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2008年 01月 29日 ( 1 )

Consumption Tax in Japan Ⅲ

続き
これに対し
裁判官滝井繁男の反対意見は、次のとおりである。
1 私は、税務調査において、帳簿等の提示を求められた事業者が、これに応じ難いとする理由がないとはいえ、帳簿等の提示を拒み続けたというだけの理由で、法30条7項所定の帳簿等を保管していたのに、同項にいう「帳簿(中略)等を保存しない場合」に当たるとして、同条1項による課税仕入れに係る消費税額の控除を受けることができないと解するのは相当でないと考える。多数意見は結局そのような解釈を採るに帰着するものであるから、これに賛成することはできない。その理由は次のとおりである。
2(1) 我が国消費税は、税制改革法(昭和63年法律第107号)の制定を受けて消費に広く薄く負担を課することを目的とし、事業者による商品の販売、役務の提供等の各段階において課税することとしたものであるが、同法は課税の累積を排除する方式によることを明らかにし(同法4条、10条、11条)、これを受けて、法30条1項は、事業者が国内において課税仕入れを行ったときは、当該課税期間中に国内で行った課税仕入れに係る消費税額を控除することを規定しているのである。この仕入税額控除は、消費税の制度の骨格をなすものであって、消費税額を算定する上での実体上の課税要件にも匹敵する本質的な要素とみるべきものである。ただ、法は、この仕入税額控除要件の証明は一定の要件を備えた帳簿等によることとし、その保存がないときは控除をしないものとしているのである(同条7項)。しかしながら、法が仕入税額の控除にこのような限定を設けたのは、あくまで消費税を円滑かつ適正に転嫁するために(税制改革法11条1項)、一定の要件を備えた帳簿等という確実な証拠を確保する必要があると判断したためであって、法30条7項の規定も、課税資産の譲渡等の対価に着実に課税が行われると同時に、課税仕入れに係る税額もまた確実に控除されるという制度の理念に即して解釈されなければならないのである。
 (2) しかしながら、法58条、62条にかんがみれば、法30条7項は、事業者が税務職員による検査に当たって帳簿等を提示することが可能なようにこれを整理して保存しなければならないと定めていると解し得るとしても、そのことから、多数意見のように、事業者がそのように態勢を整えて保存することをしていなかった場合には、やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明した場合を除き、仕入税額の控除を認めないものと解することは、結局、事業者が検査に対して帳簿等を正当な理由なく提示しなかったことをもって、これを 保存しなかったものと同視するに帰着するといわざるを得ないのであり、そのような理由により消費税額算定の重要な要素である仕入税額控除の規定を適用しないという解釈は、申告納税制度の趣旨及び仕組み、並びに法30条7項の趣旨をどのように強調しても採り得ないものと考える。
 (3) 事業者が法の要求している帳簿等を保存しているにもかかわらず、正当な理由なくその提示を拒否するということは通常あり得ることではなく、その意味で正当な理由のない帳簿等の提示の拒否は、帳簿等を保存していないことを推認させる有力な事情である。しかし、それはあくまで提示の拒否という事実からの推認にとどまるのであって、保存がないことを理由に仕入税額控除を認めないでなされた課税処分に対し、所定の帳簿等を保存していたことを主張・立証することを許さないとする法文上の根拠はない(消費税法施行令66条は還付等一定の場合にのみ帳簿等の提示を求めているにすぎない。)。また、大量反復性を有する消費税の申告及び課税処分において迅速かつ正確に課税仕入れの存否を確認し、課税仕入れに係る適正な消費税額を把握する必要性など制度の趣旨を強調しても、法30条7項における「保存」の規定に、現状維持のまま保管するという通常その言葉の持っている意味を超えて、税務調査における提示の求めに応ずることまで含ませなければならない根拠を見出すことはできない。そのように解することは、法解釈の限界を超えるばかりか、課税売上げへの課税の必要性を強調するあまり本来確実に控除されなければならないものまで控除しないという結果をもたらすことになる点において、制度の趣旨にも反するものといわなければならない。
