.QST - 付加価値税(VAT)
 
 QSTは付加価値税であり、生産と流通の各段階に課せられる消費税であることを意味している。 各段階で連続して適用され、次の段階で税額控除されることになる。例えば、資産やサービスの生産と流通に関わる各事業者は、一般に事業活動中に使用した資産やサービスの購入に支払った税の全額が控除できることになっている。
 このことは、製品やサービスの価値の各段階で増加した分にのみ、言いかえると、各段階における付加価値に課税されることを意味している。
 また、税額控除が受けられるのは、購入された資産やサービスが事業活動の過程で使われる場合に限られているので、このことは、この税を資産やサービスの最終消費者が完全に負担することを意味する。
 日本を含めて、世界の50カ国以上が付加価値税の採用を選んだことは注目すべきことである。

2.歴史的展望と財政効果
 
歴史的展望
 
 QSTの歴史的展望に関しては、QSTが1992年7月1日に施行されたことである。その日以来、先に述べたように、ケベック州は州内におけるGSTの執行を任されている。
 元々、この税には2つの税率が用いられていた。資産に適用されていた8%とサービスに適用されていた4%の税率である。
 そして、1994年5月13日付けで6.5%の単一税率が適用されることになった。その後は、1998年1月1日現在、税率は7.5%まで上がっている。
 
財政効果
 
 1997-1998年の会計年度の終りに、QSTの財政収入はおよそ56億6千カナダ・ドルであった。
 
3.QSTは、何に適用するか
 
 QSTは、課税対象の譲渡等に対して適用されている。
 ただ「譲渡等」の意義は非常に多様である。資産(動産若しくは不動産、又は有形若しくは無形を問わず)の引き渡しやサービスの提供などに関して、販売、移転、交換、為替、認可、賃貸、贈与、売却と称する行為は全て含まれる。
 しかし、譲渡等がなされたというだけでは、譲渡等する側に課税する理由としては十分ではない。
課税するためには、その譲渡等が「課税対象でなければならない」のである。《課税対象の譲渡等》
とは、事業活動中になされた譲渡等を指す。
 「事業活動」とは、次のような意味である。
 まず、事業を継続することである。事業には、商業、製造業、専門職、職種を含み、これらは全て営利、非営利を問わない。同様に、賃貸、認可または同種の行為による資産の譲渡等を伴う、定期的あるいは継続的に行われる行為も含まれる。ただし、官庁と雇用に関しては除外されている。
 また事業活動には、 単発の投機的事業というべき性質の商業的投機や出資も含まれる。
 最後に、不動産の譲渡等も同じくQST制度の下の事業活動である。
 しかし、「事業活動」には後で述べる非課税の譲渡等は含まれない。また、妥当な利益が予測できない個人が行った取引というべき商業的投機や出資も除外される。
 
4.誰がQSTを支払うのか
 
 QSTを支払うのは、譲渡等の「受取人」である。《受取人》とは、合意によって、譲渡等に対する対価を支払う必要がある人を指す。
 この場合、「対価」は、譲渡等に対し支払うべき価額を意味する。「対価」は、現金の場合もあれば、資産やサービスの形で支払われる場合もある。そこには、連邦の物品及びサービス税(一般にGSTと呼ばれる)や、場合によっては、燃料税、煙草税のような他の個別消費税も含まれる。
 金銭以外による対価支払の場合、対価の価額はその譲渡等されたものが作られたときにおける公正な市場価格に相当する額とされる。
 従って、見てきたとおり、譲渡等の受取人というのは、必ずしも実際に税を支払う人とは限らない。先程述べた通り、受取人とは、譲渡等に対して対価を支払わなければならない人のことである。
 
5.QSTの税率は
 
 1998年1月1日以来、QSTの全体の税率は7.5%である。この税率は、0%で課税されるゼロ税率取引以外の、課税対象になる資産とサービスの譲渡等全てに適用される。
 ゼロ税率取引には、基本的食料品、医療用装置、農業と漁業に関わる製品が含まれる。
 保健サービス、教育サービス及び公共部門団体による譲渡等のような場合は課税対象外取引となるためQSTは適用されない。
 
6. どこで、QSTは適用されるか
  
 QSTが課税対象の譲渡等につきその譲渡者に対して課せられるためには、その課税対象の譲渡等がケベック州内で行われなければならない。
 QSTには譲渡等の場所を決定するに当たって、いくつかの規定や推定規定がある。これらの規定は、事業者が行う譲渡等が有形動産、無形動産、サービス、または不動産であるかによって異なる。
 例えば、有形動産がケベック州内で受取人に届けられるとすれば、州内で作られたと考えられる。
つまり、ケベック州で資産が受取人に送られるか、利用できるということを意味する。さらに、不動産がケベック州内に位置する場合、その譲渡等は州内で行われたものと考えられる。また、全て、あるいはほぼ全てのサービスがケベック州内で行われる場合も、その譲渡等は、ケベック州内でなされたものとみなされる。
 しかし、ケベック州在住でない人間が州内で資産やサービスの譲渡等をした場合は、州外で扱われた譲渡等とみなすという点は注目すべきである。しかし、これにもいくつかの例外がある。例えば、ケベック州在住でない者が、州内において経営する事業の課程における譲渡等がある。またケベック州在住でない者が、譲渡等がなされた際に登録事業者になっているときである。この場合において、「登録事業者」とは、実際QSTのために登録した人、または登録する義務がある人を意味する。
 
7. 仕入税額控除(ITR)
 
 その原理は以下のとおりである。
 QST 制度の下で登録した全ての者は、一般にその者の事業活動の過程で得た資産やサービスの譲渡等に対して支払ったQSTの控除を受ける権利がある。
 そして、ゼロ税率取引を含む課税対象の譲渡等をした者はその者の受け取った資産とサービスに関して仕入税額控除を受ける権利が得られる。それに対して、非課税となる譲渡等をした者は、仕入税額控除(Input Tax Refund::ITR)を受けることはできない。
 例えば、法律事務所が文具を購入すると、その時に支払ったQSTは全額控除する権利が生じる。 しかし、同じ文具を一般開業医が購入しても、税額控除は受けられない。というのは、医者の事業活動の課程において文具が購入されたのではないからである。
 実際は、保健サービスは非課税取引なので、事業活動の過程の中で行われたものとは見なされないことになるのであるが。
 
