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captal loss 3

東京地裁平成20年2月14日判決の続きです。出典は、TAINS Z888—1313です。
TAINSというのは税理士情報税法ネットワークという税理士等を会員とする税法、税務関連裁決、判決データベースです。

3-3より続く

判決文の冒頭にもどる

(別紙) 当事者目録
         第603号事件原告           甲
         第604号事件原告           乙
         第606号事件原告           丙
         第607号事件原告           丁
         原告ら訴訟代理人弁護士      山 田 二 郎
         同                    小 池 信 行
         同                    井 上 康 一
         被    告                 国
         代表者法務大臣             鳩 山 邦 夫
         第603号第604号事件処分行政庁   芦屋税務署長
                             〇〇 〇〇
         第606号事件処分行政庁        目黒税務署長
                             〇〇 〇〇
         第607号事件処分行政庁        吹田税務署長
                              〇〇 〇〇
         指定代理人             〇〇 〇〇
         同                   〇〇 〇〇
         同                   〇〇 〇〇
         同                   〇〇 〇〇
         同                   〇〇 〇〇
         同                   〇〇 〇〇
         同                   〇〇 〇〇
         同                   〇〇 〇〇
         同                   〇〇 〇〇
         同                   〇〇 〇〇
(別紙) 物件目録
  (内容省略)
(別紙) 争点に対する当事者の主張
(原告らの主張)
 改正措置法31条を平成16年1月1日にさかのぼって適用することは、租税法律主義に違反し、かつ、納税者の予測可能性を侵害する違憲なものであるので、同条の適用を前提とする本件各通知処分は違法である。
(1) 憲法に不利益遡及立法を禁止する明文規定はないが、租税法律主義(憲法84条、30条)は、納税者の信頼を裏切り、法的安定性を害するような不利益遡及立法を禁止するものであることが明らかというべきである。
 この点に関して、東京高等裁判所平成11年11月11日判決(税務訴訟資料245号261頁)は、不利益遡及立法の禁止が憲法上の要請であることを確認した上で、その例外を認めるためには納税者の予測可能性や法的安定性を犠牲にしてもやむを得ない合理性が不可欠であるとしている。福岡高等裁判所昭和48年10月31日判決(訟務月報19巻13号220頁)も、不利益遡及立法が原則として許されないとした上で、例外的に納税者が十分予測できるような形で不利益遡及立法が予告され、周知されている場合には、納税者の信頼を害することもなく、納税者の予測可能性と法的安定性の面からも問題ないことから、このような場合に限って憲法違反にならないとしている。
(2) 改正措置法は、平成16年3月26日に成立し、同月31日に公布された。同法31条1項後段の規定は、本件改正附則27条1項により同年1月1日にさかのぼって適用される。そうすると、同日から同年3月31日までに行われた不動産の譲渡についても、その譲渡損失の損益通算が否定されることになるから、本件改正附則27条1項が不利益遡及立法に該当し、租税法律主義を定める憲法84条及び30条に違反し許容されないのが原則である。また、本件においては、上記東京高裁判決及び福岡高裁判決が判示した例外として不利益遡及立法が許容される具体的事情を見いだすことはできない。
 本件の立法は、所得税の課税年度開始前に一般的にしかも十分に周知され、納税者が予測できたものとはいえない。特に本件で問題となっている不動産の譲渡は、個人が容易に行い得る取引の部類に属しないものであるから、租税法規に対する納税者の信頼は厚く保護される必要がある。このことは期間税である所得税においても変わらない。本件改正附則27条1項は、このような納税者の信頼を裏切り、予測可能性と法的安定性を著しく害するものにほかならず、違憲で無効であるというべきである。
(3) 期間税は、所得税・法人税等のように年、月をもって定期に課される課税であって、相続税、印紙税等のように随時に生ずる租税(随時税)と区分して分類されている。期間税は、一定の期間内に累積する課税物件を対象として課される租税についてその課税物件を当該期間の終了時に累積計算して納税義務を成立させるものであり、期間税においても課税物件の対象の存否(課税要件を構成する個々の課税物件についてその時点で施行されている法令に基づく所得計算の累計)が問題となるのであって、期間税であるから不利益遡及立法に当たらないとする被告の主張は当を得ていない。期間税について、年度の途中で納税者に不利益な改正がされ、年度の初めにさかのぼって適用することも、そのような改正が年度開始前に一般的にしかも十分に予測されているような特殊な事情があるものでない限り違憲である。改正措置法31条は課税期間開始前に一般的に、しかも十分に予測されたものとはいえず、所得税が期間税であることを理由として、本件改正附則27条1項を憲法上の要請である不利益不遡及の禁止の例外に当たるものとして正当化することは到底許されない。
(4) 被告は、所得税法における過去の改正例を挙げるが、これらの規定はいずれも合憲性について司法判断がされたものではない。また、被告の挙げる改正例は、いずれも取引の予測可能性に無関係なものか、又は極めて影響の少ないものである。
 さらに、過去の所得税法の改正の経緯をたどると、納税者に不利益な改正で、かつ、取引の予測可能性に深く関係し、納税者の経済生活に与える影響が大きいと考えられるものについては、その適用時期を当該年分の初日にさかのぼらせるのを避けるのがこれまでの立法の建前である。
(被告の主張)
(1) 不利益不遡及の原則の意義
 憲法30条、84条は、租税法律主義を採用している。租税法律主義は、不利益不遡及の趣旨を包含すると解されており、過去の事実や取引を課税要件とする新たな租税を創設し、あるいは過去の事実や取引から生ずる納税義務の内容を納税者の不利益に変更する遡及立法を許さないとする趣旨のものである。
 新たに制定された法律は、その制定前の行為や事実については、さかのぼって適用されないのが原則であるが、場合によっては法令が過去の時点までさかのぼり、過去の事象に対して適用されることがあり、これを遡及適用という。このような遡及適用を認める立法を遡及立法という。
 遡及立法は、すでに発生、成立している状態に対し、法令が後から規制を加え、その法律関係を変更するものであり、このことから、租税法における不利益不遡及の原則をとらえれば、既に成立した納税義務の内容を納税者に不利益に変更する遡及立法又は遡及適用を許さない原則をいうものと解される。
(2) 改正措置法31条1項後段を本件譲渡に適用しても、既に成立した納税義務の内容を変更するものではないこと
 ア 所得税の納税義務は、暦年の終了の時に成立する(国税通則法15条1項1号2項)。
 所得税には所得の計算期間についての定めはないが、所得税法23条ないし35条の規定からすると、所得税はその年中(1暦年中)の所得ごとに計算される。
 イ 国税通則法15条1項は、納税義務が成立する場合には、原則として、国税に関する法律の定める手続により、その国税についての納付すべき税額が確定される旨規定し、同法16条1項は、国税についての納付すべき税額を確定する手続について、申告納税方式又は賦課課税方式のいずれかの方式による旨規定しているところ、所得税法は、申告納税方式を採用している(所得税法120条)。
  したがって、原則として、所得税の納税義務は、暦年の終了の時に成立し、その年分の納付すべき税額は、所得税法120条の規定による確定所得申告の手続により確定することとなる。
 ウ 所得税法は、所得を10種類に分類し各種所得ごとに所得の金額を計算して、これを合算して課税標準を求めることとし、各種所得の金額は1暦年を単位として、その期間ごとに計算、合算がされて課税標準となる総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する。そして、所得税法69条1項は、上記計算において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序によりこれを他の各種所得の金額から控除する旨規定している。
  譲渡所得の金額は、その年中の当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除額を控除した金額とされている。すなわち、譲渡所得の金額の計算は、1暦年を単位としてその期間ごとにされるものであって、個々の譲渡をした都度計算がされるものではない。
 損益通算は、所得税の納税義務が成立し、納付すべき税額を確定する段階において、その年間における総所得金額等を計算する際に、譲渡所得等の金額の計算上損失が生じている場合には、その金額を他の各種所得の金額から控除するという制度であって、個々の譲渡等の段階において適用されるものではない。また、その対象となる譲渡所得の金額の計算も、個々の譲渡の都度されるものではなく、1暦年を単位とした期間で把握されるものである。
 エ そうすると、暦年の途中で損益通算に関する規定の改正が行われた場合には年間の所得を単位として改正法を適用するのが適当であり、その適用を当該暦年の初日からとすることは当然のことといえる。したがって、平成16年4月1日から施行された改正措置法31条1項後段が、本件改正附則27条1項により同年1月1日以後に行う譲渡についてすると規定していることは、当然のことがらを注意的に定めたものと解すべきである。
 そして、平成16年分の所得税の納税義務は暦年の終了の時である平成16年12月31日に成立し、翌年の3月15日までに申告することにより納付すべき税額が確定するものであるが、損益通算は、個々の譲渡が行われた時に適用されるものではなく、暦年の終了後、平成16年分の課税標準を計算する過程において適用するものである。したがって、平成16年4月1日に施行された本件改正附則27条1項に基づき、同年1月1日から同年3月31日までに行われた譲渡について改正措置法31条1項後段の規定を適用し、損益通算を認めなかったとしても、この時期は、いまだ平成16年分の所得税の納税義務は成立していないのであるから、所得税の納税義務の内容を変更するものではない。
 オ 本件改正附則27条2項及び3項は、施行日前に死亡した者、施行日前に平成16年分の所得税につき所得税法127条の規定による申告書を提出した者及び同年分の所得税に係る措置法31条の規定を適用するに当たっては、土地建物等の譲渡による所得以外の他の所得との損益通算及び長期譲渡所得の100万円特別控除については従前通り適用する旨規定し、施行日前に既に所得税の納税義務が成立又は確定している場合には、成立した納税義務の内容を変更することとならないよう配慮しているものである。
 また、過去の同種の改正、損益通算に関する規定については、改正過程において、暦年の途中に施行された場合でも、その適用がその暦年の初日(1月1日)からとされている。その例は次のとおりである。
 (ア) 昭和25年の税制改正により、所得の計算上一時所得以外の所得の損失について、他の所得と損益通算が認められることとなり、当該改正法が同年4月1日に施行されたが、昭和25年分(1月1日からの意味。以下、同じ。)以後の所得税について適用されている。
 (イ) 昭和27年の税制改正において、退職所得が損益通算の対象外とされ、当該改正法が同年4月1日から施行されたが、昭和27年分以後の所得税について適用されている。
 (ウ) 昭和36年の税制改正において、趣味・娯楽の資産の譲渡による所得等の損失について損益通算が廃止されることとなり、当該改正法が同年4月1日から施行されたが、昭和36年分以後の所得税について適用されている。
 (エ) 昭和37年の税制改正により、生活に通常必要でない資産についての災害に係る雑損失と譲渡所得以外の所得との損益通算が廃止さることとなり、当該改正法が同年4月1日から施行されたが、昭和37年分以後の所得税について適用されている。
 (オ) 現行所得税法においても、昭和43年の税制改正において、雑所得の金額の計算上生じた損失と他の所得との損益通算が廃止されることとなり、当該改正法が同年4月20日から施行されたが、昭和43年分の所得税について適用されている。
(3) 暦年途中に施行された改正法をその暦年の初日にさかのぼって適用することは憲法に違反しないこと
 ア 仮に、本件改正法(ママ)27条1項により、平成16年の終了時において、同年1月1日から同年12月31日までの間の譲渡により生じた損失が、他の譲渡による損益と合算してもなお解消されなかった場合に、その損失を他の各種所得と損益通算することができなくなることをもって、納税者にとって不利益な立法がされたものと解する余地があるとしても、改正措置法31条1項後段を平成16年1月1日以後に行われる譲渡に適用することが、憲法に反するものではない。
 すなわち、憲法30条は、国民の納税義務を定め、同法84条は、租税法律主義を採用しているが、個々の具体的な租税法規の定立については、立法機関である国会にゆだねている。この点につき、判例においても、「租税は、今日では、国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え、所得の再分配、資源の適正配分、景気の調整等の諸機能をも有しており、国民の課税負担を定めるについて、財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく、課税要件等を定めるについて、極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである。したがって、租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはな」いとされている(最高裁昭和60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁)。
  したがって、国会により、暦年の途中に改正された法を、その施行日以前である暦年の初日にさかのぼって適用する旨の立法がされたとしても、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法の内容が上記目的との関連で不合理であることが明らかでない限り、憲法に反することにはならないというべきである。
 イ 土地税制は、各般の総合的な土地政策の一環をなすものであるところ、土地税制の在り方を考えるに当たっては、土地基本法1条、2条、15条に規定された、理念が重要な指針となる。
 土地建物等の譲渡損益は、取得時から相当期間の経過によって生じるため、その譲渡の時期は納税者の任意の判断により決めることができ、それにより譲渡損益を一度に実現することができるのに対し、事業所得や給与所得などの経常所得は、毎年毎年の労働や勤労などの成果により生ずるものである。このように、土地建物等の譲渡損益と事業や給与などの経常所得とは、性格が異なることから、土地建物等の譲渡損益を、他の所得と通算することには問題がある。改正前措置法における土地建物等の長期譲渡所得に係る損益通算の制度は、分離課税の対象となる土地建物等の長期譲渡所得に対する課税については、利益が生じた場合には26パーセントの比例税率による分離課税とされていたが、損失が生じた場合には最高税率50パーセントで総合課税の対象となる他の所得の金額から控除することができることとなっており、このような制度は、主要諸外国の例のない不均衡なものであった。平成16年度税制改正は、土地は、土地基本法の定めのとおり、公共性のある資産であることを前提に、譲渡損益と経常所得との性格の違いを踏まえながら、利益と損失の課税の取扱いの均衡や土地市場の活性化といった観点から行われた。
 居住者に対する所得税の課税は、すべての所得を合算した金額に対して行われるのが原則であるが、所得税法では、退職所得及び山林所得に対しては総合課税の例外としてそれぞれ分離課税とされ、措置法においては、総合課税に対する多くの例外が定められている(同法3条、3条の3、8条の2、8条の3、28条の4、31条及び32条)。
 また、平成16年度税制改正においては、資産性所得一体化の流れの中で、土地建物等の長期譲渡所得に対する税率及び損益通算等の取扱いを株式等に対する課税に合わせることにより、土地建物等の長期譲渡所得に対する課税を完全な分離課税の形にするため、土地譲渡益課税につき、長期譲渡所得の税率引下げ(26パーセントから20パーセントへ)と他の所得との損益通算及び100万円特別控除の廃止とが一つのパッケージとして措置されることとなった。
 ウ 損益通算の廃止は、税率の引き下げと一つのパッケージとしてともに一体で早急に実施することが、使用収益に応じた適切な価格形成を実現し、特に収益性の高い土地の流動性を高め、土地市場の活性化を早急に図るために適切かつ必要であることから実施されたものである。本件の損益通算の廃止は、土地本来の使用収益目的とは離れた損益操作や節税目的の土地の売却を防止しながら、使用収益に応じた適切な価格形成の実現を土地市場で図ることを意図して行われたものであり、損益通算を維持するためにパッケージ全体の適用を1年間遅らせることは適当ではなく、平成16年1月1日以後の土地建物等の譲渡について損益通算を認めないこととされたものである。これは、損益通算の廃止の適用時期を遅らせるとすれば、その間に節税のための損益通算を目的とした安売りによる土地の売却を招いて、土地市場に不測の影響を及ぼすことが予測されたことによる。
 なお、念のため付言すると、平成16年度税制改正の内容は、平成15年12月17日に与党において「平成16年度税制改正大綱」が取りまとめられ、同月18日に大きく報道されていた。
 また、平成16年度税制改正においては、土地等又は建物等の譲渡損失を他の所得と損益通算することは認められなくなったが、住宅価格が下落する中、ライフステージに応じた住み替え等をきめ細かく支援する観点から、「特定の居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除」の特例制度を拡充し、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例制度に改組し、また、上記特例との選択により、新たに「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」の特例制度が創設され、居住用財産を譲渡した場合の譲渡損失の金額の一部について、一定の要件の下に他の所得との損益通算及び繰越控除を認め、あるいは、居住用財産を譲渡して買換えによって生じた純損失の金額の一部について他の所得との損益通算及び繰越控除を認め、居住用財産については、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の拡充・創設などの配慮がされている。
  エ このように、本件改正附則27条1項の規定の立法目的は正当であり、また、平成16年1月1日以後の譲渡について本件改正法を適用することは、上記立法目的との関連で不合理であることが明らかとは到底いえず、憲法に違反するものではない。