 (4) 保存の意味を本来の客観的な状態での保管という用語の持つ一般的な意味を超えて解釈することが、制度の趣旨から是認されるという場合がないわけではない。例えば、青色申告の承認を受けた者は所定の帳簿書類の備付け、記録及び保存が義務付けられ、それが行われていないことは青色申告承認の取消事由となるものと定められているところ、納税者が正当な理由なく税務職員による帳簿書類の提示の要求に応じないときは、帳簿書類の備付け、記録及び保存の義務を履行していないものとして青色承認の取消事由になるものと解されている。しかしながら、青色申告制度は、納税義務者の自主的かつ公正な申告による租税義務の確定及び課税の実現を確保するため、一定の信頼性ある記帳を約した納税義務者に対してのみ、特別な申告手続を行い得るという特典を与え、制度の趣旨に反する事由が生じたときはその承認を取り消しその資格を奪うこととしているものである。そして、青色申告の承認を受けた者は、帳簿書類に基づくことなしには申告に対して更正を受けないという制度上の特典を与えられているのであるから、税務調査に際して帳簿等の提示を拒否する者に対してもその特典を維持するというのは背理である。したがって、その制度の趣旨や仕組みから、税務職員から検査のため求められた書類等の提示を拒否した者がその特典を奪われることは当然のこととして、このような解釈も是認されるのである。
 これに対し、法における仕入税額控除の規定は、前記のとおり課税要件を定めているといっても過言ではなく、青色申告承認のような単なる申告手続上の特典ではないと解すべきものである。そして、法は、消費税額の算定に当たり、仕入税額を控除すべきものとした上で、帳簿等の保存をしていないとき控除の適用を受け得ないとしているにとどまるのである。法30条7項も、消費税を円滑かつ適正に転嫁するために帳簿の保存が確実に行われなければならないことを定めたものであり、着実に課税が行われるよう、課税売上げの額を正しく把握すると同時に控除されるべき税額は確実に控除されなければならないという消費税制度の趣旨を考えれば、同項にいう「保存」に、その通常の意味するところを超えて税務調査における提示をも含ませるような解釈をしなければならない理由は見いだすことはできず、そのように解することは、本来控除すべきものを控除しない結果を招来することになって、かえって消費税制度の本来の趣旨に反するものと考えるのである。
 (5) 事業者が帳簿等を保存すべきものと定められ、これに対する検査権限が法定されているにもかかわらず、正当な理由なくこれに応じないという調査への非協力は、申告内容の確認の妨げになり、適正な税収確保の障害にもなることは容易に想像し得るところであるが、法は、提示を拒否する行為については罰則を用意しているのであって(法68条)、制度の趣旨を強調し、調査への協力が円滑適正な徴税確保のために必要であることから、税額の計算に係る実体的な規定をその本来の意味を超えて広げて解することは、租税法律主義の見地から慎重でなければならないものである。
3 以上のような理由で、私は法30条7項についての多数意見には賛成することができないのである。
  同項につき上述したところと異なる解釈を採った原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。そして、同項にいう帳簿等の「保存」の有無につき更に審理を尽くさせる必要があるから、本件は原審に差し戻すべきものであると考える。
(最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 梶谷玄 裁判官 福田博 裁判官 北川弘治 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野修)
として反対意見がついています。