 8. 登録する必要がある人とは誰か
 
 QST目的のための登録の義務に関する一般原則は、ケベック州内で行う事業活動の課程で、課税対象になる譲渡等をする者はみな登録しなければならないとなっている。
 しかし、次の場合、この原則は適用されない。
 課税対象の譲渡等に関して1年の取引金額が3万カナダ・ドル以下の小規模事業者の場合である。
 また、事業活動が不動産の販売、または不動産販売の課程のみである場合は、どちらも適用しない。 そして、ケベック州在住ではない者、ケベック州内で事業を行っていない者はQST制度では登録する必要はない。
 
続く
by nk24mdwst | 2008-03-02 13:43 | 租税法(日米以外)

What will you do when the label comes off,

納税者権利憲章について書かれた本で最近出たものですが、Duncan Bentley 著の Taxpayers Rights: Theory Origin and Implementation (Series on International Taxation) は、納税者権利憲章の国際比較、世界の現状、さらに、モデルとなるような案まで用意していて、興味のある人には面白いかなと思います。
値段が高いのはネックですが。

所得課税に関する、各国における歴史と現状を押えた上で、所得課税のあり方を論じた本としては、Hugh J. Ault 、 Brian J. Arnold 共著のComparative Income Taxation: A Structural Analysis があります。
これも上のと同じシリーズで高いです。クルーガーのシリーズ本は、高いです。
もっとも、日本の代理店を通して買うより、アマゾンで買うほうがはるかに安いです。

日本の消費税も含まれるわけですけれど付加価値税、Value Added Tax に関する国際比較及び基本的構造について書かれた本としては Alan Schenk、 Oliver Oldman 共著のValue Added Tax: A Comparative Approach (Cambridge Tax Law Series)  があります。
オリヴァー・オールドマンは財政学の泰斗ですよね。

税務行政の問題に関しては、Henry J. Aaron 、 Joel Slemrod共編 のCrisis in Tax Administration が一番最新の情報を網羅しているように思えます。

Ezra Pound の詩を取り上げてみます。

    Meditatio

When I carefully consider the curious habits of dogs
I am compelled to conclude
That man is the superior animal.

When I consider the curious habits of man
I confess, my friend, I am puzzled.


パウンドは有名ですね。
ムソリーニのファシスト・イタリアに住んでいて公然と支持をしていたことについて、戦後、裁判にかけられるのですが、公判が開かれる前に、責任能力無しとされ、12年余りを精神科病棟に入ってすごすことになります。

日本や中国の詩、例えば李白ですが、の影響を強く受けているとされています。

Lowell George が尺八を習ってたという方がぴんと来たりする人間でして。

昨日は、往きの飛行機と山手線ではLittle Feat 創設頃のロウェル・ジョージの歌声をHotcakes Outtakes 収録のもので聞いてました。Captain Beefheart にそっくりです。A&Mが、ブルー・アイド・ソウルとしてビーフハートを売り出そうとしたあたりの頃のスタイル。
要するに二人とも如何にHowlin' Wolf の影響下にあったかということですけどね。

帰りの飛行機の中と寝床で、Freak Out!を久しぶりに聞きました。66年に聞いても解らなかったでしょうし、72年に初めて触れたときにも解らなかったことがやっと少し解りかけてきました。一昨年でも解っていなかった。半年前からおぼろげに感じ出したことがやっと見えかけたというあたりでしょうか。

Frank Zappa が好きなのかとという問いには、何ともいえないとしか答えられません。興味があるかと言うことなら、興味はある。個人的リファレンスとしてFZをどう位置づけるか、ないし、その逆というあたりですね。

2008.2.29

フリーク・アウト!やザッパは解らないということが解った、かな。
解らなくてもちっとも困らないし。
by nk24mdwst | 2008-02-04 14:21 | 音楽

Consumption Tax in Japan Ⅱ

(3)仕入税額控除の要件

消費税法は、仕入税額控除の適用について、「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。」と規定しています。(消法30⑦)

仕入税額控除の要件は、EU諸国等ではインボイスの保存です。それに対し、日本では、帳簿方式が用いられているわけです。ただし、その帳簿方式の内容についてですが、消費税の導入当初は帳簿「又は」請求書等の保存という規定でした。それが、消費税の税率引上げに伴う平成6年改正で帳簿「及び」請求書等の保存とその要件が加重されました。

これは、単に法文上の規定からすると、事業者番号は用いられないものの、日本の仕入税額控除の要件は、最も厳しいと理解することも可能なのです。もちろん、少なくとも現時点での課税の現場の執行面においてそのような取扱いが一律に行われているということではないことは指摘しておきます。

いずれにしろ、事業者番号制度のない帳簿方式をもちいているわけですから、一般消費者や免税事業者からの仕入れについても仕入税額控除が認められるという点で、前段階税額控除の不透明性という根本的欠陥の解決はなされていないことになります。
(4)帳簿及び請求書等の保存(消法30⑦)

① 消費税法30条7項の性格・意義

消費税法30条7項は、同条1項の仕入税額控除の規定について「事業者が当該課税期間に係る帳簿及び請求書等(略)の保存をしない場合には」、保存がない課税仕入れ等の税額については、適用しないと規定しています。

30条7項の条文構成は、仕入税額控除の適用がされない場合を規定しています。しかし、消費税を付加価値税として位置づけると消費税における課税においては、納税義務者である事業者の納税義務と仕入れに係る税額控除の権利は、一体不可分だと考えられます。権利としての仕入税額控除を当然の前提として、帳簿及び請求書等の保存が義務として課されることを規定していると考えます。