別表1-1~4 本件通知処分の経緯
(内容省略)  

これら一連の事案、つまり福岡地裁、福岡高裁判決、さらに千葉地裁、東京高裁判決、それらに関する評釈、その他についてはいずれ、検討してみたいと思っています。

         
by nk24mdwst | 2009-02-14 05:38 | 租税法(日本)

capital loss 2

東京地裁平成20年2月14日判決の続きです。出典は、TAINS Z888—1313です。
TAINSというのは税理士情報税法ネットワークという税理士等を会員とする税法、税務関連裁決、判決データベースです。

3-1より続く

第3 争点に対する判断
 1 租税法規の遡及適用と租税法律主義
 (1) 平成16年2月26日に本件各土地及び本件各建物の代金残額を受領し、これをもって平成16年において本件譲渡によって収入すべき金額に当たることについては、当事者間に争いがないところ、原告らは、当該譲渡に伴う譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を所得税法69条1項に従い他の各種所得の金額から控除することができる(損益通算をすることができる)と信じ、かかる信頼の下ですべての取引を完了していたのであって、それにもかかわらず、改正措置法31条1項後段の規定を本件譲渡について適用するとすれば、本件譲渡時における租税法規に従って課税が行われるものと信じた納税者の信頼を著しく裏切り、その経済生活における予測可能性や法的安定性を甚だしく損なうことから、本件改正附則27条1項は租税法律主義を定めた憲法84条、30条に違反すると主張する。
 (2) 確かに、行政法規をその公布の前に終結した過去の事実に適用することは、一般国民の生活における予測を裏切り、法的安定性を害するものであることを否定することができず、これをむやみに行うことは許されないというべきである。このことは、国民の納税義務を定め、これにより国民の財産権への侵害を根拠付ける法規である租税法規の場合にはより一層妥当するものである。したがって、租税法規を遡及して適用することは、それが納税者に利益をもたらす場合は格別、過去の事実や取引を課税要件とする新たな租税を創設し、あるいは過去の事実や取引から生ずる納税義務の内容を納税者の不利益に変更するなど、それによって納税者が不利益を被る場合、現在の法規に従って課税が行われるとの一般国民の信頼を裏切り、その経済生活における予測可能性や法的安定性を損なうものとして、憲法84条、30条から導かれる租税法律主義に反し、違憲となることがあるものと解される。
 しかし、遡及処罰を禁止している憲法39条とは異なり、同法84条、30条は、租税法規を遡及して適用することを明示的に禁止するものではないから、納税者に不利益な租税法規の遡及適用が一律に租税法律主義に反して違憲となるものと解することはできない。「租税は、今日では、国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え、所得の再分配、資源の適正配分、景気の調整等の諸機能をも有しており、国民の課税負担を定めるについて、財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく、課税要件等を定めるについて、極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである」(最高裁昭和60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁)。したがって、課税要件等に限らず、租税法規を納税者に不利益に遡及適用することについても、上記の諸般の事情の下、その合理的な必要性が認められるときは、租税法律主義に反しないものとして許容される余地があるものと解される。そして、この場合、納税者に不利益な遡及適用が租税法律主義に反しないものといえるかどうかは、その遡及適用によって不利益に変更される納税者の納税義務の性質、その内容を不利益に変更する程度、及びこれを変更することによって保護される公益の性質などを総合的に勘案し、その変更が合理的なものとして容認されるべきものであるかどうかによって判断すべきである財産権の遡及的制約に関する最高裁昭和53年7月12日大法廷判決・民集32巻5号946頁参照)。
 以下、この見地から検討する。
 2 本件改正附則27条1項についての具体的検討
 (1) まず、所得税納税義務の性質及び改正措置法31条1項後段の規定を遡及適用することによって納税者が不利益を被る程度についてみる。
 所得税はいわゆる期間税であり、これを納付する義務(納税義務)は、国税通則法15条2項1号の規定により暦年の終了の時に成立し、また、その年分の納付すべき税額は、原則として所得税法120条の規定により確定申告の手続によって確定するところ、譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を各種所得の金額から控除する(損益通算する)ことは、所得税の納税義務が成立した後の納付すべき税額を確定する段階で初めて行うものであり、個々の譲渡の段階で行うものではない。そして、所得税に関する法規が暦年の途中に改正され、これがその年分の所得税について適用される場合、暦年の最初から当該改正法の施行までの間に行われた個々の取引についてみれば、当該改正法が遡及して適用されるとみることができるものの、所得税の納税義務が成立するのはその暦年の終了の時であって、その時点では当該改正法が既に施行されているのであるから、納税義務の成立及びその内容という観点からみれば、当該改正法が遡及して適用されその変更をもたらすものであるということはできない。
 そうすると、暦年の最初から当該改正法の施行までの間に行われた個々の取引についてみれば、譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額の多寡に応じた不利益を被るということも想定できるが、本件改正附則27条1項により改正措置法31条1項後段の規定を平成16年1月1日から同年3月31日までに行われた譲渡について適用したとしても、納税者の平成16年分所得税納税義務の内容自体について着目するならば、さかのぼって不利益に変更されたということはできない。
 (2) さらに、遡及適用によって保護される公益の性質につき、原告らは、納税者の予測可能性や法的安定性を犠牲にしても、改正措置法31条1項後段の定める土地等又は建物等の譲渡損失の損益通算の禁止の措置をあえて平成16年1月1日に遡及して適用しなければならない合理的理由を認めることができず、本件改正附則27条1項は違憲、無効であると主張する。
  確かに、平成16年1月1日から同年3月31日までの間に土地等又は建物等の譲渡をした者が、当該譲渡時に公布・施行されていなかった改正措置法31条1項後段の規定の適用を受けることとなれば、上記(1)でも指摘したとおり、当該譲渡時には存在した損益通算の制度を利用できなくなることによる一定の不利益を受け得ることは否定することができない。そうすると、このような不利益が上記(1)で論じたように納税義務の内容自体の不利益変更には該当しないとしても、改正措置法31条1項後段の規定の適用時期を平成16年1月1日以後としたことに何ら合理性がないものであれば、本件改正附則27条1項が租税法律主義に違反し、違憲となる余地があるといわざるを得ない。
 そこで、以下においては、本件改正附則27条1項の合理性の有無について検討することとする。
 ア 所得税は、納税者の各暦年に生じた所得を10種類の所得に区分して把握し、さらに、これを総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額に区分し、最終的にはこれを総合した上で課税負担させようとしている(所得税法21条1項)。そうすると、ある所得に損失が生じた場合には、これを他の所得から控除して課税対象となるべき所得の金額を確定させるのが、適正な課税負担の考え方に合致することになる。
  しかしながら、所得の性質からみて、ある所得の損失を他の所得から控除するのが相当ではないとするものもあり、これらのものについては、損益通算の対象外とされている(措置法41条の4、37条の10第1項、41条の14第1項)。
  譲渡所得については、種々の特別措置が設けられているところ、土地等又は建物等の譲渡所得については、土地政策等の観点から所得税法本則による課税方法によらず、租税特別措置として、他の所得と区分して本則の負担よりある部分は軽課し、ある部分は重課する仕組みをとることが相当とされることから、分離課税(総合所得税制度の下において、特定の種類の所得を他の種類の所得と合算せず、分離して課税すること)とされている(措置法28条の4、31条、32条)。また、平成16年度の税制改正前における土地等又は建物等の長期譲渡所得に対する課税制度は、利益が生じた場合には、26パーセント(うち地方税6パーセント)の比例税率による分離課税を行い、他方、損失が生じた場合には、最高税率50パーセントで総合課税の対象となる他の所得の金額から控除が認められることとなるというものであり、これが不均衡であり、適正な租税負担の要請を損なうおそれがあるとの指摘がされていた。
 そうすると、土地等又は建物等の長期譲渡所得について損益通算制度を廃止することは、同所得に分離課税方式が採られていたこととの整合性を図り、かつ、損益通算がされることによる不均衡を解消して適正な租税負担の要請にこたえ得るものとして合理性があったということができる。
 そして、平成16年度税制改正における譲渡所得についての損益通算の廃止は、長期譲渡所得の特別控除の廃止及び税率の引き下げ(改正措置法31条、32条)と相まって、使用収益に応じた適切な価格による土地取引を促進し、特に、収益性の高い土地の流動性を高め、土地市場を活性化させる目的を有しており、これにより土地価格の下落に歯止めがかかることを期待してされたものである(乙6、14)。したがって、これらの措置を全体として早急に実施する必要性があったことも肯定することができる。
  他方、改正措置法31条1項後段の規定の適用を平成17年分所得税以降とするならば、その適用となる平成17年1月1日までの間に、節税目的で、すなわち損益通算を目的として、土地等又は建物等が大量に安価で売却され、土地価格の下落に歯止めを掛けようとした上記政策目的を阻害することが予想された(乙6、14)。このことも、本件改正附則27条1項により改正措置法31条1項後段の規定の適用時期を平成16年1月1日以後としたことの合理性を基礎付けるものといえる。
  原告らは、上記のような節税目的での安売りといった事態が発生するおそれは抽象的なものにすぎず、具体的な経済分析が行われていないから、本件改正附則27条1項の立法事実としての具体性や客観性を欠いていると主張する。しかし、証拠(乙24の1〜3、25、26)及び弁論の全趣旨によれば、平成15年12月に平成16年度税制改正の概要が公表された直後、同月中に土地等又は建物等を売却するよう強く勧める不動産会社、税理士等が少なからず存在していたことが認められ、このことからすれば、改正措置法31条1項後段の規定の適用時期が遅くなればなるほど、それまでの間に含み損を抱えた不動産の安値での売却が促進される具体的な危険があったと認めることができるから、その危険が抽象的で根拠がないとする上記原告らの主張には理由がない。
 イ また、原告らは、仮に改正措置法31条1項後段の規定を早期に適用する必要性があったとしても、これが施行された平成16年4月1日以降の土地等又は建物等の譲渡について適用すれば足り、同年1月1日までさかのぼって適用することはやはり違憲であると主張する。
  しかし、所得税のような期間税にあっては、期間計算を乱すことは納税申告事務及び徴収事務を混乱させるおそれがあり、また、同じ暦年において取扱いが異なることにより不平等が発生するという問題もあるので、暦年の途中から新たな措置を実施することが望ましいものとはいえない。したがって、そのような不利益を上回る必要性が認められない限り、暦年の途中から取扱いを変更する措置を採ることを回避することに合理性が認められるというべきである。そして、前記アにおいて検討したところによれば、改正措置法31条1項後段の規定を暦年の途中である平成16年4月1日から適用することについて、上記のような不利益を上回る必要性を見いだすことはできない。よって、原告らの上記主張も採用することはできない。
 (3) 最後に、平成16年1月1日以降の土地等又は建物等の譲渡につき損益通算ができなくなることに関する納税者の予測可能性の点について検討する。
 ア 証拠(甲2ないし5、乙7ないし14、18)によれば、改正措置法が施行されるまでの経過は以下のとおりであったことが認められる。
 (ア) 政府税制調査会は、平成15年12月15日、「平成16年度の税制改正に関する答申」を公表したが、そこには、土地等又は建物等の長期譲渡所得について損益通算を廃止することは盛り込まれていなかった。
 (イ) 与党である自由民主党は、同月17日、平成16年度税制改正大綱を決定し、その要旨は翌18日の日本経済新聞に掲載されたところ、そこには土地等又は建物等の長期譲渡所得について損益通算を廃止することが記載されていた。
 (ウ) 同月19日に財務省が決定した平成16年税制改正の大綱及び平成16年1月16日の閣議において決定された平成16年度の税制改正の要綱においても、土地等又は建物等の長期譲渡所得について損益通算を廃止することが盛り込まれ、その内容が所得税法等の一部を改正する法律案となり、前記前提事実(5)のとおり国会での審議を経て、同年3月31日、平成16年法律第14号として公布された。
 イ 上記ア(ア)ないし(ウ)の事実によれば、遅くとも、自由民主党の決定した平成16年度税制改正大綱が日本経済新聞に掲載された平成15年12月18日には、その周知の程度は完全ではないにしても、平成16年分所得税から土地等又は建物等の長期譲渡所得について損益通算制度が適用されなくなることを納税者において予測することができる状態になったということができる。したがって、確かにかなり切迫した時点ではあったにせよ、平成16年1月1日以降の土地等又は建物等の譲渡について損益通算ができなくなることを納税者においてあらかじめ予測できる可能性がなかったとまではいえない。
 (4) 以上の検討によれば、本件改正附則27条1項により改正措置法31条1項後段の規定を平成16年1月1日から同年3月31日までの間に行われた土地等又は建物等の譲渡について適用することは、その個々の譲渡についてみれば納税者が一定の不利益を受け得ることは否定できないものの、納税者の平成16年分所得税の納税義務の内容自体を不利益に変更するものではなく、遡及適用をすることに合理的な必要性が認められ、かつ、納税者においても、既に平成15年12月の時点においてその適用を予測できる可能性がなかったとまではいえないのであるから、これらの事情を総合的に勘案すると、当該変更は合理的なものとして容認されるべきものである。したがって、本件改正附則27条1項が租税法律主義に反するということはできない。
 3 まとめ
 以上のとおり、本件改正附則27条1項は憲法84条、30条から導かれる租税法律主義に反しないから、原告らの平成16年分の所得税を算定するに当たり、本件譲渡に伴う長期譲渡所得の計算上生じた損失額については、改正措置法31条1項後段の規定が適用され、これが発生しなかったものとみなされるので、上記規定が適用されないことを理由にした原告らの更正の請求につき、更正をすべき理由がないとした本件各通知処分はいずれも適法である。
第4 結論
 よって、原告らの請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、訴訟費用について、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日 平成19年11月13日)
(東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官 大門匡 裁判官 倉地康弘 裁判官 小島清二)