この事案は、税理士関与の青色申告者である法人が上告人です。帳簿等の提示がなかったことを理由として青色申告も取り消されているのですが、上告受理されたのは消費税の仕入税額控除否認の部分だけです。そして、滝井反対意見はあるものの税務調査時の帳簿等の提示がなかったことを理由に仕入税額控除の否認がなされているわけです。

この滝井反対意見は大勢の学者、実務家から評価を受けたものではありますが結果的にはさらに納税者に苛酷な最高裁判決が直後に出されることになります。

消費税法における帳簿等の保存に調査時の提示が含まれるという考え方は、帳簿保存義務を課している所得税・法人税の青色申告承認取消し処分の判例(例えば、東京地判平3.3.27、税資182号714頁)、学説(例えば、金子・前掲書656頁)に基づくものと考えられます。
この判決が出た時点において、調査時に帳簿等の提示がなかった場合は青色申告承認取消事由に該当するということ、つまり帳簿等の保存には調査時の提示が含まれるという考え方は下級審の判断、ないし学説に止まっていたわけですが、次に掲げる事案において最高裁も同様の判断を下すにいたりました。

平成17年3月10日最高裁第一小法廷判決(平成16(行ヒ)278消費税更正処分等取消請求事件)の判示要旨は、
青色申告の承認を受けた法人が帳簿書類を税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合の法人税法(平成11年法律第160号による改正前のもの)127条1項1号所定の青色申告承認の取消事由該当性
について、要旨
青色申告の承認を受けた法人が,法人税法(平成12年法律第97号による改正前のもの)126条1項に規定する帳簿書類を税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は,法人税法(平成11年法律第160号による改正前のもの)127条1項1号所定の青色申告の承認の取消事由に該当する。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25067&hanreiKbn=01
と判示しました。
ここでは、青色申告承認取消しのみが要旨とされているのですが、消費税についても同様のことを判決文で述べています。以下判決文は、本件上告を棄却する理由について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,平成8年6月1日から同9年5月31日までの事業年度(以下本件事業年度」という。)の法人税について,被上告人に対し,青色の申告書により確定申告書を提出した。また,上告人は,同8年6月1日から同9年5月31日までの課税期間及び同年6月1日から同10年5月31日までの課税期間(以下本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税について,被上告人に対し,それぞれ確定申告書を提出した。
 (2) 被上告人の職員は,平成10年2月3日,上告人の税務調査のため,事前に通知することなく上告人の宇土支店事務所(以下「上告人事務所」という。)に臨場し,調査に協力するよう要請した。これに対し,上告人の代表者は,税務に関する事務を委任していた税理士が調査に立ち会えないことを理由に調査を延期す
るよう申し入れて,上記要請に応じなかった。そこで,上記職員は,上記税理士と日程を調整して改めて臨場することとした。
 被上告人の職員は,上記税理士と調整した日程に従い,同年4月22日に上告人事務所に臨場し,同事務所に隣接する建物の2階の会議室に案内された。室内には,帳簿書類等が段ボール箱に入れて積み重ねてあったものの,上告人関係者からはその提示や提示の申出はなかった。上告人関係者は,上記職員が調査を開始すると,あらかじめ室内に設置していたビデオカメラによる撮影を開始し,上記税理士は,調査理由の開示等を求めた。これに対し,上記職員は,調査理由を所得金額の確認のためであると説明し,撮影の停止を要求したが,上告人関係者は,これに応じなかった。そこで,上記職員は,上告人が調査を拒否したものと判断して,上告人事務所を辞去した。
 その後,被上告人の職員は,同年6月から同11年4月までの間に,上告人の代表者や上記税理士に繰り返し電話して調査に協力するよう求めたほか,7回にわたり上告人事務所を訪ね,少なくとも同10年9月9日,同11年1月13日及び同年4月12日に上告人事務所を訪ねた際には,帳簿書類等の提示を求めた。し
かし,上告人関係者は,調査理由の開示がなく,最初の臨場調査の際に上記税理士の代理権を侵害する発言がされたなどと主張して,調査に協力せず,被上告人の職員は,帳簿書類等の内容を確認することができなかった。