つまり、消費税法30条は、課税要件を規定している条文であるというべきです。

また、仕入税額控除は所得税、法人税における外国税額控除のような税額控除という意味において同一であると考えることはできません。

税制改革法10条2項の「税の累積を排除」という文言から、消費税の本質が付加価値税であると解釈できます。また、課税仕入れに際し事業者が支払った消費税相当額は過不足なく控除されなければなりません。過大な控除が認められないと同時に、過少な控除も法は予定していないはずなのです。

② 帳簿等の保存と提示
 
帳簿等の保存の意義に関し、青色申告者に義務付けられている帳簿保存要件における場合と同様に税務調査時にの正当な理由のない帳簿等の提示拒否があった場合は、帳簿等の保存がないものとする課税処分が平成4年ごろを境にして厳格に行われるようになりました。
 
仕入税額控除は「特典」であり、保存の要件を充たさない以上、仕入税額控除の全額を否認することができるという論理がもちいられだしたのです。結果として、消費税法30条7項の解釈、特に、帳簿等の保存の意義を争点とする税務争訟が多発するようになったわけです。

課税庁が仕入税額控除の否認を行うためには、税務調査を行い、帳簿等の保存がないことを課税庁は、立証しなければなりません。
たしかに、調査時において帳簿等の提示がない場合は、課税庁としては、帳簿等の保存の確認ができないことになります。しかし、それは、税務調査時において帳簿等の保存がなかったことを立証したことにはなりません。あくまで、帳簿等の保存の確認ができず、帳簿等の保存がないことが推認されるということにしか過ぎないわけです。

上述のように、課税庁は、帳簿等の保存がないことを推認することと、帳簿等の保存がないことを立証していることとは異なります。

しかし、課税庁が帳簿等の保存がないと推認して課税処分を行った場合においては、仕入税額控除の要件である帳簿等の保存に関する立証責任は、納税者に帰すことになるというべきでしょう。

一般常識的には税務調査時に帳簿等を提示することによって帳簿等の保存が証明され、その帳簿等の内容について税務調査が行われるということになります。
しかし、税務調査に関しては、色々な事情により様々な状況が起こることがあります。それら全てが、悪意ある納税者による調査妨害であるのなら話は、簡単なのでしょうが、必ずしも想とはいいきれないところに、問題の奥深さが存在します。

そして、納税者と課税庁の調査担当職員との間において意思の疎通や、通常の税務調査は、質問検査権に基づく間接強制力を伴う任意調査という性格を持つので、双方の間で信頼関係が築けない場合においては、感情的な対立が起きることもありえないことではないわけです。

そのような場合に、課税庁側が形式的な法解釈論に依拠して、納税者から適時に帳簿等の提示がなかったことは、帳簿等の保存がなかった場合に該当するとして仕入れ税額控除を否認する処分を行うことがあります。

しかし、調査時において帳簿の提示がなかった場合であっても、故意による調査妨害であるような例外を除けば、課税処分後において提示された帳簿等を検討することによって帳簿等の保存の実態を確認できることもありえるはずです。

逆に、調査時に提示がなかった場合において、その時点で帳簿等の保存がなかったという判断を税務調査に基づく処分の可否を判断する国税不服審判所や裁判所が行ってしまうと納税者としては、帳簿等の保存を立証する機会が全く失われることになるわけです。

論理的には、帳簿等の保存がないときはその提示もできません。しかし、帳簿等の提示がない場合すべてが、帳簿等の保存がない場合に該当するということにはならないはずです。もちろん、税務調査を行う立場からすれば、提示がなければ保存を確認できず、保存がないものとして仕入税額控除の否認を行うという論理が成立することは理解できます。

しかし、消費税法30条7項は帳簿等の保存義務を定めているだけであって、提示の義務、時期を規定しているわけではありません。課税処分後の、不服申立て、あるいは、訴訟の段階で帳簿等の提示がなされた場合は、その帳簿等を検討しそれが明らかに後日作成された帳簿等であるかどうかを検討すべきでしょう。その上で、帳簿保存要件に合致すると判断されるときは、その帳簿等の記載内容についての検討が行われるべきと考えます。

「保存という文言の通常の意味からしても、また、法全体の解釈からしても、税務調査の際に事業者が帳簿又は請求書等の提示を拒否したことを、法30条7項の保存がない場合に該当する、あるいはそれと同視した結果に結び付ける課税庁の主張は、もはや法解釈の域を超えるもの」(大阪地判平10.8.10、税資237号1007頁)

という判断は極めて常識的なものであるはずです。

納税者は申告書作成当時から一貫して帳簿等を保存していたことを立証する責任を負うことになります、その立証時期を正当な理由がない限り適法な税務調査時に限定することに関しての明文の規定は存在しないのです。

それにもかかわらず、判例は、納税者に対し正当な理由の存在、あるいは、税務調査の違法性の立証責任を負わせています。しかし、論理的にはともかく、現実の税務調査の場合において納税者がこれらを立証することは限りなく困難であるといえます。

前述のように質問検査権が間接強制力を課税庁の当該職員に対して認めているものである以上、納税者には税務調査に対する受忍義務があります。

ですから、本来、課税庁が行う処分のあるべき形に関しては、正当な理由なくして税務調査に協力しなかったり、従わない納税者がいる場合は、消費税法の調査受忍義務違反について処分をし、その上で仕入税額控除等の否認を行うというのが適正な手続であると考えられるわけです。

消費税の税務調査において税務職員に対して正当な理由なくして帳簿の提示がなかった場合は、帳簿の保存がなかったと解するべきであるという判決(最判平16.12.16、判タ1175号135頁、16.12.20、判時1889号42頁、17.3.10、判タ1179号171頁)最高裁で相次ぎました。