3-3に続く
by nk24mdwst | 2009-02-14 05:29 | 租税法(日本)

capital loss 1

昨日、触れた「遡及適用の合憲性/譲渡損失の損益通算を不可とする税制改正」に関する東京地裁平成20年2月14日判決です。出典は、TAINS Z888—1313です。
TAINSというのは税理士情報税法ネットワークという税理士等を会員とする税法、税務関連裁決、判決データベースです。

東京地方裁判所平成18年(行ウ)第603号、第604号、第606号、第607号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件(棄却)(原告控訴)
【遡及適用の合憲性/譲渡損失の損益通算を不可とする税制改正】 TAINS Z888-1313

         判  決  骨  子
平成20年2月14日午後1時15分 判決言渡 606号法廷
平成18年(行ウ)第603号、第604号、第606号、第607号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求事件
東京地方裁判所民事第2部 大門匡(だいもんたすく) 倉地康弘 小島清二

1 当事者
                   原    告    甲ほか3名
                   被    告    国
                   (処分行政庁:芦屋税務署長、目黒税務署長、
                          吹田税務署長)
2 事案の概要
  原告らは、平成16年分所得税につき、同年2月に土地及び建物を譲渡したことに伴う譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を所得税法69条1項の規定に従い他の各 種所得の金額から控除すべきであるとして更正の請求をした。しかし、原告らの各納税地を所轄する各処分行政庁は、平成17年5月31日付けで、原告らの上記更正の請求のいずれについても更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
  原告らは、上記損失の金額が生じなかったものとみなす改正租税特別措置法31条1項後段の規定を平成16年1月1日にさかのぼって適用するものとする同年4月1日に施行された平成16年法律第14号附則27条1項は、租税法律主義を定めた憲法84条、30条に違反するから上記各通知処分も違法となるとして、それらの取消しを求めた。これが本件事案であり、当該主張の当否が主要な争点である。なお、関係法令は別紙記載のとおりである。
3 主文
  原告らの請求をいずれも棄却する。
4 理由の要旨
  租税法規を納税者に遡及して適用することによって不利益を及ぼすことは、憲法84条、30条から導かれる租税法律主義に反し、違憲となることがあり得る。
  しかし、上記附則27条1項により上記改正租税特別措置法31条1項後段の規定を平成16年1月1日から同年3月31日までの間に行われた土地等又は建物等の譲渡について適用することは、その個々の譲渡についてみれば納税者が一定の不利益を受け得ることは否定できないものの、納税者の平成16年分所得税の納税義務の内容自体を不利益に変更するものではなく、上記のような適用をすることに合理的な必要性が認められ、かつ、納税者においても、既に平成15年12月の時点においてその適用を予測できる可能性がなかったとまではいえないのであるから、これらの事情を総合的に勘案すると、当該変更は、合理的なものとして容認されるべきものである。したがって、上記附則27条1項が租税法律主義に反するということはできない。

別紙 関係法令
(1)所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)
同法69条1項は、損益通算につき、総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除すると定めている。
(2) 租税特別措置法(ただし、平成16年法律第14号による改正以後のもの)同法31条1項は、前段において、個人の土地若しくは土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)又は建物及びその附属設備若しくは構築物(以下「建物等」という。)で、その年1月1日において所有期間が5年間を超えるものの譲渡をした場合には、当該譲渡による譲渡所得については、所得税法22条及び89条並びに165条の規定にかかわらず、他の所得と区分し、その年中の当該譲渡による譲渡所得の金額に対し、長期譲渡所得(保有期間が5年を超える資産の譲渡による所得)の金額の100分の15に相当する金額の所得税を課すると定め、後段において、前段の場合に、長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、所得税法その他所得税に関する法令の適用については、当該損失の金額は生じなかったものとみなすと定めている。
(3) 平成16年法律第14号(所得税法等の一部を改正する法律)
附則27条1項は、改正された租税特別措置法31条の規定につき、個人が平成16年1月1日以後に行う同条1項に規定する土地等又は建物等の譲渡について適用し、個人が同日前に行った土地等又は建物等の譲渡については、なお従前の例によると定めている。
----------------------------------------
         判  決(平成20年2月14日言渡)
                   別紙当事者目録記載のとおり
         主  文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
         事 実 及 び 理 由
第1 請求
1 第603号事件関係
 芦屋税務署長が平成17年5月31日付けで原告甲に対してした平成16年分の所得税の更正の請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
2 第604号事件関係
 芦屋税務署長が平成17年5月31日付けで原告乙に対してした平成16年分の所得税の更正の請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
 3 第606号事件関係
 目黒税務署長が平成17年5月31日付けで原告丙に対してした平成16年分の所得税の更正の請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
 4 第607号事件関係
 吹田税務署長が平成17年5月31日付けで原告丁に対してした平成16年分の所得税の更正の請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は、原告らが、その平成16年分所得税につき、同年2月に土地及び建物を譲渡したことに伴う譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を所得税法69条1項の規定に従い他の各種所得の金額から控除すべきであるとして更正の請求をしたところ、各処分行政庁が、平成17年5月31日付けで、原告らの上記更正の請求に更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたことから、原告らが、上記損失の金額が生じなかったものとみなす租税特別措置法31条1項後段の規定は平成16年法律第14号により改正され同年4月1日に施行されたものであるが、これを同年1月1日にさかのぼって適用するものとする同改正法附則は租税法律主義を定めた憲法の規定に違反するから、上記通知処分も違法となると主張して、それらの取消しを求めた事案である。
 1 関係法令
 (1) 所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)
 所得税法69条1項は、損益通算につき、総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除すると定めている。
 (2) 租税特別措置法(以下「措置法」という。ただし、平成16年法律第14号による改正の前後で区別し、同改正前のものを「改正前措置法」という。また、同改正以後のものを「改正措置法」ということがある。)
 改正措置法31条1項は、前段において、個人の土地若しくは土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)又は建物及びその附属設備若しくは構築物(以下「建物等」という。)で、その年1月1日において所有期間が5年間を超えるものの譲渡をした場合には、当該譲渡による譲渡所得については、所得税法22条及び89条並びに165条の規定にかかわらず、他の所得と区分し、その年中の当該譲渡による譲渡所得の金額に対し、長期譲渡所得(保有期間が5年を超える資産の譲渡による所得)の金額の100分の15に相当する金額の所得税を課すると定め、後段において、前段の場合に、長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、所得税法その他所得税に関する法令の適用については、当該損失の金額は生じなかったものとみなすと定めている。
 (3) 平成16年法律第14号(所得税法等の一部を改正する法律)
 平成16年法律第14号(所得税法等の一部を改正する法律)附則(以下「本件改正附則」という。)27条1項は、改正措置法31条の規定につき、個人が平成16年1月1日以後に行う同条1項に規定する土地等又は建物等の譲渡について適用し、個人が同日前に行った改正前措置法31条1項に規定する土地等又は建物等の譲渡については、なお従前の例によると定めている。
 2 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
 (1) 原告らによる不動産の取得
 ア 原告らは、昭和55年8月30日に、別紙物件目録3ないし7記載の各土地を、昭和56年5月7日に、同目録1及び2記載の各土地(以下、上記各土地を併せて「本件各土地」という。)を購入し、それぞれその持分(原告乙につき25分の7、原告丁につき25分の6、原告丙につき25分の6、原告甲につき25分の6)を取得した。
  イ 原告乙は、戊とともに、昭和57年3月31日、本件各土地上に、別紙物件目録8記載の建物を建築し、その持分(原告乙につき100分の36、戊につき100分の64)を取得した。原告乙及び同甲は、戊の死亡による相続によって、同人の上記建物の持分のうち原告乙が100分の51、同甲が100分の13をそれぞれ取得した。
  また、原告らは、昭和57年3月31日、本件各土地上に別紙物件目録9記載の建物(以下、別紙物件目録8記載の建物と併せて「本件各建物」という。)を建築し、その持分(原告乙につき100分の31、原告丁につき100分の23、原告丙につき100分の23、原告甲につき100分の23)を取得した。
  (2) 本件各土地及び本件各建物の譲渡(以下「本件譲渡」という。)(甲1の1〜4)
  ア 原告らは、平成15年12月26日、株式会社A社(以下「A社」という。)との間で、本件各土地及び本件各建物を譲渡する旨の売買契約を締結した。
  イ 原告らは、平成16年2月26日、A社との間で、上記アの売買契約に係る本件各土地の面積及び売買代金を変更する合意をした。
  ウ 原告らは、上記ア及びイの合意に従い、平成16年2月26日、本件各土地及び本件各建物の代金残額を受領し、A社に対して本件各土地及び本件各建物を引き渡した。
 (3) 平成16年分所得税についての原告らの確定申告及び更正の請求並びに原告らに対する更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下、これらの各通知処分を併せて「本件各通知処分」という。)及び不服申立て
ア 原告甲(別表1-1参照)
 (ア) 原告甲は、平成17年3月15日、芦屋税務署長に対し、分離長期譲渡所得の金額を0円、納付すべき税額を2600万1600円として確定申告をした。
 (イ) 原告甲は、平成17年3月29日、芦屋税務署長に対し、分離長期譲渡所得の損失金額を1億1288万4478円、還付金の額に相当する税額を2141万0083円とする更正の請求をした。
 (ウ) 芦屋税務署長は、平成17年5月31日、上記(イ)の更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
 (エ) 原告甲は、平成17年7月4日、芦屋税務署長に対して異議申立てをしたが、同署長は、同年9月22日、同原告の異議申立てを棄却した。
 (オ) 原告甲は、国税不服審判所長に対し、平成17年10月7日付けで審査請求をしたが、同審判所長は、平成18年5月16日、同原告の審査請求を棄却する裁決をし、同年6月2日、同裁決が同原告に送達された。
 イ 原告乙(別表1-2参照)
 (ア) 原告乙は、平成17年3月15日、芦屋税務署長に対し、分離長期譲渡所得の金額を0円、納付すべき税額を2583万5700円として確定申告をした。
 (イ) 原告乙は、平成17年3月29日、芦屋税務署長に対し、分離長期譲渡所得の損失金額を2億0339万9249円、還付金の額に相当する税額を4905万7708円とする更正の請求をした。
 (ウ) 芦屋税務署長は、平成17年5月31日、上記(イ)の更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
 (エ) 原告乙は、平成17年7月4日、芦屋税務署長に対して異議申立てをしたが、同署長は、同年9月22日、同原告の異議申立てを棄却した。
 (オ) 原告乙は、国税不服審判所長に対し、平成17年10月7日付けで審査請求をしたが、同審判所長は、平成18年5月16日、同原告の審査請求を棄却する裁決をし、同年6月2日、同裁決が同原告に送達された。
 ウ 原告丙(別表1-3参照)
 (ア) 原告丙は、平成17年3月14日、目黒税務署長に対し、分離長期譲渡所得の金額を0円、納付すべき税額を2601万3700円として確定申告をした。
 (イ) 原告丙は、平成17年3月29日、目黒税務署長に対し、分離長期譲渡所得の損失金額を1億0062万5922円、還付金の額に相当する税額を1624万9123円とする更正の請求をした。
 (ウ) 目黒税務署長は、平成17年5月31日、上記(イ)の更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
 (エ) 原告丙は、平成17年7月4日、目黒税務署長に対して異議申立てをしたが、同署長は、同年9月21日、同原告の異議申立てを棄却した。
 (オ) 原告丙は、国税不服審判所長に対し、平成17年10月6日付けで審査請求をしたが、同審判所長は、平成18年5月16日付けで同原告の審査請求を棄却する裁決をし、同年6月2日、同裁決が同原告に送達された。
 エ 原告丁(別表1-4参照)
 (ア) 原告丁は、平成17年3月15日、吹田税務署長に対し、分離長期譲渡所得の金額を0円、納付すべき税額を2601万7900円として確定申告をした。
 (イ) 原告丁は、平成17年3月29日、吹田税務署長に対し、分離長期譲渡所得の損失金額を1億0062万5922円、還付金の額に相当する税額を1624万4923円とする更正の請求をした。
 (ウ) 吹田税務署長は、平成17年5月31日、上記(イ)の更正の請求に対して更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。
 (エ) 原告丁は、平成17年7月4日、吹田税務署長に対して異議申立てをしたが、同署長は、同年9月12日、同原告の異議申立てを棄却した。
 (オ) 原告丙は、国税不服審判所長に対し、平成17年10月7日付けで審査請求をしたが、同審判所長は、平成18年5月16日付けで同原告の審査請求を棄却する裁決をし、同年6月2日、同裁決が同原告に送達された。
 (4) 本件訴え(顕著な事実)
 原告らは、平成18年11月6日、東京地方裁判所に本件各通知処分の取消しを求めて本件訴えを提起した。
 (5) 改正措置法の立法に係る経緯(甲2から5まで、乙7から14まで、18)
 ア 内閣は、平成16年2月3日、所得税法等の一部を改正する法律案(改正措置法の原案を含む。)を第159回国会に提出した。
 イ 上記アの法律案は、平成16年2月12日衆議院予算委員会において、同月17日衆議院本会議において、同月24日衆議院予算委員会において、それぞれ審議された。そして、同月26日及び27日衆議院財務金融委員会において、同年3月1日衆議院予算委員会第七分科会議において、それぞれ審議され、その後衆議院本会議で可決された。同法律案は、同月12日参議院本会議において、同月15日参議院予算委員会において、それぞれ審議され、その後参議院本会議において可決され、同月31日成立し、所得税法等の一部を改正する法律(平成16年法律第14号)として公布された。
 ウ 改正措置法31条を含む上記所得税法等の一部を改正する法律(平成16年法律第14号)は、平成16年4月1日施行された。
 3 争点
 本件の争点は、平成16年3月31日に公布され同年4月1日に施行された改正措置法31条1項後段の規定を同年1月1日以後同年3月31日までの間に行われた土地等又は建物等の譲渡について適用するものとする本件改正附則27条1項の規定が、憲法84条、30条から導かれる租税法律主義に違反するか否かであり、これに対する摘示すべき当事者の主張は、別紙「争点に対する当事者の主張」記載のとおりである。なお、上記の適用について「遡及適用」か否かを巡って用語上の問題がないではないが、以下においては、説明の便宜上、上記の適用のような場合を含め、施行日前の事象についても改正法令を適用する場合一般を「遡及適用」ということとする。