 (3) そこで,被上告人は,平成11年7月2日付けをもって,青色申告に係る帳簿書類の備付け,記録及び保存が法人税法(平成12年法律第97号による改正前のもの。以下同じ。)126条1項に定めるところに従って行われておらず,同法127条1項1号の規定に該当するとの理由で,上告人の本件事業年度以降の法人税に係る青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色取消処分」という。)をするとともに,上告人の本件各課税期間に係る消費税及び地方消費税について,消費税法(平成9年3月31日以前の課税期間については平成6年法律第109号による改正前のもの,平成9年4月1日以降の課税期間については平成12年法律第26号による改正前のもの。以下同じ。)30条1項の定める課税仕入れに係る消費税額の控除につき,同条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間については帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を保存しない場合に該当するとして,これをしないで税額を算出し,第1審判決別紙1の「更正処分等」欄記載のとおりの各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税賦課決定(以下,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。
 (4) その後,本件に関する上告人の異議申立てに係る調査において,上告人が本件各課税期間に係る帳簿等及び本件事業年度に係る法人税法126条1項に規定する帳簿書類を保管していることが確認されている。また,本件に関する審査請求が審理されている際にも,上告人が上記帳簿類等を保管していることが
確認されている。
 2 本件は,上告人が,被上告人に対し,① 本件青色取消処分,② 上告人の平成8年6月1日から同9年5月31日までの課税期間に係る消費税の更正処分のうち納付すべき税額147万3600円を超える部分及び地方消費税の更正処分並びにこれらに係る過少申告加算税の賦課決定,③ 上告人の平成9年6月1
日から同10年5月31日までの課税期間に係る消費税の更正処分のうち納付すべき税額346万4000円を超える部分及び地方消費税の更正処分のうち納付すべき税額73万3100円を超える部分並びにこれらに係る過少申告加算税の賦課決定の各取消しを請求する事案である。
 3 上告代理人内田光也の上告受理申立て理由第1,第5について
 事業者が消費税法30条1項の適用を受けるには,消費税法施行令(平成9年3月31日以前の課税期間については平成7年政令第341号による改正前のもの,平成9年4月1日以降の課税期間については平成12年政令第307号による改正前のもの)50条1項の定めるとおり,同法30条7項に規定する帳簿等を整
理し,これらを所定の期間及び場所において,同法62条に基づく国税庁,国税局又は税務署の職員(以下「税務職員」という。)による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要し,事業者がこれを行っていなかった場合には,同法30条7項により,事業者が災害その他やむを得ない
事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書),同条1項の規定は適用されないものというべきである(最高裁平成13年(行ヒ)第116号同16年12月16日第一小法廷判決・民集58巻9号登載予定,最高裁平成16年(行ヒ)第37号同年12月20日第二小法廷判決・裁判集民事215号登載予定参照)。
 前記事実関係によれば,上告人は,被上告人の職員から上告人に対する税務調査において適法に帳簿等の提示を求められ,これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず,帳簿等の提示を拒み続けたということができる。そうすると,上告人が,上記調査が行われた時点で帳簿等を保管していたとしても,同
法62条に基づく税務職員による帳簿等の検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて帳簿等を保存していたということはできず,本件は同法30条7項にいう帳簿等を保存しない場合に当たり,上告人に同項ただし書に該当する事情も認められないから,被上告人が上告人に対して同条1項の適用がないとしてした本件各更正処分等に違法はないというべきである。
 これと同旨の原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。
 4 上告代理人内田光也の上告受理申立て理由第6について
 (1) 法人税法が採用する申告納税制度が適正に機能するためには,納税義務者たる法人等が帳簿書類を備え付け,これにすべての取引を正確に記帳し,これを基礎として申告を行うことが必要である。そこで,同法は,法人等に対し,帳簿書類の備付け等を義務付け(同法150条の2第1項),申告の正確性を担保する手段として,税務職員に対し,法人の帳簿書類を検査する権限を付与し(同法153条),この検査を拒み,妨げ,若しくは忌避し,又はこの検査に関し偽りの記載をした帳簿書類を提示した者に対する罰則を定めている(同法162条2号及び3号)。そして,同法は,帳簿書類を基礎とした正確な申告を奨励する趣旨で,一
定の帳簿書類を備え付けている者に限って,税務署長の承認を受けて青色申告をすることを認め,上記の者に対し課税手続や税額計算等に関する各種の特典を与えている。青色申告の承認を受けている法人は,