特に、最高裁平成16年12月20日及び17年3月10日判決は、調査段階から税理士が関与している事例なので、その意味で非常に重要な意味をもっていると考えられます。

先ず最初の最高裁第一小法廷平成16年12月16日判決(平成13(行ヒ)116)は、要旨
事業者が帳簿又は請求書等を税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合の消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの)30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」該当性について、事業者が,消費税法施行令(平成7年政令第341号による改正前のもの)50条1項の定めるとおり,消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの)30条7項に規定する帳簿又は請求書等を整理し,これらを税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように所定の期間及び場所において態勢を整えて保存していなかった場合は,同項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たる。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25083&hanreiKbn=01
としました。
判決文によると
1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,大工工事業を営む個人事業者であるが,平成2年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税について確定申告をしなかった。また,上告人は,昭和63年分,平成元年分及び同2年分の所得税についてそれぞれ確定申告をしたが,その申告書に事業所得に係る総収入金額及び必要経費を記載せず,その内訳を記載した書類を添付しなかった。
 (2) 被上告人の職員は,上告人が本件課税期間について納めるべき消費税の税額を算出するため,また,上記の所得税に係る申告内容が適正であるかどうかを検討するため,上告人の事業に関する帳簿書類を調査することとした。
 上記職員は,平成3年8月下旬から上告人の妻と電話で数回話をするなどして調査の日程の調整に努めた上,その了承を得て,同年10月16日,同月25日,同年11月18日,平成4年1月21日及び同月31日の5回にわたり上告人の自宅を訪れ,上告人に対し,帳簿書類を全部提示して調査に協力するよう求めた。しかし,上告人は,上記の求めに特に違法な点はなく,これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず,上記職員に対し,平成2年分の接待交際費に関する領収書を提示しただけで,その余の帳簿書類を提示せず,それ以上調査に協力しなかった。上記職員は,提示された上記の領収書312枚をその場で書き写したが,その余の帳簿書類については,上告人が提示を拒絶したため,内容を確認することができなかっ
た。
 (3) そこで,被上告人は,上告人の本件課税期間に係る消費税につき,調査して把握した上告人の大工工事業に係る平成2年分の総収入金額に103分の100を乗じて得た消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの。以下「法」という。)28条1項所定の課税標準である金額に基づき消費税額を算出した上で,提示された上記の領収書によって確認された接待交際費に係る消費税額だけを法30条1項により控除され
る課税仕入れに係る消費税額と認め,その余の課税仕入れについては,同条7項が規定する「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当するとして,同条1項が定める課税仕入れに係る消費税額の控除を行わないで消費税額を算出し,平成4年3月4日付けをもって第1審判決別紙2の「原処分の額」欄記載のとおりの決定処分及び無申告加算税賦課決定処分をした。 
 (4) 上告人は,上記各処分について被上告人に異議の申立てをした上で国税不服審判所長に対して審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成7年3月30日付けで,第1審判決別紙2のとおり,上記各処分の一部を取り消す旨の裁決をした(同裁決により一部取り消された後の上記各処分(別紙処分目録記載の各処分)を以下「本件各処分」という。)。
 2 本件は,上告人が,被上告人に対し,本件各処分等の取消しを請求する事案である。
 3 所論の点に関する当審の判断は,次のとおりである。
 (1) 消費税の納付すべき税額は,納税義務者である事業者が課税期間ごとにする「課税資産の譲渡等に
ついての確定申告」により確定することが原則とされており(法45条1項,国税通則法16条1項1号),その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長等の調査したところと異なる場合に限り,税務署長等の処分により確定する(国税通則法16条1項1号,24条及び25条)。
 このような申告納税方式の下では,納税義務者のする申告が事実に基づいて適正に行われることが肝要
であり,必要に応じて税務署長等がこの点を確認することができなければならない。そこで,事業者は,帳簿を備え付けてこれにその行った資産の譲渡等に関する事項を記録した上,当該帳簿を保存することを義務付けられており(法58条),国税庁,国税局又は税務署の職員(以下「税務職員」という。)は,必要があるときは,事業者の帳簿書類を検査して申告が適正に行われたかどうかを調査することができるものとされ(法62条),税務職員の検査を拒み,妨げ,又は忌避した者に対しては罰則が定められていて(法68条1号),税務署長が適正に更正処分等を行うことができるようにされている。
 (2) 法が事業者に対して上記のとおり帳簿の備付け,記録及び保存を義務付けているのは,その帳簿が税務職員による検査の対象となり得ることを前提にしていることが明らかである。そして,事業者が国内において課税仕入れを行った場合には,課税仕入れに関する事項も法58条により帳簿に記録することが義務付けられているから,税務職員は,上記の帳簿を検査して上記事項が記録されているかどうかなどを調査することができる。
 法30条7項は,法58条の場合と同様に,当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等が税務職員による検査の対象となり得ることを前提にしているものであり,事業者が,国内において行った課税仕入れに関し,法30条8項1号所定の事項が記載されている帳簿を保存している場合又は同条9項1号所定の書類で同号所定の事項が記載されている請求書等を保存している場合において,税務職員がそのいずれかを検査することにより課税仕入れの事実を調査することが可能であるときに限り,同条1項を適用することができることを明らかにするものであると解される。同条10項の委任を受けて同条7項に規定する帳簿又は請求書等の保存に関する事項を定める消費税法施行令(平成7年政令第341号による改
正前のもの。以下同じ。)50条1項は,法30条1項の規定の適用を受けようとする事業者が,同条7項に規定する帳簿又は請求書等を整理し,所定の日から7年間,これを納税地又はその取引に係る事務所,事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならないことを定めているが,これは,国税の更正,決定等の期間制限を定める国税通則法70条が,その5項において,その更正又は決定に係る国税の法定申告期限等から7年を経過する日まで更正,決定等をすることができると定めているところと符合する。
 法30条7項の規定の反面として,事業者が上記帳簿又は請求書等を保存していない場合には同条1項が適用されないことになるが,このような法的不利益が特に定められたのは,資産の譲渡等が連鎖的に行われる中で,広く,かつ,薄く資産の譲渡等に課税するという消費税により適正な税収を確保するには,上記帳簿又は請求書等という確実な資料を保存させることが必要不可欠であると判断されたためであると考えられる。
 (3) 以上によれば,【要旨】事業者が,消費税法施行令50条1項の定めるとおり,法30条7項に規定する帳簿又は請求書等を整理し,これらを所定の期間及び場所において,法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、法30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たり,事業者が災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書),同条1項の規定は,当該保存がない課税仕入れに係る課税仕入れ等の税額については,適用されないものというべきである。
 (4) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,上告人は,被上告人の職員から帳簿書類の提示を求められ,その求めに特に違法な点はなく,これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず,上記職員に対し,平成2年分の接待交際費に関する領収書を提示しただけで,その余の帳簿書類を提示せず,それ以上調査に協力しなかったというのである。これによれば,上告人が,法62条に基づく税務職員による上記帳簿又は請求書等の検査に当たり,適時に提示することが可能なように態勢を整えてこれらを保存していたということはできず,本件は法30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たり,本件各処分に違法はないというべきである。
 これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 4 以上の次第であって,本件上告のうち,本件各処分の取消請求に関する部分はこれを棄却すべきである。
 なお,その余の部分に関する上告については,上告受理申立書及び上告受理申立て理由書に上告受理申立て理由の記載がないからこれを却下すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 泉 德治 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/7D1C03C3B88DA77F4925702900268912.pdf
この判決において、注意しなければいけないのは、原告である納税者が所得税法において帳簿作成を義務付けられていない白色申告者であることが一つあります。
所得税法上、帳簿記載が義務付けられていないとしても、その事業者が消費税の課税事業者に該当する場合は、消費税法により帳簿等の記載保存が義務付けられているのは事実ですが。
それから、この事案の場合、きちんと整理された帳簿等の存在に関する蓋然性は必ずしも高くないと思われるのですが、一部だけ税務調査に際して提示した領収書にかかる消費税の仕入税額控除に関してはそれを認めているということにも留意が必要です。
いい方は良くないかもしれませんが、最も筋の良くないものに関して調査時における帳簿等の提示がなかったことを理由にする消費税の仕入税額控除否認の判決が最高裁で下されたといえるかもしれません。