3-1、以下3-2に続く。
by nk24mdwst | 2009-02-14 05:25 | 租税法(日本)

depressed again 3

続きです。

 (2) 本件改正附則が立法裁量を逸脱・濫用したものかどうかについて

 租税法規において、国民の課税負担を定めるについては、財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく、極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかであるから、納税義務者に不利益に租税法規を変更する場合は、その立法目的が正当なものであり、かつ、当該立法において具体的に採用された措置が同目的との関連で著しく不合理であることが明らかでない限り、憲法違反となることはないと解するのが相当である。そして、当該立法措置が著しく不合理かどうかを検討するに際しては、それが厳密には納税義務者に不利益な遡及立法とはいえないとしても、不利益に変更される納税者の既得利益の性質、その内容を不利益に変更する程度、及びこれを変更することによって保護されるべき公益の性質、納税者の不利益を回避するためにあらかじめ取られた周知等の措置等を総合的に勘案すべきである。

 そこで、この観点に立って、本件改正附則の憲法適合性について検討する。
 ア 本件改正附則を含む改正措置法の立法目的について
 本件改正措置法の立法目的については、本件譲渡との関係では、税率引下げによる土地取引の活性化を促すことが低迷する我が国経済の現状に鑑みて急務とされていたことに加えて、株式に対する課税との不均衡是正の見地(ただし、納税者の生活に大きな影響を与える居住用財産の譲渡のような場合は、政策的見地から譲渡損失の損益通算等の特別の配慮を施している。)から、土地建物等の長期譲渡所得に係る損益通算をできるだけ早期に廃止する必要があったことが挙げられる。そして、本件改正附則を設けたのも、措置法の改正において、損益通算の廃止は、長期譲渡所得税率の引下げと一体の措置として実施することを予定していたところ、仮に損益通算の廃止のみの施行時期を遅らせれば、駆け込み目的の安売りによる資産デフレの助長が懸念されたことから、改正措置法31条の規定を平成16年分の所得(ママ)の課税開始時以後に行う土地等の譲渡について適用する必要性が高かったことによる。
 そうすると、本件改正附則を含む改正措置法の立法目的は正当なものということができる。
 イ 立法目的との関連における本件改正附則の措置の合理性について
 原告の主張は、要するに、改正措置法が施行される以前に認められていた土地建物等の譲渡による損失を他の所得金額の計算上、損益通算できる制度が、年度内に成立、施行された改正措置法の31条により廃止されたことにより著しい不利益を受けたものであり、また、このような不利益を受ける新たな制度(損益通算廃止)が設けられることの周知がされずに同法を年度開始時に遡って適用することを本件改正附則が規定していることから、納税義務者の予見可能性を奪うものであり、憲法84条に違反するというものである。そうすると、本件において合理性の有無が問題となる立法措置とは、①損益通算を廃止する改正措置法31条の措置及び②それを改正措置法の施行前の年度開始時以後の譲渡に適用する本件改正附則の措置ということになる。

 そこで、これらの措置が著しく合理性を欠くかどうかについて、次に検討する。
 (ア) ①の損益通算廃止措置について
 居住者に対する所得税の課税は、すべての所得を合算した金額に対して行われるのが原則である(所得税法21条1項)が、所得税法では、退職所得及び山林所得に対しては、総合課税の例外としてそれぞれ分離課税とされ(所得税法22条)、措置法においては、土地建物等の譲渡所得等に対する分離課税(措置法28条の4、31条、32条)、株式等に係る譲渡所得等の課税の特例(措置法37条の10ないし37条の15)等の総合課税に対する多くの例外が定められている。これは、所得の性質からみて、ある所得の損失を他の所得から控除するのが相当ではないとみられ、それがために総合課税の対象外とされているものである。譲渡所得については、種々の特別措置が設けられているところ、土地建物等の譲渡所得については、土地政策等の観点から所得税本則による総合課税によらず、租税特別措置として、他の所得と区分して本則の負担よりある部分は軽課し、ある部分は重課するのが相当とされることから、分離課税とされている。
 ところで、株式等に係る譲渡所得等に対する課税については、上記のとおり、措置法により、他の所得と区分して分離課税することとされているところ、利益が生じた場合には、原則として20パーセント(うち住民税5パーセント)の税率により課税され、損失が生じた場合には、当該損失の金額は生じなかったものとみなされている(措置法37条の10第1項)。他方、同じく分離課税とされる土地建物等の譲渡所得に対する課税については、株式等に係る譲渡所得等と同様に、資産の譲渡に係る課税であり、措置法により分離課税とされているにもかかわらず、利益が生じた場合には、26パーセント(うち住民税6パーセント)の税率による分離課税を行い、他方、損失が生じた場合には、最高税率50パーセントで総合課税の対象となる他の所得の金額から控除される損益通算が認められていたものであり、これが不均衡であり、適正な租税負担の要請を損なうおそれがあるとの指摘がされていた。
 そうすると、土地建物等の長期譲渡所得について損益通算の制度を廃止することは、同所得に分離課税方式が採られていたこととの整合性を図り、かつ、損益通算がされることによる不均衡を解消して適正な租税負担の要請に応えるものとして、合理性があるということができる。
 そして、平成16年度税制改正における譲渡所得についての損益通算の廃止は、長期譲渡所得の税率引下げ等の措置と相まって、使用収益に応じた適切な価格による土地取引を促進し、収益性の高い土地の流動性を高め、もって、土地市場を活性化させ、これにより土地価格の下落に歯止めがかかることが期待されたものであり、その目的に照らして、損益通算廃止措置は合理性を有するものと考えられる。もっとも、土地建物等の譲渡の場合は、株式等の資産の譲渡の場合とは異なり、居住用不動産の買換え等の必要から譲渡が行われる場合の損失について一定の政策的配慮が必要であるとみられるところ、この点については、上記のとおり、改正措置法において手当が施されており、したがって、上記合理性は確保されているものということができる。
(イ) ②の本件改正附則の措置について
 原告が特に問題とする点は、上記(ア)の点よりもむしろ損益通算廃止措置を既に本件譲渡がされた日よりも前の年度開始日に遡って適用することを内容とする本件改正附則の合理性にあるものと解される。
 そこで、この点の合理性について次に検討する。
 原告は、本件改正附則の適用により、既に行った本件譲渡による多額の損失を給与所得等の所得の金額の算定上、損益通算することができないことになり、損益通算がされた場合に受けられる多額の税金還付が受けられないという予期しない不利益を受けていることは明らかである。このような不測の不利益を納税者にもたらさないためにも、既存の損益通算制度を廃止する租税法規は、その施行前に納税者に予測可能性をもたらすものである必要がある。本件の場合、不動産譲渡による損失を他の所得の金額の計算上、損益通算する制度の問題性については、平成16年税制改正の数年前ごろから政府税制調査会において既に度々指摘されていたものであり、これが自由民主党の決定した平成16年度税制改正大綱の中に損益通算制度廃止という内容で盛り込まれた。そして、その大綱の内容は、平成15年12月18日の日本経済新聞に掲載され、その周知の程度は完全なものとはいえないまでも、平成16年分所得税から長期譲渡所得について損益通算制度適用されなくなることを納税者において予測することができる状態になったということができる。したがって、平成16年1月1日からの土地建物等の譲渡時を基準とすると、確かに切迫していたことは否定できないものの、同日以降の土地建物等の譲渡について損益通算ができなくなることを納税者においてあらかじめ予測することができる可能性がなかったとまではいえない。加えて、上記のとおり、所得税は期間税であること等から、暦年の終了時に納税義務が生じるものであり、その前においては、たとえ当該年分の所得税の課税期間が開始していたとしても、従前の租税法規の内容が改正されて年度開始時に遡って適用される可能性がないとはいえず、特に本件の場合のように、税制大綱が年度前に公表され、年度開始後1箇月程度で改正措置法案が国会に提出されて可決成立しているのであり、このような場合に改正法が年度開始時にさかのぼって適用される可能性は否定できない。そして、現にこれまでもそのようなケースが決して稀ではなかったことをも勘案すると、所得税のような期間税の場合、年度が開始した後は年度開始時に遡って租税法規が納税者に不利益に変更される可能性が立法の必要性如何によってはあり得ることを納税者としても全く予測できないとはいえないと考えられる。

 そこで、本件改正附則が成立時にそれまで認められていた損益通算の制度を、既に課税期間が開始した平成16年1月1日にまで遡って適用しなければならないとするまでの合理性又は必要性があるかどうかについて考える。上記のとおり、本件改正附則の立法目的は、土地取引の活性化と株式取引等との不均衡是正の見地から、従来認められていた合理的とはいえない損益通算の制度の廃止等と長期譲渡所得税率引下げをパッケージとして、できるだけ早期に実施する必要があったことに加えて、これらの実施を翌年度まで遅らせれば(少なくとも改正措置法施行後9箇月間は実施できないことになる。)、その間に節税をねらいにした不当な低価による土地取引が横行しかねず、これが資産デフレをもたらすとの懸念によるものであり、特に後者の点は、現にその与党である自民党の平成16年度税制改正大綱が日本経 済新聞に報道された直後ころから、年内の駆け込み土地売却を勧める税理士等の提案がインターネットのホームページに掲載される等の動きがみられたことからも、単なる懸念にとどまらず現実性を帯びていたものである。そうすると、本件改正附則のとおり、損益通算を廃止する等を内容とする改正措置法を成立・施行前の平成16年1月1日に遡って適用する合理性・必要性を肯定することができる。そして、その公益性と原告等の納税者にもたらされる不利益とを比較した場合、明らかに納税者の不利益が上回るということはいえず、少なくとも、本件改正附則の内容が立法目的に照らして著しく不合理であるということはできない。
 したがって、本件改正附則は憲法84条には違反しないから、その違反をいう原告の主張は理由がなく採用することはできない。そうすると、本件においては、本件改正附則の適用があるから、本件通知処分は適法である。

第4 結論
 よって、原告の本訴請求には理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(平成20年2月1日 口頭弁論終結)
(千葉地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官 堀内明 裁判官 上田哲)
(裁判官西田昌吾は転補のため、署名押印することができない。裁判長裁判官 堀内明)

