人気ブログランキング |

2010年 05月 31日 ( 1 )

a cat and a dog

きょうは、良い天気、さすがに暖房は不要ですが、欧州の雲行きは怪しい。
Some Say European Central Bank May Be Missing Deflation Threat
By JACK EWING
Published: May 30, 2010

FRANKFURT — If the European Central Bank has one monetary dragon it considers essential to slay, it is inflation.
http://www.nytimes.com/2010/05/31/business/global/31deflation.html
中央銀行の目的は、インフレ退治にあるのは、間違いない、しかし、現状はというわけです。
ECBは、ギリシャに端を発するEU諸国の財政赤字に起因する金利の上昇を懸念しているわけですね。
だから、ギリシャだけではなく、フランスもVATを標準税率を復活させる形で増税に舵を切ろうとしているわけです。日本は、ギリシャよりひどいから、早く何とかしないと、つまり増税と歳出の抑制をしないと、ある日、日本国債を誰も買わなくなる日が来る、などというのが日経などの論調です。

タイムズのこの記事は、欧州におけるデフレの兆しを指摘し、中央銀行が対応を誤っていると指摘するものです。既に、アイルランドでは、物価下落が始まっていると。
アイルランドは、法人税を軽減し金融立国をやったおかげで、一番ひどいバブルになった国です。

気の重い月末、疲れているのにこんなこと書いていたくないのですが。

先週のアメリカの議会での税制改正の動きについて。
ブッシュ時代に導入されたとんでもない所得課税の抜け穴を防ぐ法案が議会を通りました。
House Votes to Eliminate Hedge Fund Tax Break
By DAVID KOCIENIEWSKI
Published: May 28, 2010

The House passed a bill on Friday that would end a tax break for executives of investment funds, leaving hedge funds, private equity firms and venture capitalists scrambling to ease the effects of the bill before it is taken up by the Senate next month.
http://www.nytimes.com/2010/05/29/business/29carried.html
ヘッジファンドなどに投資している人たちに対する抜け道を防ぐ法案が下院を通過、来月、といってもすぐですが、上院でも可決される見込みです。
それに対して、当事者は、対応に追われているというわけです。

キーワードは、carried interest という言葉です。
グーグルで検索してみましたが、適切な訳語は、まだないようですね。利息による所得の移転ということなのですけど。

ヘッジファンド等に対する課税は、通常どう行われるかというところから説明が必要でしょうね。
ファンドがパートナーシップであろうと匿名組合であろうと、あるいはLLC(LLPでも同じ)であろうと、アメリカの連邦税法においては、パス・スルー課税が行われます。

日本では、ファンドが法人格を持っていれば、ファンドに対して法人税が課税されることになるのですが、アメリカでは、法人格を持っている普通の小規模法人も含めて、法人格を否定して、その構成員の所得として課税するということです。
具体的には、あるファンドの収入が1,000、支出(必要経費、損金、要するに課税所得計算上控除できるもの)が100だとします。
そうすると、ファンドの利益は、1,000-100=900となるのですね。
日本であれば、このファンドに法人格があれば、900に対して法人税が課税されるということになります。
アメリカの場合は、このファンドの構成員(パートナー)が仮に3人で、持分が同じだとすると、個々の構成員の所得は、900÷3=300として課税されるわけですね。
そして、個々の構成員が受け取る利益300については、その構成員個人の他の所得と合算され、通常所得として、超過累進税率で課税されることになるはずなのです。

ところで、構成員がファンドに対して資金を貸し付けていた場合には、ファンドから構成員は、貸付金に対する利息を受け取ることができます。これが、carried interest です。
上記の例でいうと、各構成員は、ファンドに対して貸付金を作ることによって(実際は、もっと手の混んだことをやりますが)利息を300ずつ受け取るということが、可能です。
ブッシュ時代にどのような税制改正をやったかというと、受取利息は通常所得ですから、累進課税されることになっていたのを、この受取利息を配当と同様にみなすだけでなく、その本質キャピタル・ゲインだとしたわけです。
キャピタル・ゲインであると認定されたcarried interst は、累進課税を受けることなく、定率(15%が原則、現在10%)によるキャピタル・ゲイン課税だけで終わってしまうのですね。

実に、ブッシュ政権というのは賢い集団だったと思います。
利潤が滴り落ちないように、つまり、政府に吸い取られないように上手くこんな法律を作ったのですね。
これを、廃止して、通常所得として課税することになるという話です。
本来であれば、昨年5月に大統領が出したグリーンブックで既に指摘されていた改正点で、昨年中に改正されているはずだったのですが、強力なロビーイングで、引き伸ばしがなされたのですね。

日本では、このような問題があるのかという点について考えてみると、通常、中小同族会社において、会社の資金繰りの都合上、社長等の役員が会社に対して貸付金を有している場合は少なからず存在します。
会社が資金繰りに余裕があり、役員等に対して市中金利で利息を支払った場合には、会社にとっては損金になり、受け取った役員等は、雑所得として総合課税(累進課税)されるだけの話ですね。
逆に、高すぎる利息を支払った場合、たとえば、役員等に高い利息を払えば会社の所得を圧縮できますが、不相当に高い利息部分は、役員賞与扱いとして損金参入を否認されることになるでしょうね。
要するに、法人税と所得税の両方が課税されるはずです。

逆に、社長等は、自分の会社から利息をもらうべき理由がないので、利息をもらわなかったとしても、課税関係は、法人にも個人にも生じないのが普通です。

ただ、この社長が会社に無利子貸付をしたことに対して、利息相当分を所得と認定して所得課税をした例が存在します。いわゆる「平和事件」として知られている事例です。
この事例の場合は、社長が有する株式(上場してます)に対する相続税課税を軽減するために、社長が金融機関から借入を行い、それを子会社に貸し付けて株式を移転することにより株式評価を下げようというスキームを組んだのが否認されたのです。
同族会社の行為計算否認の規定が使われた非常に珍しい事案ではありますが。

珍しく、まじめなことを書いてしまって、自分で驚いてます。書き始めたときは、利息の話なんかするつもりはなくて、数行で止めてしまうつもりだったのですけど。

税法の抜け穴論より、デフレ危機の方が問題は、大きいのです。ただ、世界的デフレの起因となったバブルの生成過程においては、それを醸成するような税法改正も意図的に行われていたことを覚えておくべきなんでしょう。

Drive-By Truckers について書きたいのですが、これが、そう簡単ではないのです。
by nk24mdwst | 2010-05-31 18:38 | 租税法(アメリカ)