次に、最高裁(第二小法廷)平成16年12月20日を見ます。平成16年(行ヒ)第37号法人税更正処分等取消請求上告事件(棄却)(確定)【税務訴訟資料254号順号9870】判決は、本件上告を棄却するとしその理由として、
【判示(1)】1 消費税法(平成9年3月31日以前の課税期間については平成6年法律第109号による改正前のもの、平成9年4月1日以降の課税期間については平成12年法律第26号による改正前のもの。以下「法」という。)が採る申告納税制度の趣旨及び仕組み並びに法30条7項の趣旨に照らせば、事業者は、同条1項の適用を受けるには、消費税法施行令(平成9年3月31日以前の課税期間については平成7年政令第341号による改正前のもの、平成9年4月1日以降の課税期間については平成12年政令第307号による改正前のもの)50条1項の定めるとおり、法30条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間については帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を整理し、これらを所定の期間及び場所において、法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要するのであり、事業者がこれを行っていなかった場合には、法30条7項により、事業者が災害その他やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書)、同条1項の規定は適用されないものというべきである(最高裁平成13年(行ヒ)第116号同16年12月16日第一小法廷判決・裁判所時報1378号参照)。
【判示(2)】
2 原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人は、被上告人の職員が上告人に対する税務調査において適法に帳簿等の提示を求め、これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず、上記職員に対して帳簿等の提示を拒み続けたというのである。そうすると、上告人が、上記調査が行われた時点で帳簿等を保管していたとしても、法62条に基づく税務職員による帳簿等の検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて帳簿等を保存していたということはできず、本件は法30条7項にいう帳簿等を保存しない場合に当たるから、被上告人が上告人に対して同条1項の適用がないとしてした別紙処分目録記載の各処分に違法はないというべきである。
  これと同旨の原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。
 なお、その余の請求に関する上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとする。
 よって、裁判官滝井繁男の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
としています。

細かい状況は下級審判決を見ればわかりますが、いずれにしろ税理士が関与している青色申告法人が原告なので、消費税法にいう帳簿等が全く存在しなかったとはいえず、所定の帳簿等があったであろうという蓋然性はたかいわけです。その意味で、前掲の12月16日判決とは異なることに注意が必要です。

続く

by nk24mdwst | 2008-01-28 11:27 | 租税法(日本)

Consumption Tax in Japan

Acknowledgement for foreign readers

I'm studying the taxation in Japan and learning the taxation in the U.S. and other countries, though I'm not a scholar.
Someday I will translate some articles about the income tax and the consumption tax, which I've written. I wrote those in point of the comparative view. I want to know what cause some controversial issues by the comparative method.

For foreign readers, who may not know the taxation in Japan and the Japanese tax ministration and/or Japanese legal procedures I have to rewrite my articles.

Someday I want to bring out my articles under my own name.

日本の消費税について考える

Ⅰ.はじめに

平成元年に導入された消費税は、国民の間に定着したといわれています。しかし、消費税についての納税者と行政処分庁である課税庁との間でトラブルが生じることも少なくありません。その一方、消費税率の引上げは、不可避であると思われます。

政府税調答申を消費税率の引上げを当然の前提としています。また、民主党も消費税を年金財源としての福祉目的税とするという考え方であり、その場合、当然、税率の引上げの問題が出てきます。

ガソリン税の問題でも明らかなように、特定の税を目的税とすること自体は、財政学の基本的な考え方からすると財政の硬直化につながると考えられるので、消費税の福祉目的税としての特定財源化に関しては、あまり賛成できないと考えています。消費税の適正税率がどれくらいであるかどうか以前の問題です。
ここでは、現行消費税の課題を立法上の問題点も含めて検討したいと思います。
 
Ⅱ.消費税の沿革

1.付加価値税の沿革

消費一般に対する課税の方法としては、小売売上税、累積型取引高税、付加価値税等があります。
小売売上税、累積型取引高税は、いずれも、企業間取引における税の累積の問題を排除できない(水野忠恒『租税法 第2版』(有斐閣、2005年)663頁以下)
という問題点があるとされています。
小売段階までを対象とする前段階税額控除型付加価値税は、1967年のEU一次指令に基づき、1968年1月にフランス・旧西ドイツにおいて初めて導入されました。