租税は専門的だからといってしまうと司法の租税に対する監視の役割の放棄以外の何物でもないのだと思いますけどね。
by nk24mdwst | 2009-01-20 15:32 | 租税法(日本)

depressed again 2

続きです
 3 争点
 本件改正附則は、憲法84条に違反するか。

 4 争点に関する当事者の主張
 (原告)
 憲法84条が定める租税法律主義は、納税者の法的安定を図り、将来の予測可能性を与えることを目的にしているから、本件のような期間税である所得税についても、年度途中で年度の初めに遡って適用される租税改正立法については、年度開始前に納税者が一般的にしかも十分予測できる場合に限って許され、そうでない限り、納税者の信頼を裏切る遡及立法として、憲法84条に違反する。
 しかるに、本件改正附則は、年度途中に施行された改正措置法を年度開始時に遡って適用することを定めるものでありながら、年度開始前にほとんど一般に周知されておらず、仮に納税者が年度開始前に知り得たとしても、その期間は7日程度の短期間に止まるのであるから、納税者に予測可能性があったとはいえない。その上、改正措置法が定める遡及適用を含む損益通算禁止は、正確な資料に基づかず、しかも財政上の必要性のないものであるから、本件改正附則は憲法84条に違反する。

 (被告)
 本件改正附則が、未だ平成16年分の所得税の納税義務が成立していない同年の途中で施行された損益通算廃止等を内容とする改正措置法を年度開始時点から適用することを定めているのは、所得税の期間税としての性質上むしろ当然のことであり、遡及立法禁止の原則に違反しない。
 また、本件改正附則を含む改正措置法の立法目的は、現行の土地譲渡益課税制度を見直し、他の資産と均衡の取れた市場中立的な税体系を構築することにあり、そのため、土地建物等の譲渡所得に係る損益通算の廃止は税率引下げ等と一つのパッケージとされ、土地市場の活性化を図るために早急な実施が必要であった。
 さらに、土地建物等の譲渡所得に係る損益通算の廃止及びそれが平成16年分以後の所得税について適用されることは、平成16年分所得税の課税期間が開始される以前からある程度国民に対して周知されていた。
 これらの事情等に照らせば、本件改正附則の立法目的は正当であり、その内容はその立法目的との関連で不合理であることが明らかであるとは到底いえないから、本件改正附則は憲法84条に違反しない。

第3 当裁判所の判断

 1 証拠(各認定事実ごとに末尾に掲記する)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
 (1) 平成16年税制改正の背景及び改正措置法の立法趣旨等(乙7、16、29の1ないし3、30ないし32)
 平成16年税制改正は、現在、我が国が、少子・高齢化、グローバル化等の構造変化に直面している中で、公平な社会を構築し、将来にわたり持続的な経済社会の活性化を実現するため、税制を新たな社会に相応しい姿に再構築するための抜本的改革を進めていかなければならないとし、その際、①個人や企業の自由な選択を妨げず、経済活動に中立で歪みのない税制を基本としつつ、構造改革を推進し、経済社会の活性化を図るため必要な対応をすること、②経済社会の構造変化に対応しきれず、税負担の歪みや不公平感を生じさせている税制上の諸措置の適正化を図ること等の視点が重要であるとの基本的考え方に立っている。
 そして、これらの視点に基づき、平成16年度改正においては、具体的に、個人資産の活用を促進し、資産デフレへの対応を図る観点から、住宅・土地税制等を見直す等の所要の措置を講じている。そのうち、土地税制に関しては、土地譲渡益課税につき、株式に対する課税とのバランスを考慮し、土地取引の活性化を後押しする観点から、長期譲渡所得の税率を引き下げている。
 措置法関係の改正の内容は、上記前提事実(2)記載のとおりであるが、その改正の趣旨については、土地譲渡益課税について、使用収益に応じた適切な価格による土地取引を促進し、特に収益性の高い土地の流動性を高め、土地市場の活性化に資する観点から、株式に対する課税とのバランスを踏まえ、長期譲渡所得税の税率の引下げ及び他の所得との損益通算の廃止・繰越控除等を一つのパッケージとして措置することとされたものである。とりわけ、損益通算・繰越控除の廃止を採用した理由は、次のとおりである。すなわち、分離課税の対象となる土地建物等の譲渡所得に対する課税については、利益が生じた場合には比例税率の分離課税とされている一方で、損失が生じた場合には総合課税の対象となる他の所得の金額から控除することができるという主要外国に例のない不均衡な制度であるといったこと等の問題点が指摘されていた。このような問題に対処するため、今回の改正をする必要があったためである。もっとも、株式に対する課税との均衡を図るとはいっても、納税者の生活に大きな影響を与える居住用財産については、特別な配慮が必要であることから、改正措置法は、譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の拡充・創設等の手当を施す等の措置を講じている。
 そして、これらの改正は、平成16年1月1日以後に行う譲渡から適用することとされた(本件改正附則)。その趣旨は、仮に、関係改正規定の適用を1年間遅らせるとした場合、節税のための損益通算を目的とした安売りによる土地の売却を招いて、土地市場に不測の影響を及ぼすおそれがあることから、その適用を遅らせるのは適当ではないと判断したためである。実際にも、上記与党の「平成16年度税制改正大綱」の内容が報道された直後から、資産運用コンサルタント、不動産会社、税理士事務所等が開設しているホームページ上において、次々と値下がり不動産の年内駆け込み売却が勧められ、また、一部の税理士は、平成15年中にこの事態に対処していたと報じられていた。
 (2) 改正措置法の立法に係る経緯は次のとおりである。
  ア 平成12年7月、政府税制調査会において、「わが国税制の現状と課題-21世紀に向けた国民の参加と選択-」という報告書が作成されたが、その中で、損益通算に関し、租税回避行為への対応として、操作性の高い投資活動から生じた損失と事業活動などから生じた所得との損益通算の制限について検討が必要との指摘がされた(乙20)。
  イ 平成14年2月18日、国土交通省の国土審議会土地政策分科会企画部会において、地価の上昇を前提としない土地税制や不動産に対する投資意欲の喚起のための不動産税制を考える必要があることなどが議論された(乙26の2)。
  ウ 同年5月19日、国土交通省の「今後の土地税制のあり方に関する研究会」の中間取りまとめにおいて、バブル経済崩壊後の地価下落等の土地をめぐる環境の変化(利用価値に応じた価格形成)を踏まえた税制の構築、株式等他の資産と均衡を失しない市場中立的な税体系の検討等が必要であるとの指摘がされた(乙27)。
  エ 平成15年8月31日、国土交通省は、平成16年度の税制改正について株式等他の資産と均衡を失しない市場中立的な税体系を構築することにより土地への投資意欲を喚起するため、他の資産と比べて重く課税している土地譲渡所得に対する税率の引下げを要望した(乙28)。
  オ 平成16年度税制改正の手続の流れは、次のとおりである。
 平成15年12月15日に政府税制調査会において「平成16年度の税制改正に関する答申」が、同年12月17日に与党において「平成16年度税制改正大綱」が取りまとめられ、平成16年1月16日には「平成16年度税制改正の要綱」が閣議決定された。この要綱に基づいて作成された「所得税法等の一部を改正する法律案」が、同年2月3日に国会に提出され、可決・成立し、同年3月31日公布された。
 改正措置法を含む上記所得税法等の一部を改正する法律(平成16年法律第14号)は、平成16年4月1日施行された。なお、政府税制調査会による上記「平成16年度の税制改正に関する答申」には、土地建物等の長期譲渡所得について損益通算を廃止することは盛り込まれていなかったが、平成15年12月18日の日本経済新聞に掲載された与党である自由民主党の上記「平成16年度税制改正大綱」には、土地建物等の長期譲渡所得について損益通算を廃止することが記載されていた。平成16年1月16日の閣議において決定された平成16年度の税制改正の要綱においても、土地建物等の長期譲渡所得について損益通算を廃止することが盛り込まれ、その内容が上記所得税法等の一部を改正する法律案となり、上記可決・成立したものである(甲7、乙7、21、弁論の全趣旨)。

 2 以上1認定の事実及び上記前提事実を踏まえて、次に本件争点について検討する。
 (1) 本件改正附則が遡及立法であるかどうかについて
 原告は、本件改正附則が遡及立法に当たり、憲法84条の租税法律主義の規定に違反する旨主張する。租税法規については、刑罰法規の場合と異なり、遡及立法の禁止を明文する憲法の規定は存在しないものの、租税法規について安易に遡及立法を認めることは、租税に関する一般国民の予測可能性を奪い、法的安定性をも害することになることから特段の合理性が認められない限り、原則として許されるべきではなく、このことを憲法84条は保障しているものと解される。
 そこで、本件改正附則が遡及立法といえるかどうかについて検討する。確かに、上記第2の1(関係法令の定め等)及び2(前提事実)によれば、原告は、平成16年分の所得税の課税年度開始後に本件譲渡を行い、これによって多額の本件譲渡損失が発生した後に、譲渡による損失を他の所得の金額の計算上、損益通算することを禁止する規定を設け、その適用を年度開始時から行う旨の本件改正附則を含む改正措置法が同年度内に成立し、施行されたものであるから、同不動産の譲渡時を基準とする限り、少なくとも同附則は遡及立法に当たりはしないか問題となる。実質的に考えても、本件譲渡がされた時点においては、その譲渡による損失を他の各種所得の計算上において損益通算できるとする改正前の措置法が効力を有していたのであり、一般納税者としては、その損益通算による利益をも予め考慮して譲渡に及ぶことが通常予想される。とりわけ、本件譲渡を行った者が租税の専門家とはいえない一般納税者の場合には、譲渡が行われた年度内に譲渡による損失の損益通算が廃止されることを予想して、その危険を回避する措置を期待することは必ずしも容易ではないとみられ、したがって、原告の場合、本件改正附則が本件譲渡にも適用されることによる不利益は決して少なくはないといえる。
 しかしながら、遡及立法が禁止の対象とする行為は、過去の事実や取引を課税要件とする新たな租税を創設し、あるいは過去の事実や取引から生じる納税義務の内容を納税者の不利益に変更する行為であるところ、所得税はいわゆる期間税であり、これを納付する義務は、国税通則法15条2項1号の規定により暦年の終了の時に成立し、また、その年分の納付すべき税額は、原則として所得税法120条の規定により確定申告の手続により確定するものであり、また、損益通算については、所得税法の関係規定によれば、所得税の納税義務が成立し、納付すべき税額を確定する段階において、その年間における総所得金額等を計算する際に、譲渡所得等の金額の計算上損失が生じている場合には、その金額を他の各種所得の金額から控除するという制度であり、個々の譲渡の段階において適用されるものではなく、対象となる譲渡所得の計算も、個々の譲渡の都度されるものでもなく、暦年を単位とした期間で把握される(所得税法33条3項)ものである。そうすると、本件において、平成16年分の所得税の課税期間が開始したものの、その所得税の納税義務が成立する以前に行われた本件譲渡についても改正措置法を適用する旨を定めた本件改正附則は、厳密にいえば、遡及立法には該当しないといわざるを得ない。このことは、上記第2の1(関係法令の定め等)の(6)のとおり、本件改正附則と同様に暦年の途中で施行されながら、その適用を暦年の開始時からする旨を定めた法令の立法がこれまで少数とはいえ行われてきたことからもうかがわれる。また、改正措置法の施行日前に納税者の死亡等によって、既に所得税の納税義務が成立し、又は確定している場合には、既に成立した納税義務の内容を変更することがないよう、改正措置法附則27条2項及び3項において手当がされていることからも明らかなように、そのような場合に当たらず、課税義務(ママ)が未だ成立していない場合については、本件改正附則が遡及立法に該当しないことを当然の前提にしているものと解される。
 もっとも、期間税の場合であっても、納税者は、通常その当時存在する租税法規に従って課税が行われることを信頼して各種の取引行為を行うものであるといえるから、その取引によって直ちに納税義務が発生するものではないとしても、そのような納税者の信頼を保護し、租税法律主義の趣旨である国民生活の法的安定性や予見可能性の維持を図る必要はある。もっとも、期間税について、年度の途中において納税者に不利益な変更がされ、年度の始めにさかのぼって適用される場合とはいっても、立法過程に多少の時間差があるにすぎない場合や、納税者の不利益が比較的軽微な場合であるとか、年度の始めにさかのぼって適用しなければならない必要性が立法目的に照らし特に高いといえるような場合等種々の場合が考えられるのであるから、このような場合を捨象して一律に租税法規の遡及適用であるとして、原則として許されず、特段の事情がある場合にのみ許容されると解するのは相当ではない。
 そうすると、本件のように厳密には租税法規の遡及適用であるとはいえないような場合は、後記のとおり、立法裁量の逸脱・濫用の有無を総合的見地から判断する中で、当該立法によって被る納税者の不利益をも斟酌するのが相当であるというべきである。

つづく
by nk24mdwst | 2009-01-20 15:20 | 租税法(日本)

depressed again

昨日掲載した東京高裁12月20日判決の原審の千葉地裁平成20年5月16日判決です。同じくTAINS(タインズ)からのものです。

千葉地方裁判所平成19年(行ウ)第15号通知処分取消請求事件(棄却)(控訴)(TAINS Z888-1331)
【遡及適用の合憲性/譲渡損失の損益通算を不可とする税制改正】

         判  決(平成20年5月16日言渡)
                   原    告    ■■■■■■■
                   被    告    国
                   同代表者法務大臣  鳩 山 邦 夫
                   同指定代理人  〇〇〇〇
                   同         〇〇〇〇
                   同         〇〇〇〇
                   同         〇〇〇〇
                   同         〇〇〇〇
                   同         〇〇〇〇
                   同         〇〇〇〇
                   同         〇〇〇〇
                   同         〇〇〇〇
                   処分行政庁     千葉西税務署長