EU型付加価値税の特徴は、事業者間取引における税の累積を防ぎ、最終的に税を消費者に負担させるために、インボイス(納品書を意味します。)を用いることにより、事業者が仕入段階で支払った付加価値税額を控除する仕組をもつことです。インボイスの記載事項として求められるのは、発行者が課税当局に登録した事業者番号を除くと、日本の消費税法が帳簿及び請求書等において求めている記載事項と基本的に同じと考えてかまいません。日本の場合は、5%の単一税率ですから不要ですが、複数税率を用いる場合にはインボイスにその取引の適用税率の記載が求められることになります。

EU型付加価値税はその後急速に世界各国で導入されるようになりました。ただし、アメリカにおいては、レーガン政権時代にその実施に向け詳細な検討が行われました
(アメリカ財務省編・塩崎潤訳『公平・中立・簡素および経済成長のための税制改革』(今日社、1986年)は、その検討報告の邦訳です。)
しかし、結果的には導入が見送られ、現在に至っています。

アメリカにおいて連邦レベルにおける付加価値税導入論は常に行われているのですが、前述の報告では、付加価値税の有する逆進性の問題が課税の公平に反すること、州やその下の地方政府レベルにおいて主な財源とされている小売売上税(Sales Tax, Use Tax)等と並存することとなり制度が複雑化することとそれに対する行政コスト面からメリットがないと結論付けているわけです。
なお、カナダにおいては、アメリカ同様、州レベルの小売売上税が存在するわけですが、連邦レベルの付加価値税としてのGSTも課税されています。

2.日本の消費税の沿革

日本における一般消費税導入は、昭和53年の一般消費税法(仮称)案及び昭和62年の売上税法案挫折を経て、昭和63年12月の消費税法成立によっています。また、消費税法は、成立・施行に際し、その立法趣旨を説明する税制改革法の立法を伴っていたことは極めて異例のことであるといえます。

税制改革法においては、消費に広く薄く負担を求める消費税を創設(同法10①)」し、「消費税は、事業者による商品の販売、役務の提供等の各段階において課税し、経済における中立性を確保するため、課税の累積を排除する(同法10②)」ものであると規定されています。また、「事業者は、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税を円滑かつ適正に転嫁する(同法11①)」とも規定しされています。

これらの規定から、消費税は、消費に広く負担を求める一般消費税であり、付加価値税として制定されたという立法趣旨を読み取ることができます。

税制改革
法の性格に関してですが、消費税法に対する関係において、「講学上のいわゆる上位規範に当たるものではない。」(東京地裁平成2年3月26日判決(税資175号194頁))における被告・国側主張
とされています。
この裁判において、判決はこの点について明確な判断を下していません。

消費税導入当初の段階において、税制改革法の租税法体系上の位置づけ、さらに消費税の本質が付加価値税であるか否かについて、裁判所は、明確に判断すべきであったと考えられます。インボイスを用いるか、帳簿を用いるかというような点は本質的議論では全くないのです。

実際に商取引を行ったことのない、旧大蔵官僚や、裁判官には取引における価格決定メカニズムを理解することは決定的に不可能です。
戦後の日本は、長い間、価格統制経済であったというべきですが、規制緩和、厳密には規制撤廃というべきですが、自由に市場が核を決定するシステムが広く導入されると同時に付加価値税である消費税が施行されたことは、特に留意が必要だと考えます。

社会主義経済のような統制経済、あるいは、戦時下の日米のような統制経済下において消費税は導入されたのではないのです。

Ⅲ.消費税の課税対象の問題点

1.納税義務者

(1)事業者

消費税の納税義務者は、国内において課税資産の譲渡等を行った事業者であって(消法5)、一般消費者ではありません。

消費税における消費者、納税義務者である事業者等の関係について判例は、
「消費税法及び税制改革法には、消費者が納税義務者であることはおろか、事業者が消費者から徴収すべき具体的な税額、消費者から徴収しなかったことに対する事業者への制裁等についても全く定められていないから、消費税法等が事業者に徴収義務を、消費者に納税義務を課したものとはいえない。」(前掲東京地裁平成2年3月26日判決)
と判示し、消費税の納税義務者は、事業者であり、消費者が納税義務者、事業者は徴収義務者と解釈する余地はないとしています。
最高裁平成5年9月10日判決(税資198号813頁)も、【判示(5)】として
「また、消費税法5条1項、税制改革法11条1項の規定によれば、消費税は、課税資産の譲渡等を行う事業者を納税義務者として課される間接税であり、事業者は、消費者が支払う消費税相当額の金員を、売買等の契約という法律上の原因に基づいて取得するものであるから、上告人と被上告人国との間で、上告人が売買契約の相手方である事業者に支払つた消費税相当額の金員につき不当利得関係を生ずるものではない。したがって、所論違憲の主張は、原判決の結論に影響のない事項について原判決を論難するものにすぎない。論旨はいずれも採用することができない。」と
しており事業者が納税義務者であるという点で同旨です。

また、
「事業者が消費税を転嫁すること自体は、経済取引における力関係によって決定されるのであり、税制改革法や消費税法によって担保されているわけでもない。」(大阪高判平6.12.13、税資206号679頁)
と判例が示すとおり、消費税の転嫁を担保する法規も存在しないわけです。

消費税の納税義務者が事業者であること、転嫁の保障も義務付けもなされていないことから消費税は、あくまで間接税的性格の税というべきでしょう。事業者は全ての取引において消費税相当額の価格上乗せが可能であり、最終的に消費税の負担をするのは消費者だとする消費税の転嫁論、あるいは、事業者は消費税相当額を取引の相手から預るという預り金的性格論などは、消費税法本法の解釈から導き出されるものとはいえないのです。

ただ、消費税を価格転嫁することが難しい中小零細事業者が平成に入ってからの長期デフレ経済の下、諸費税の滞納をすることが多発し、それに対して、かなり強権的な徴収事務が行われているという事実があります。その際の行政処分庁の言い分としては、消費税は預り金的性格のものとして「国民から」預っているものであるという見解が強調されます。都合のよいときだけ、預り金論を持ち出すわけです。