         主  文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

         事 実 及 び 理 由

第1 請求
  処分行政庁が平成18年2月17日付けで原告に対してした平成16年分所得税の更正請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
第2 事案の概要
  本件は、原告が、平成16年4月1日に施行された改正後の租税特別措置法31条1項後段の規定(それまで認められていた土地建物等の譲渡損失を他の所得所得(ママ)の金額から控除することを廃止する旨の規定)を同年1月1日以後に行う同条1項に規定する土地等又は建物等の譲渡について適用する旨の平成16年法律第14号(所得税法等の一部を改正する法律)附則27条1項が遡及立法に当たり、憲法84条に違反すると主張して、処分行政庁が同附則を原告が平成16年1月30日にした長期譲渡所得税対象土地の譲渡に適用して、その譲渡による損失の損益通算を認めず、原告の平成16年分所得税の更正請求に対し更正すべき理由がない旨の通知処分をしたのは違法であるとして、その取消しを求めている事案である。

 1 関係法令の定め等
 (1) 所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)69条1項は、損益通算につき、総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除すると定めている。
 (2) 租税特別措置法(ただし、平成16年法律第14号による改正後のもの。以下「改正措置法」という。また、租税措置法一般を呼称するときは、単に「措置法」という。)31条1項前段は、個人が、その有する土地若しくは土地の上に存する権利(土地等)又は建物及びその附属設備若しくは構築物(建物等)で、その年1月1日において所有期間が5年を超えるものの譲渡をした場合には、当該譲渡による譲渡所得(以下「長期譲渡所得」という。)については、他の所得と区分して、その年中の当該譲渡に係る譲渡所得の金額に対し、長期譲渡所得の金額の100分の15に相当する金額に相当する所得税(ただし、住民税5パーセントを含めれば20パーセントの税率)を課する旨規定している。
 また、同項後段は、同項前段の場合において、土地等又は建物等(以下「土地建物等」という。)の譲渡所得の金額の計算上生じた損失があるときは、所得税法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかったものとみなす(すなわち、損益通算及び繰越控除を認めない。)旨規定している。
 さらに、改正措置法31条3項2号は、同条1項の規定の適用がある場合の所得税法69条の適用については、①同条1項中「譲渡所得の金額」とあるのは改正措置法31条1項に規定する譲渡による譲渡所得がないものとして計算した金額とする旨、②「各種所得の金額」とあるのは同項の長期譲渡所得の金額を除いた金額とする旨規定して、総合課税の対象となる譲渡所得及び他の所得の金額の計算上生じた損失の金額がある場合でも、当該損失は、同項の長期譲渡所得の金額から控除することはできないこととしている。
 なお、上記改正前の租税特別措置法(以下「改正前措置法」という。)31条1項は、長期譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、所得税法69条の規定を適用し、他の各種所得の金額との損益通算を認める旨規定している。
 (3) 改正措置法附則第27条1項(以下「本件改正附則」という。)は、「新租税特別措置法(改正措置法を指している。)第31条の規定は、個人が平成16年1月1日以後に行う同条第1項に規定する土地建物等の譲渡について適用し、個人が同日前に行った旧租税特別措置法第31条第1項に規定する土地建物等の譲渡については、なお従前の例による。」と規定している。
 (4) 改正措置法は、31条1項後段の規定により、土地建物等の譲渡損失の損益通算を原則として認めないこととした上で、居住用財産を譲渡した場合の譲渡損失の金額の一部について、一定の要件の下に他の所得との損益通算及び繰越控除を認め(「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」。改正措置法41条の5第1項、同第7項1号)、あるいは、居住用財産を譲渡して買換えをせずに借家等に住み替える等の場合に、一定の要件の下に、当該譲渡によって生じた純損失の金額の一部について他の所得との損益通算及び繰越控除を認める(「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」。改正措置法41条の5の2第1項、同第7項1号)こととしている。
 (5) 改正措置法附則27条2項及び3項は、施行日前に死亡した者、施行日前に平成16年分の所得税につき所得税法127条(年の途中で出国する場合の確定申告)の規定による申告書を提出した者及び施行日前に同年分の所得税につき通則法25条の規定による決定を受けた者の同年分の所得税に係る措置法31条の規定を適用するに当たっては、土地建物等の譲渡による所得以外の他の所得との損益通算及び長期譲渡所得の100万円特別控除については、従前どおり適用する旨規定している。
 (6) 本件改正附則と同様に暦年の途中から施行されながら、適用がその暦年の初日とされた法令の例
  ア 昭和27年の税制改正により、退職所得が損益通算の対象外とされたときも(昭和29年の税制改正まで)、当該改正法(昭和27年法律53号)は昭和27年4月1日から施行されている(同法附則1項)が、同年分以後の所得税について適用されている(同法付則22項)。
  イ 昭和36年の税制改正により、趣味・娯楽の資産の譲渡による所得等の喪失について損益通算が廃止されたときも、当該改正法(昭和36年法律35号)は昭和36年4月1日から施行された(同法附則1項)が、同年分以後の所得税について適用されている(同法附則2項)。
  ウ 昭和37年の税制改正により、生活に通常必要でない資産についての災害に係る雑損失と譲渡所得以外の所得との損益通算が廃止されたときも、当該改正法(昭和37年法律44号)は昭和37年4月1日から施行された(同法付則1条)が、同年分以後の所得税について適用されている(同法付則2条)。
  エ 現行所得税法(昭和40年法律33号)においても、昭和43年の税制改正により、雑所得の金額の計算上生じた損失と他の所得との損益通算が廃止された際には、当該改正法(昭和43年法律21号)は昭和43年4月20日から施行された(同法付則1条)が、同年分以後の所得税について適用されている(同法付則2条)。
  オ 改正法の施行日を含む年分の所得税について改正法が適用されているのは損益通算に係る場合だけでなく、所得税の課税対象への追加(昭和36年分以後の所得税に適用された、事業譲渡類似の有価証券の譲渡による所得等を譲渡益非課税から課税に変更措置)や各種控除の縮減・廃止(昭和55年分以後の所得税に適用された、給与所得控除率引下げ、平成12年分以後の所得税に適用された、年少扶養控除の廃止等、平成15年分以後の所得税に適用された、長期所有上場株式等に係る100万円特別控除の廃止)についても、同様に改正法の施行日を含む年分の所得税に適用されている。
 2 前提事実(証拠等を掲記した事実以外は争いがないか明らかに争いがない。)
 (1) 原告は、平成5年4月4日、■■■■■■■■■■■■■■の宅地(以下「本件土地」という。)を4300万円で買い受け、これを平成16年1月30日、1750万円で譲渡する旨の契約を締結し、同年3月1日、本件土地を買受人に引き渡した(以下、この譲渡行為を「本件譲渡」とい。)。その結果、2500万円余の譲渡損失(以下「本件譲渡損失」という。)が生じた(甲1ないし4、乙1)。
(2) 原告は、平成17年9月15日、給与所得、雑所得及び株式等に係る譲渡所得を平成16年分の所得と記載した同年分の所得税の確定申告書を処分行政庁に提出した。
 (3) 原告は、平成17年11月16日、本件譲渡損失の金額は他の所得と損益通算すべきであるとして、これに基づき税額計算した結果、還付されるべき税金136万9400円が存在するとして、更正の請求書を提出したが、処分行政庁は、原告に対し、平成18年2月17日付けで、更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした(甲2、乙2)。
 (4) 原告は、平成18年2月022日、処分行政庁に対し、本件通知処分を不服として異議申立てをしたが、処分行政庁は、同年4月21日付けで、これを棄却する決定をした。
 原告は、これを受けて、同月26日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、同所長は、同年9月19日付けで、これを棄却する裁決を行った。
 本件通知処分、上記異議申立棄却決定及び上記裁決は、いずれも、本件譲渡には改正措置法31条の適用があり、そうすると、本件譲渡損失は、その他の所得の金額の計算上、生じなかったものとみなされること、すなわち、同損失については損益通算の処理ができないことを理由とするものであり、同法の適用を認める限り、本件通知処分のとおり、本件においては更正すべき理由がないことになる(甲2ないし4)。
  原告は、平成19年3月15日、本訴を提起した。

 3 争点
 本件改正附則は、憲法84条に違反するか。

つづく
by nk24mdwst | 2009-01-20 15:17 | 租税法(日本)

just another monday

週末とはうって変わって快晴の月曜日。月末の週が始まったというわけです。
今朝は、山がきれいでした。朝日に輝いていて。

先週末に東京へ行ったとき、当地は朝、雪があったのでブーツを履いていきました。新品だったので靴擦れができてしまいました。相変わらず、左の足の小指に痛みは感じます。靴擦れができたのは、左足なのでやはり歩き方に問題があるのでしょう。

しかし、東京というのはなぜにあんなに坂が多いのか。クルマで移動の田舎者にはきついのですね。
それと、地下鉄、JR、京浜急行と乗り継いで羽田の出発ロビーまで階段を上るのもきついです。なにせ、いつも書籍という名の紙の塊とPCが道ずれなので。

この夏から、めっきり飛行機の搭乗率が落ちているのがわかります。

大学のキャンパスが私が学生だった30年以上前とは全く違いますね。装甲車に機動隊なんてのがいたのですが。

しかし、私が大学へ入る前の時代に大学紛争などというお祭りをした団塊の世代は、物を知りませんね。正月飾りの意味もわかっていない。
ちゃんと儀式は伝えないと途絶えます。儀式は、文化です。
法律だって文化です。

法律用語の読み方は、法律村、行政村の方言ですがそれが読めないと国は回りません。四文字熟語の読み間違えレベルとは違います。

法律の条文を作るというのも職人技なのだと思います。日本語として意味が通じるかどうかは当然ですが、法律、政令、省令の整合性、さらに他の法令との整合性がとれているかどうかと言うのは基本の基本だと思うのですが。

今年になってから統一されたようですが、法人税では寄附金、所得税では寄付金と書いてありました。寄付金に統一されたようです。
売上、仕入ですが、これも消費税法だけ売上げ、仕入れと送り仮名を入れます。法律を作るときに何を考えていたのでしょう。

昔、直間比率の是正などという言葉が合ったのを覚えている人はいるのでしょうか。
曰く、日本は所得課税の比率が高く、所得税の高い累進税率は勤労意欲をそぐので最高税率を引き下げるべし。財源は水平的に公平な消費税が相応しい。
あるいは、日本の法人税の実効税率は諸外国に比して高すぎる。これは産業の空洞化を招く。よって法人税率を引き下げるべし。財源は、水平的に公平な消費税が相応しい。

失われた10年の間に日本の財政赤字は拡大し、その原因究明に関して充分な努力がなされたというか明確な説明がなされたようには思われませんが、いずれにしろ増税が必要だ。消費税率の二桁への引上げが社会保障財源としても必要だ。
というストーリーの元、消費税率引上げの前に所得税、住民税といった所得課税の増税が行われつつある途中において近時の金融危機が生起して、財政当局は思考停止に陥った、のでしょう。

KPMG の二人ともう一人高名な租税法弁護士がタックス・シェルター事案において有罪となりました。
3 Convicted in KPMG Tax Shelter Case

By LYNNLEY BROWNING
Published: December 17, 2008

A federal jury on Wednesday found three white-collar defendants guilty in a tax-shelter trial once billed as the largest ever.

The jury, whose decision ends one of the most closely watched tax cases in recent years, convicted Robert Pfaff and John Larson, two former employees at the accounting firm KPMG, and a former top tax lawyer, Raymond J. Ruble, but acquitted a third former KPMG partner, David Greenberg.
http://www.nytimes.com/2008/12/18/business/18kpmg.html?partner=permalink&exprod=permalink
紆余曲折があったわけですが。

さて、不動産譲渡損の損益通算に関する訴求効が違憲かどうかについて、福岡高裁に次いで東京高裁でも判決が出ました。
東京高等裁判所平成20年(行コ)第236号通知処分取消請求控訴事件(棄却)
TAINS Z888-1387
【遡及適用の合憲性/譲渡損失の損益通算を不可とする税制改正】