現在の日本は統制経済では、ありません。2008年4月初めからのガソリン税の暫定税率の期限切れを巡るガソリン小売価格においては、本来、個別消費税であり、それも、蔵出し税であって価格に上乗せしないと販売事業者が損失を蒙ることが明らかであるにもかかわらず、市場の価格競争の結果として、ガソリン税の暫定税率分を販売事業者が負担するということが起こっています。

このように、机上の論議としての転嫁論と現実の経済取引とは全く異なることに留意が必要です。

また、平成16年4月1日から課税事業者が一般消費者に対して行う価格表示に関して税込みで表示する総額表示が義務付けられました(消法63の2)。EU型付加価値税においては、付加価値税を表示価格に含む総額表示が一般的な原則です。

商品の実際の購入価格が表示されてわかりやすいとされる総額表示方式は、逆に、一般消費者から消費税額が見えにくくなり、一般消費者の税負担感、事業者における転嫁の可能性といった問題を曖昧にするという側面があることを見逃すべきではありません。税率引上げに向け布石を打っているというところでしょうか。

 (2)免税事業者

事業者のうち、課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき消費税の納税義務が免除されています(消法9①)。このような事業者が免税事業者と呼ばれます。これは、中小事業者の事務処理能力・徴税コスト等を配慮した制度とされています。

免税事業者に該当するかどうかは、基準期間における課税売上高により判定されることになっています。基準期間とは個人事業者については課税期間の前々年、法人については課税期間の前々事業年度をいいます。

課税期間の前々年又は前々事業年度という二年前に基準期間をおいた理由としては、
消費税が転嫁を予定する税であることから、課税期間の納税義務はその課税期間の開始前に判定されなければならず、課税売上高の計算期間を考慮して前年又は前事業年度ではなく、前々年又は前々事業年度とするのが適当と判断されたことによる(畠山武道・渡辺充『新版 租税法』(青林書院、2000年)242頁)
というように説明されています。

この基準期間という考え方自体が、実際に事業者であってもなかなか理解をするのが難しい点であるのは事実です。

また、基準期間の課税売上高の計算について、その基準期間において課税事業者であった場合は、税抜きで計算し、免税事業者であった場合は、税込みで計算することになっています。

一見矛盾するこのような判断基準を認める最高裁平成17年2月1日判決(事件番号 平成12(行ヒ)126・事件名 消費税決定処分等取消請求事件・年月日 平成17年02月01日・法廷名 最高裁判所第三小法廷 ・ 判決・ 棄却・判例集 第59巻2号245頁 )は、
事業者が,消費税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)9条1項に該当するとして,課税期間に係る基準期間において課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務を免除された場合に,消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの)9条2項,28条1項を適用して当該基準期間における課税売上高を算定するに当たっては,免除される消費税相当額を控除することなく,課税資産の譲渡等の対価の額を算定すべきである。http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25073&hanreiKbn=01
としています。
判決は 
3(1) 法9条1項は,課税期間に係る基準期間(事業者が法人の場合は,法2条1項14号により,その事業年度の前々事業年度をいう。)における課税売上高が3000万円以下である事業者について,その課税期間中の課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務を免除するものと規定する。
 法9条1項に規定する「基準期間における課税売上高」とは,事業者が小規模事業者として消費税の納税義務を免除されるべきものに当たるかどうかを決定する基準であり,事業者の取引の規模を測定し,把握するためのものにほかならない。ところで,資産の譲渡等を課税の対象とする消費税の課税標準は,事業者が行う課税資産の譲渡等の対価の額であり(法28条1項),売上高と同様の概念であって,事業者が行う取引の規模を直接示すものである。そこで,法9条2項1号は,上記の課税売上高の意義について,消費税の課税標準を定める法28条1項の規定するところに基づいてこれを定義している。
 すなわち,法9条2項1号は,上記の課税売上高とは,基準期間が1年である法人の場合,基準期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額(法28条1項に規定する対価の額をいう。)の合計額から所定の金額を控除した残額をいうものと規定する。そして,同項は,「課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は,課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し,又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし,課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税に相当する額を含まないものとする。)とする。」と規定する。
 法28条1項の趣旨は,課税資産の譲渡等の対価として収受された金銭等の額の中には,当該資産の譲渡等の相手方に転嫁された消費税に相当するものが含まれることから,課税標準を定めるに当たって上記のとおりこれを控除することが相当であるというものである。したがって,消費税の納税義務を負わず,課税資産の譲渡等の相手方に対して自らに課される消費税に相当する額を転嫁すべき立場にない免税事業者については,消費税相当額を上記のとおり控除することは,法の予定しないところというべきである。
 以上の法9条及び28条の趣旨,目的に照らせば,法9条2項に規定する「基準期間における課税売上高」を算定するに当たり,課税資産の譲渡等の対価の額に含まないものとされる「課されるべき消費税に相当する額」とは,基準期間に当たる課税期間について事業者に現実に課されることとなる消費税の額をいい,事業者が同条1項に該当するとして納税義務を免除される消費税の額を含まないと解するのが相当である。
 (2) 前記事実関係によれば,上告人は,本件基準期間において,売上総額が3000万円を超えており,かつ,免税事業者に該当していたというのである。そうすると,上告人は,本件課税期間において,免税事業者に該当しないこととなるから,本件各決定が違法であるとはいえない。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/5A366038EB92879A49257052002690D6.pdf
と結論付けています。

例えば、上告人の主張にあるように、課税売上高が毎年税込み1,040万円の事業者を仮定すると、二年ごとに免税事業者と課税事業者を交互に繰り返すことになるという矛盾に対して説得的な説明はなされていないのです。

上記税込み、税抜きによる免税事業者の判定は、通達(消基通1-4-5)によらず、法令で規定するべきです。また、その場合、規定においては、帳簿方式を用いている限り、基準期間において課税事業者であるか否かに関らず、税抜きで判定する又は税込みで判定するといういずれかに統一すべきでしょう。

2.課税対象

(1)課税取引

① 国内取引

消費税の課税対象は「国内において事業者が行った資産の譲渡等」です(消法4①)。また、「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とされています(消法2①八)。

事業者が事業として行う取引ですが、消費税法は、事業の意義について、

「対価を得て行われる資産の譲渡等の行為を反復、継続、独立して遂行することと解するのが相当であり、消費に広く負担を求める消費税においては、所得税と異なりその規模までは問わない。」(平成5年7月1日裁決、裁事46号225頁)
とする裁決があり、その範囲を所得税よりも広く捉えていることに注意が必要です。課税事業者と免税事業者に関する規定振りも同様の考え方に立っていると考えられます。

また、法人税の場合は、財団法人・社団法人のような公益法人等や人格のない社団等(公益法人等)に関しては、限定列挙された収益事業を営む場合においてのみ課税されることになっています。しかし、消費税の場合は、収益事業という概念は存在しません。それよりも広い意味の事業を行う公益法人等に対して課税されることになるのです。

特に、免税事業者の課税売上高が1000万円以下と引き下げられたことにより、これらの公益法人等の課税事業者が増加することとなりました。公益法人等の中の人格のない社団の例としては、学校のPTAなども含まれることになり、仮に利益が出ていないとしても、そのPTAや町内会等が行う事業による課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務者になるということです。

国等が行う事業の場合と同様に、公益法人等に関しては、特定収入に該当する収入によって運営が成立しているところが少なくないと考えられます。この特定収入に関する法令を正しく理解し適用、計算を行なうことに関しては、専門性・特殊性が高いにもかかわらず、経理担当者等が法令等に関する十分な理解をしていない場合が少なくありません。そこで、課税当局との争いや、法令の適用誤りの増加が懸念されます。

② 非課税取引

日本の消費税法は、課税取引の範囲をEU諸国に比べて狭くしている点に特徴があります。

非課税取引に該当する取引であってもその前段階において消費税が課税されているときは、消費税相当額を実質的に価格に上乗せして転嫁することは可能ですが、上乗せが不可能な場合は、逆に仕入税額控除をする権利がないので消費税相当額を事業者が自己負担する結果となるわけです。

非課税取引を少なくすることは、執行上の便宜を図ることになるといえますが、反面、課税の公平は、犠牲となります。簡潔、簡便な制度は運用が楽といえるしょうが、課税の公平とトレード・オフの関係になるというのは所得税等の他の税目においても同じことが言えます。

逆進性が強いという欠点を有する消費税の税率引上げに際しては、非課税取引の範囲の見直しが必要でしょう。さらに、輸出以外の取引に対するゼロ税率や、生活必需品等の軽減税率適用を含む複数税率の導入を検討する必要もあるでしょう。これらは、特に、税率引き上げの反対意見に対して政治的な折合いをつけるための手段として、あるいは、見せかけの公平性の確保を主張するためにどうしても必要になると考えられます。

③ 免税取引

消費税は、内国消費税なので物品等を輸出した場合には、免税が適用されることになります。輸出に関しては、消費税のような付加価値税固有の問題として、国境税調整が必要です。国境税調整を行わないと原産地国と消費地国の二箇所で課税される場合、あるいは、どちらでも課税されない場合があり得るからです。

国境税調整に関しては、仕向地主義と原産地主義があり、日本の場合は仕向地主義を採用しています。つまり、輸出の際、免税となり、輸入の際に課税される仕組です。

仕向地主義のもとでは、税制の国際的競争中立性が確保されるといわれます。
「原産地国と仕向地国が同様の税率・課税範囲等が同じ付加価値税を有しているということが前提となる」(金子宏『租税法 第十版』(弘文堂、2005年)542頁)
とされています。

これに対し、アメリカのように輸出免税の適用される付加価値税を持たない国からは、輸出免税は、輸出補助金に該当するという批判がなされています。

WTOは、インボイス方式の付加価値税における輸出免税を輸出補助金の例外として認めているわけです。しかし、
日本のように帳簿方式による仕入税額控除方式を用いている場合は、その実質は仕入控除型付加価値税であり、輸出免税に名を借りた補助金である(水野忠恒『消費税の制度と理論』(弘文堂、1989年)186頁))
いう批判もあります。

なお、国境税調整に関し、実物財の移動を伴わない国際的電子取引に対する課税権が、どこの国に存するのかという問題が生じえます。例えば、インターネットのサーバーは、恒久的施設に該当するか等と見ることができるか等について、検討する必要があるでしょう。 

Ⅳ.仕入税額控除
 
(1) 仕入税額控除

仕入税額控除は、付加価値税としての消費税の生命(大島隆夫・木村剛志「消費税法の考え方・読み方(四訂版)」245頁、(税務経理協会、2004年))
であり、理論的本質であるとされています。

消費税法は、国内取引における仕入税額控除について「事業者(免税事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れについては、課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額につき課された又は課されるべき消費税額の合計額を控除する。」(消法30①)と規定しています。

(2)仕入税額控除の方法

仕入税額控除は、課税資産の譲渡等に対応する課税仕入れに係る税額が控除され、非課税取引、課税対象外取引に対応する部分は控除されません。しかし、実務上の便宜のため、課税売上割合が95%以上の場合は、課税仕入れに係る消費税の全額の控除が認められています。課税売上割合が95%未満の場合は、課税売上高に対応する仕入税額をプロラタ方式により計算する必要があります。さらに、個別対応方式と簡便法である一括比例配分方式の選択が認められています。

この課税売上割合95%以上の企業すべてが消費税の全額控除を認められていることについては、
大企業で課税売上高が大きい場合は、この部分の金額が大きくなりいわゆる簡易課税制度による益税よりも多額になる(山本守之『租税法の基礎理論』(税務経理協会、2004年)346頁以下)
という指摘があります。

簡易課税制度は、中小企業の事務負担軽減措置ですが、大企業は、帳簿組織等の整備、電子化が行われていて優遇する必然性に欠けると考えられます。

以下続く
by nk24mdwst | 2008-01-27 15:02 | 租税法(日本)