本文

         判  決(平成20年12月4日言渡)
           控 訴 人     ■■■■■■■
           被 控 訴 人   国
           同代表者法務大臣  森   英 介
           処分行政庁     千葉西税務署長
                        〇 〇 〇 〇 
           同指定代理人   〇 〇 〇 〇
           同          〇 〇 〇 〇
           同           〇 〇 〇 〇
           同          〇 〇 〇 〇
           同          〇 〇 〇 〇
           同          〇 〇 〇 〇
         主  文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
         事 実 及 び 理 由
第1 控訴の趣旨
 1 原判決を取り消す。
 2 処分行政庁が控訴人に対して平成18年2月17日付けでした平成16年分所得税の更正請求に係る更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
 3 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要
 1 本件は、控訴人が、平成16年1月30日にした長期譲渡所得の課税対象となる土地の譲渡(売却)について、その譲渡によって生じた損失2500万円余を控訴人の平成16年分の給与所得等の他の所得と損益通算すると平成16年分の所得税について還付されるべき税金136万9400円が存在するとして、その旨の更正請求書を提出したが、処分行政庁が、平成16年4月1日に施行された改正後の租税特別措置法31条1項後段の規定(それまで認められていた土地建物等の譲渡損失を他の各種所得の金額から控除することを廃止する旨の規定)は平成16年法律第14号(所得税法等の一部を改正する法律)附則27条1項によって同年1月1日以後に行う土地建物等の譲渡にもさかのぼって適用されているとして、控訴人の上記更正請求には更正すべき理由がない旨の通知処分をしたため、控訴人が、上記の平成16年法律第14号附則27条1項の規定は憲法84条が原則として禁止する遡及立法にあたり、したがって、上記の更正請求に理由がない旨の通知処分は違法であるとして、その取消しを求めた事案である。
 原判決は、上記の附則27条1項は憲法84条に違反せず、上記の通知処分は適法であるとして、控訴人の請求を棄却した。そこで、控訴人が控訴した。
 2 関係法令の定め等、前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1ないし4に記載(原判決2頁14行目から8頁15行目まで)のとおりであるから(ただし、更正決定による更正後のもの)、これを引用する。
第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も、本件改正附則は憲法84条に違反せず、本件通知処分は適法であり、控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。
   その理由は、下記2に当裁判所の補充の判断を示すほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1及び2に記載(原判決8頁17行目から21頁5行目まで)のとおりであるから(ただし、更正決定による更正後のもの)、これを引用する。ただし、次のとおり、付加、訂正又は削除する。
  (1) 原判決9頁16行目の「損益通算の廃止・繰越控除等」を「損益通算及び純損失・雑損失の繰越控除の各廃止」と改め、同頁24行目の「株式」を「譲渡損失について他の所得との損益通算が認められていない株式の譲渡所得」と改め、10頁8行目の「上記与党」を「後記与党」と改め、同頁19行目の「乙20」の次に「、弁論の全趣旨」を加える。
  (2) 原判決14頁3行目の「課税義務」を「納税義務」と改め、同頁20行目の「遡及適用」を「遡及立法」と改め、15頁17行目の「株式」を「株式の譲渡所得」と改め、17頁1行目の「37条の15」を「37条の14」と改め、18頁25行目の「多額の」を削り、19頁13行目の「譲渡時を基準とすると、」を「譲渡について改正措置法を適用するものとすると、そのことを知り得る状態となってから改正措置法が適用されない譲渡をすることができる期間の終期までは年末の約2週間しかなく、」と改め、20頁18行目の「提案」の次に「(同族会社や身内への売却しかないと指摘するものなど)」を加える。
 2 当裁判所の補充の判断
  (1) 憲法84条の定める租税法律主義の内容の一つとしての課税要件法定主義は、課税要件(それが充足されることによって納税義務が成立するための要件)と租税の賦課・徴収の手続は法律によって規定されなければならないとする原則であるが、遡及立法は、納税義務が成立した時点では存在しなかった法規をさかのぼって適用して、過去の事実や取引を課税要件とする新たな租税を創設し、あるいは、既に成立した納税義務の内容を納税者に不利益に変更する立法であり、法律の根拠なくして租税を課することと同視し得ることから、租税法律主義に反するものとされる。
  (2) 所得税は、いわゆる期間税であり、暦年の終了の時に納税義務が成立するものと規定されている(国税通則法15条2項1号)。したがって、暦年の途中においては、納税義務は未だ成立していないのであり、そうとすれば、その暦年の途中において納税者に不利益な内容の租税法規の改正がなされ、その改正規定が暦年の開始時(1月1日)にさかのぼって適用されることとされたとしても(以下、これを「暦年当初への遡及適用」という。)、このような改正(立法)は、厳密な意味では、遡及立法ではない。
  (3) しかし、厳密な意味では遡及立法とはいえないとしても、本件のように暦年当初への遡及適用(改正措置法31条1項の暦年当初への遡及適用)によって納税者に不利益を与える場合には、憲法84条の趣旨からして、その暦年当初への遡及適用について合理的な理由のあることが必要であると解するのが相当である。
  ただ、暦年当初への遡及適用に合理的な理由があるか否かについては、「租税は、今日では、国家の財政需要を充足するという本来の機能に加え、所得の再配分、資源の適正配分、景気の調整等の諸機能をも有しており、国民の租税負担を定めるについて、財政・経済・社会政策等の国政全般からの総合的な政策判断を必要とするばかりでなく、課税要件等を定めるについて、極めて専門技術的な判断を必要とすることも明らかである。したがって、租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。」(最高裁昭和60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁参照)と解される。すなわち、本件においても、立法府の判断がその合理的裁量の範囲を超えると認められる場合に初めて暦年当初への遡及適用が憲法84条の趣旨に反するものということができるものというべきである。
  (4) そこで、本件における暦年当初への遡及適用(改正措置法31条1項の暦年当初への遡及適用)に合理的な理由があるか否か、すなわち、暦年当初への遡及適用を行うものとしたことが立法府の合理的裁量の範囲を超えると認められるか否かについて検討するに、①そもそも、分離課税の対象となる土地建物等の長期譲渡所得に対する課税については、利益(他の所得と損益通算するなどした後の利益)が生じた場合には税率20%の分離課税とされながら、損失が生じた場合には総合課税の対象となる事業所得や給与所得などの他の所得と損益通算して他の所得の額を減額することができること(改正前措置法31条1項、所得税法69条)については、かねてから不均衡であるとの批判が強く、長期譲渡所得について損益通算の制度を廃止すべきことが指摘されていたこと、②平成16年1月1日以降の土地建物等の長期譲渡所得について損益通算を廃止することは、自由民主党の「平成16年度税制改正大綱」の中に盛り込まれており、そして、この「平成16年度税制改正大綱」は平成15年12月18日の日本経済新聞に掲載されて、納税者においても、平成16年1月1日以降の土地建物等の譲渡について損益通算が廃止されることを事前に予測することはできたこと、③また、改正措置法31条1項と同様に暦年の途中から施行されながらその適用が1月1日にさかのぼるものとされた改正規定は少なからず存し、これによると、本件の暦年当初への遡及適用についても、納税者において、暦年の途中から改正規定が施行されてもその適用が1月1日にさかのぼるものとされることは予め十分に認識し得たといえること、④そして、もし、本件改正附則を設けないものとして、改正措置法31条1項を1月1日にさかのぼって適用せず、1月1日から3月31日までの長期譲渡(複数の譲渡があればそれらの損益を通算したもの)と4月1日から12月31日までの長期譲渡(複数の譲渡があればそれらの損益を通算したもの)とに区別し、前者については改正前措置法31条1項を、後者については改正措置法31条1項を適用して、別異に取り扱うものとすると、仮に前者の譲渡について損失が生じた場合、その損失をどのように損益通算するのか(例えば、他の所得が事業所得のみである場合に、その所得の1月1日から3月31日までの間の利益と通算するのかそれとも1月1日から12月31日までの間の利益と通算するのか)、仮に前者の譲渡について利益が生じた場合、その利益をどのように損益通算するのか(例えば、他の所得が事業所得のみである場合に、その所得の1月1日から3月31日までの間の損失と通算するのかそれとも1月1日から12月31日までの間の損失と通算するのか)、また、特別控除額100万円はその全額を1月1日から3月31日までの間の譲渡所得から控除していいのか、等 の問題を生じるのであり、さらに、1月1日から3月31日までの譲渡と4月1日から12月31日までの譲渡に区分すると、納税者においても所得税確定申告の手続がそれだけ煩雑となり、申告を受けた課税庁においても正しく区分されているか等を調べるために付加的な労力を要することとなること、⑤加えて、1月1日から3月31日までの譲渡についてその損失を他の各種所得と通算できるものとすると、その間に譲渡損失を出すことのみを目的とした駆け込み的な不当に廉価な土地建物等の売却を許すことになり(現に、自由民主党の「平成16年度税制改正大綱」が日本経済新聞に掲載された直後から、年内の駆け込みの土地売却を勧める税理士等の提案がインターネットのホームページに掲載されるなどしていた。)、公正な取引を行う他の納税者との間に不平等が生じ、不動産市場に対しても悪影響を及ぼしかねないこと、⑥本件において、暦年当初への遡及適用の期間は1月1日から3月31日までの3か月にとどまるものであること、⑦一方、居住用財産を譲渡した場合の譲渡損失の一部については、なお一定の要件の下に損益通算が認められていること(改正措置法41条の5第1項)、等の事情を総合考慮すると、本件における暦年当初への遡及適用(改正措置法31条1項の暦年当初への遡及適用)には合理的な理由があり、暦年当初への遡及適用を行うものとしたことに立法府の合理的裁量の 範囲を超えるところはないというべきである。
  (5) したがって、暦年当初への遡及適用(改正措置法31条1項の暦年当初への遡及適用)を定める本件改正附則が憲法84条の趣旨に反するものということはできないから、控訴人の主張は採用することができない。
 3 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり判決する。
(口頭弁論終結日 平成20年9月4日)
(東京高等裁判所第8民事部 裁判長裁判官 原田敏章 裁判官 加藤謙一 裁判官 小出邦夫)
この判決文は、判例集等には、現時点で未搭載です。
税理士情報ネットワーク(TAINS)に収録されているものです。

判決は、平成15年12月18日の自民党の税制改正大綱に突然登場したこの損益通算を不可とする税法改正に関し、16年1月1日前であるから、国民に周知されていたとする理屈のつけ方は、国民を馬鹿にするにもほどがあります。

誰もが欲しがる汎用品を売るのではなく、高額な不動産の売却交渉が、二週間やそこらで決定できるはずが無いじゃないですか。裁判官なんて人は不動産の購入なんてしないのでしょう。
それと、いずれにしろ、不動産業者ならともかく通常の人間にとって不動産の購入や売却などという行為は一生に一度あるかないかなのです。それを、通常の取引と同様に考えるのは間違いです。
この点に関しては、単純に所得税は期間税だから一般的にその年の一月に遡る遡及立法は認められるという立場は採っていません。しかし、限定的に遡及効が認められる場合に当たる場合とした上で、合理的な理由があるかについて判断をしているわけですが、その理由は、通常の人の常識に合致する理論とは思えませんけどね。

さらに、不動産譲渡所得の分離課税が日本の所得課税の体系の中で問題があるということと、この改正とは直接的には結びつきません。
分離課税が問題であるのだとしたらそれは、総合課税するべきなのではないかという論点が一つ。もう一つは、分離課税の税率が適正なのかどうかという論点が一つ、それぞれ出てくるだけでしょう。

確かに、分離課税のものを他の総合課税所得と損益通算できるということ自体に不合理性を認めることは可能ですが、それは、もっと以前に議論がなされているべきことです。

損益通算と同時に青色申告の場合の不動産譲渡損失の繰越控除も認められなくなりましたが、株式譲渡損失や、博打そのものである先物取引における損失の繰越控除を認めていることと比べると明らかに均衡を失しています。

TAINSは、基本的に税理士及び所定の要件を満たした特別会員しか利用できません。念のため申し添えておきます。

この判決を引用する場合には、出典としてTAINS Z888-1387をしてください。
by nk24mdwst | 2008-12-29 13:13 | 租税法(日本)

no tax, no music, no poems

財務省のHPに以下のような情報がでました。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200430/200430l.htm

交際費等の損金不算入(法人税)

交際費等の損金不算入(措法61の4、68の66)については、「所得税法等の一部を改正する法律」により、その適用期限が延長されました。

(1) 改正前の制度の概要

法人が平成18年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始する各事業年度において支出する交際費等の額は、その全額を損金の額に算入しないこととされています。ただし、資本金の額が1億円以下の法人については、支出した交際費等の額のうち、400万円までの金額の10%相当額と400万円を超える部分の金額との合計額を損金の額に算入しないこととされています。

(2) 改正の内容

適用期限が平成22年3月31日まで2年延長されました。

(3) 適用関係

改正後の規定は、平成18年4月1日から平成22年3月31日までの間に開始する各事業年度について適用されます。

という訳で、交際費等に対する法人税の課税関係は、今回のガソリン税の暫定税率維持をめぐる租税特別措置法の可決の遅れにもかかわらず、従前と変わらないというわけです。

期間税だから、遡及効の問題は生じないということなのでしょう。

附則その他によって4月の空白に関する手当をしていなかったわけで、法解釈上、問題がないという判断なのでしょうね。
納税者に有利になる租税特別措置法、つまり、登録免許税等に関する軽減措置等ですが、これに関しては、延長法案で繋いでいたわけですから、交際費等については期間税論でクリアできるという考え方ですね。

欠損金の繰戻しによる還付の不適用(法人税)についても情報が出ています。
http://www.mof.go.jp/jouhou/syuzei/sy200430/200430n.htm

欠損金の繰戻しによる還付の不適用(法人税)について


欠損金の繰戻しによる還付の不適用(措法66の13、68の98)については、「所得税法等の一部を改正する法律」により、その適用期限が延長されました。

(1) 改正前の制度の概要

法人の平成4年4月1日から平成20年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた青色欠損金額については、原則として、欠損金の繰戻し還付制度(法法80)は適用されません。

(2) 改正の内容

適用期限が平成22年3月31日まで2年延長されました。

(3) 適用関係

改正後の規定は、法人の公布日(平成20年4月30日)以後に終了する事業年度分の法人税について適用され、法人の公布日前に終了した事業年度分の法人税については、従前のとおりとされています。つまり、改正前の規定は、平成20年3月31日までの間に終了した各事業年度について、原則として、欠損金の繰戻し還付制度を適用しないというものであり、平成20年4月1日以後公布日前に終了した事業年度については、欠損金の繰戻し還付制度の適用があります。

こちらの方は、適用関係のところに平成20年4月1日以後4月30日前(つまり、4月29日)の間に終了した事業年度については、繰戻し還付が認められるというわけです。
4月20日決算法人は、欠損金繰戻し還付の適用除外の適用がない、つまり、繰戻し還付の適用がある。

同じ期間税である(講学上の期間税という概念に意味があるとしてですが。)法人税でも、条文の規定の仕方、つまり、事業年度開始の日を基準とするか、終了の日を基準とするかによって適用関係が変わるということですね。

一義的には、交際費等に対する法人課税論、あるいは、バブル崩壊後の税収欠陥対応策であった欠損金の繰戻し還付停止措置の継続の意義について検討が必要であるはずであると、一応、問題提起はしておきます。

これらの規定の存在意義については、考えないことにして適用関係の問題は、これでいいのか。金子租税法は、納税者の予見可能性を重視しているわけですが、それを言えば、衆議院で当初可決、その後参議院で議決なし、衆議院で再可決となり法案が成立すること、さらに法案の内容自体も充分に知れていたので問題は、ない、という結論になるのでしょう。

税金、音楽、それに詩の話は、やめて、そうすると書くことがなくなるのですが、止めるつもりだったのに。

今回のこの租税特別措置法の問題は、期間税、随時税論ではなく、租税特別措置法の位置づけについて基本に立ち返り検討すべきであると、また、大上段に振りかぶって一言、書いておきます。
一ついえることは、措置法という形で時限立法されたものが、事実上,恒久化するということをどう考えるかということなのでしょう。

交際費等に対する課税は、現在と同じ形ではありませんが、昭和20年代後半に始まっています。当時と現在とでは、日本経済を取り巻く状況は全く変わっている訳です。

いずれにしろ今回のどたばた騒ぎ、特にガソリン・スタンドの昨日の長蛇の列は、市民のささやかな抵抗の現われでしょうが、租税法律主義、租税特別措置法の位置づけないしその本質について原点に戻って勉強する必要があるようです。

昨日採り上げたテキサス州のPole Tax も間接税(個別間接税)で目的税ですね。ガソリン税と同じですか。

アメリカの地方税と呼ばれるものについては、簡単にくくって論ずることが出来ないので注意が必要ですね。
by nk24mdwst | 2008-05-01 10:05 | 租税法(日本)

The Gas Tax False

ガソリン税の暫定税率引き上げを盛り込んだ租税特別措置法改正案が年度内成立しなかったわけです。道連れになって、4月28日以後の衆議院での再可決まで期限が切れたものがあるのは新聞等が報じるところです。

ガソリン税率の暫定税率と道連れになったものに一覧、つまり、5月31日まで暫定延長とならなかったものは財務省のHPに列挙されています。

民間国外債等の利子・発行差金の課税の特例H20.3.31 措6、41の13、67の16
試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(控除率の加算措置に係る部分)
H20.3.31
(個人はH20年分)
措10、42の4、68の9
エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除H20.3.31 措10の2、42の5、68の10
中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除H20.3.31 措10の3、42の6、68の11
情報基盤強化設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除H20.3.31 措10の6、42の11、68の15
教育訓練費の額が増加した場合の法人税額の特別控除
H20.3.31
(個人はH20年分)
措10の7、42の12、68の15の2
公害防止用設備の特別償却H20.3.31 措11、43、68の16
地震防災対策用資産の特別償却H20.3.31 措11の2、44、68の19
特定電気通信設備等の特別償却H20.3.31 措11の4、44の4、68の23
再商品化設備等の特別償却H20.3.31 措11の6、44の6、68の26
障害者を雇用する場合の機械等の割増償却等H20.3.31 措13、46の2、68の31
優良賃貸住宅の割増償却H20.3.31 措14、47、68の34
金属鉱業等鉱害防止準備金
H20.3.31
(個人はH20年分)
措20、55の5、68の44
特定災害防止準備金H20.3.31 措20の3、55の7、68の46
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例H20.3.31 措28の2、67の5、68の102の2
海外投資等損失準備金H20.3.31 措55、68の43
交際費等の損金不算入H20.3.31 措61の4、68の66
使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例H20.3.31 措62、68の67
欠損金の繰戻しによる還付の不適用H20.3.31 措66の13、68の98
退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止H20.3.31 措68の4
住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例H19.12.31 措70の3、70の3の2
清酒等に係る酒税の税率の特例H20.3.31 措87
ビールに係る酒税の税率の特例H20.3.31 措87の6
移出に係る揮発油の特定用途免税H20.3.31 措89の3
石油化学製品の原料用特定揮発油等に係る石油石炭税の還付H20.3.31 措90の5
特定の重油を農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付H20.3.31 措90の6

沢山あるわけですが、少し考えて見ます。

中小企業等が機械等を取得した場合の特別償却(措法42の6等)は、機械等の取得して事業供用する期間要件を平成10年6月1日から平成20年3月31日と定めているので、4月に入った今は、失効しているわけですね。

青色申告法人の欠損金の繰戻しによる還付(法人税法80)の規定は、平成4年改正により、原則として不適用とされている(措置法66の13)のですが、この条文は、平成4年4月1日から平成20年3月31日までに終了する事業年度についてとあるので、現時点では例えば平成20年4月20日決算法人には適用されないことになります。

もう一つ、法人税における交際費等の損金不算入規定(措置法61の4)ですが、この規定も昭和20年代の終わりから半世紀も延長されてきている化石かもしれませんが、条文によれば、平成18年4月1日から平成20年3月31日に開始する事業年度が適用対象です。

仮に、4月28日以後に、租税特別措置法の政府原案がそのまま可決された場合の遡及効の問題が生じます。

特別償却等の場合は、納税者に有利だから遡及効を認める、交際費等の損金不算入規定のような納税者に不利な規定の遡及効が認められるかという問題が生じます。

福岡地裁と東京地裁とで全く正反対の判決が出た所得税における不動産譲渡損失の損益通算と遡及効と同様の問題です。

交際費等に対する課税の問題は、遡及効が認められないとなれば、3月決算(4月1日事業年度開始)の大法人には素晴らしい贈り物ですね。
ただ、政府としては、当然のこととして遡及効を狙ってくるはずです。現在国会で審議されている法案に手を加えずに遡及効が自動的に可能なのか、一文盛り込むかなどと考えたりするのですが。

ただ、不動産譲渡損失のときと同様期間税論をすると、上記に掲げた法人税上の問題は、明らかに全て純粋に期間税の議論の範疇に入ります。新版が出たばかりの金子大先生の租税法13版を錦の御旗にするのでしょうかね。

しかし、期間税だの随時税だのというのは、講学上の議論です。現実の経済取引に適合しているのか、あるいは、租税法律主義を論ずるときに意味のある議論かと疑念を覚えます。
金子租税法でも北野税法学原論でもこの期間税論は、租税法律主義と遡及効のところで出てくるのですが。
租税法律主義において事後法の遡及効が認められるのだとすれば、それは、経済的取引等が行われた時点において、それに関する課税について予見可能性が判断できることがメルクマールとされているわけです。

しかし、行為が行われた日においては課税されないものが、課税される税が期間税である、つまり、行為の行われた日に納税義務が確定するのではなく、納税義務が確定するのは事業年度終了のときで先のことであり、納税義務の確定までには立法はなされていたから課税されることには問題はないという議論は正しいのでしょうか。
逆に、期間税論を根拠とする遡及効を認めると租税法律主義論自体の意味がなくなるのではと考えます。

これとはまったく別の議論として、租税法における遡及効そのものの効果を認めるかどうかという議論がなされるべきなのではないでしょうか。
例えば、ドイツでは遡及効が認められていると記憶しています。成文法にあるということでしょう。

東京地裁判決は、農地法の最高裁大法廷判例を持ち出し論拠としています。しかし、持ち出された判例自体は、農地を巡る私人間の取引であり、租税のような官と民の問題ではありません。

日本においては、租税訴訟のような行政訴訟は民事訴訟の延長線上にあるととらえられているようですが、この考え方は正しいのでしょうか。
租税は、財産権の侵害であり、租税法はその意味で侵害規範として位置づけられ、憲法論は振りかざしたくは無いですが、基本的人権に関する問題です。
したがって、アメリカのように刑事訴訟と同様手続規定、遡及効については、消極的であるべきだと考えます。

Emily Dickinson です。

          8

      A WOUNDED deer leaps highest

A WOUNDED deer leaps highest,
I ’ve heard the hunter tell;
’T is but the ecstasy of death,
And then the brake is still.

The smitten rock that gushes,
The trampled steel that springs:
A cheek is always redder
Just where the hectic stings!

Mirth is the mail of anguish,
In which it caution arm,
Lest anybody spy the blood
And “You ’re hurt” exclaim!

ディキンソンは、口直し、です。

FZが1970年代の終わりごろから80年代初頭にかけて、つまり、カーター政権からレーガン政権時代に変わる時期のアメリカにおける宗教右翼を批判していることを記しておきます。

昨日、東京のある図書室でCCHのシステム検索を利用してとても便利だと感じました。時間を作って東京へ行かないと行けないようです。Church of Scientology なんてキー・ワードでやってみました。租税関連書籍の図書室で普通の人も利用できるところではナンバー・ワンの図書室ですが、この春から入れたCCHのシステムを利用してみたのは私が初めてだったそうでして。

宗教右翼は、草の根保守と結びついてアメリカにおける反税運動の基礎票であることが見えてきました。日本と左右逆転です。
FZは、Tax the Church!と。

金子租税法では、納税義務の成立についても変なことを書いているような気がします。
Gas Tax や、消費税のことも含めて検討してみなければ。

最近、物忘れがひどいので心覚えです、このあたりは。

エーっと、消費税は、今や日本政府では基幹税として位置づけられていて、法人税は基幹税といえるのかどうか。金子租税法によれば、消費税における納税義務の成立は、課税資産の譲渡の時点だと考えられるのだそうですが、いずれにしろ、課税期間終了時点を納税義務の確定としているので、消費税は期間税なのでしょうか。

消費税の期間税性、あるいは、遡及効を考える上では、税率が3%から5%に上げられたときの一定の取引おける経過措置が設けられたことを検討の手がかりすることができるのでしょう。
by nk24mdwst | 2008-04-05 12:06 | 租税法(日本)

Me and Dr. Kitano

北野弘久先生の『税法学原論(第6版)』(青林書院)刊行の広告が今朝の日経の一面に出ていました。青林書院のHPの広告からすると20ページ余り加筆訂正が行われたようです。

第5版を出されたときには、遺書のつもりでとおっしゃっていたのですが、第6版と新たに改訂されたわけです。昭和一桁生まれの方々のパワーにはやっぱりかないません。

期間税、随時税と訴求立法の有効性について加筆されたと聞いておりますが。

以下、1月15日記す。

税法学原論(第6版)がアマゾンから来ました。不動産譲渡損に係る損益通算の廃止に関しての課税年度途中における法改正は、所得税が期間税であるという観点からすれば問題ないとしても、不動産譲渡という行為が通常の人にとっては、毎年あるわけではないので、期間税として遡及立法(納税者に不利益な)が認められるものではないと加筆をされておられました。

Me & Mr. John McNalty というのもいつか書こうと思ってます。

以下、2月1日記す。

税法の遡及適用は違憲、福岡地裁が住宅売却損の控除認める

 改正租税特別措置法が施行前にさかのぼって適用されたため、マンション譲渡で発生した損失を他の所得から控除することを福岡税務署が認めない処分をしたのは違憲として、福岡市の女性が国を相手取り、処分取り消しを求めた訴訟の判決が29日、福岡地裁であった。

 岸和田羊一裁判長は「租税法規不遡及(そきゅう)の原則に違反し、違憲無効。控除を認めるべき」などとして処分を取り消した。

 改正法では、個人の土地、建物などの譲渡に伴う損失を他の所得から控除するのを認めないことにする一方、譲渡や買い替えに伴う借入金がある場合は控除を認める特例が盛り込まれた。2004年4月に施行され、適用はさかのぼって同年1月からとされた。

 判決によると、女性は1997年、同市中央区のマンションを約4800万円で購入し、04年3月に2600万円で売却。同月、同区内に別のマンションを購入した。女性は05年3月、約2000万円の損失を他の所得から控除し、約170万円の還付を求めたところ、法改正を知らされた。女性は直後、同税務署に04年分所得税の更正請求をしたが売却、買い替えに伴う借入金がなかったため、特例措置の対象とならなかった。

 女性は同税務署長に異議申し立てをし、国税不服審判所長にも審査請求をしたが、いずれも棄却。06年提訴した。弁護士を付けず、「国民の財産権を侵害する遡及適用は許されない」と主張。国側は「節税のために土地の安売りを招く恐れがある」などと訴えていた。

 岸和田裁判長は「法改正要旨が報道されたのは遡及適用のわずか2週間前。国民に周知されていたといえない」などと指摘。その上で、「控除を認めないことで不利益を被る国民の経済的損失は多額に上る場合も少なくなく、改正法の遡及適用が国民に経済生活の法的安定性を害しないとはいえない」と判断した。

 油布寛・福岡国税局国税広報広聴室長は「控訴するかは判決内容を詳細に検討して決めたい」と話した。

 改正法の遡及適用を巡っては、日本弁護士連合会が「憲法に違反するもので、再度法改正を行って救済措置をとるべき」とする意見書を発表している。日弁連税制委員会の水野武夫委員長は「租税法規の遡及適用を違憲と認めた判決はおそらく初めて。慎重な立法を促すという点でも画期的だ」と話した。

(2008年1月30日03時05分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080129-OYT1T00842.htm

常識的な非常に優れた判断を裁判所は下したと思います。
この法律改正について国会で答弁にたった当時の財務省担当者は、金子租税法を振りかざして合法性を強調したのを思い出しました。

岸和田裁判長の違憲判断にまで踏み込んだ判決は、大したものだと思いますが、逆に、これが本人訴訟だというところに日本の司法の租税訴訟に対する消極を見てしまいます。
by nk24mdwst | 2007-12-13 12:53 | 租税訴訟