同法150条の2第1項とは別に,同法126条1項によって帳簿書類の備付け等が義務付けられているが,その帳簿書類が上記の検査の対象となることは当然のことである。
 税務署長は,青色申告の承認を行うに当たって,青色申告の承認を申請した法人の帳簿書類の備付け,記録及び保存が大蔵省令で定めるところに従って行われていることを確認し(同法123条),青色申告の承認を受けている法人に対しても,帳簿書類について必要な指示をすることができ(同法126条2項),この指
示に従わなかった法人や,帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載した法人に対しては,青色申告の承認を取り消すことができるとされている(同法127条1項2号及び3号)。また,税務署長は,青色申告に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合には,その法人の帳簿書類を調査
し,その調査により当該課税標準又は欠損金額の計算に誤りがあると認められる場合に限り,更正をすることができるとされている(同法130条1項本文)。さらに,同法の委任を受けた法人税法施行規則(平成16年財務省令第27号による改正前のもの)59条1項は,青色申告の承認を受けている法人は,帳簿書類を7年間保存しなければならないと規定しているが,この保存期間は,国税通則法(平成16年法律第14号による改正前のもの)70条5項所定の更正の制限期間に符合するものである。これらの各規定は,すべて,税務職員が,青色申告の承認を受けた法人の帳簿書類を適時に検査することができるように,その備付け,記録及び保存がされるべきことを当然の前提としているものということができ,そのようにして上記検査の円滑な実施が確保されることは,青色申告制度の維持に不可欠なものということができる。
 (2) そうすると,法人税法126条1項は,青色申告の承認を受けた法人に対し,大蔵省令で定めるところにより,帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録すべきことはもとより,これらが行われていたとしても,さらに,税務職員が必要と判断したときにその帳簿書類を検査してその内容の真実性を確認することができるような態勢の下に,帳簿書類を保存しなければならないこととしているというべきであり,【要旨】[]法人が税務職員の同法153条の規定に基づく検査に適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて当該帳簿書類を保存していなかった場合は,同法126条1項の規定に違反し,同法127条1項1号に該当するものというべきである。[]
 (3) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,上告人は,被上告人の職員から上告人に対する税務調査において適法に帳簿書類の提示を求められ,これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず,帳簿書類の提示を拒み続けたということができる。そうすると,上告人は,上記調査が行われた時点で所定の帳簿書類を保管していたとしても,法人税法153条に基づく税務職員による帳簿書類の検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存することをしていなかったというべきであり,本件は同法127条1項1号に該当する事実がある場合に当たるから,被上告人が上告人に対してした本件青色取消処分に違法はないというべきである。
 これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉 德治 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/BB5C1EEBD7A316914925705200269139.pdf
という内容です。
この事案は、税理士関与の優良法人に対する無予告現況調査に対して関与税理士と税務調査担当者との間で意見の齟齬が生じ信頼関係を築けず、実際に帳簿等が存在していること自体は裁判所が認めているにもかかわらず、消費税の仕入税額控除、青色申告承認取消し自由の装用について全く同じ論理で課税庁の処分を認めているわけです。

この事案では、上告人である納税者が負担した消費税額をこの関与税理士が弁償し、これらに関して国家損害賠償請求訴訟も提起しています。
国賠訴訟自体においては、税理士は敗訴しますが、その判決の中でこの調査の異常性が浮かび上がってきており、裁判官もその事情を斟酌しています。

さらに、この事案の調査時おいてこの上告法人のグループ会社に関しても同様の処分が行われたのですが、こちらは簡易課税適用法人であったためその仕入税額控除否認処分は全部取消しとされています。
適用条文が異なるためです。

保存という用語は税法の中では一義的に解釈すべきですし、税額控除も税法用語としては特典という共通の解釈しかありえないのかということについては検討の余地があると考えます。

帳簿等の保存と消費税の納税義務の確定上の重要性に着目し、帳簿等の保存義務が実体法上の義務であるか、手続法上の義務でのいずれあたると解するかにかかわらず、帳簿等の保存(提示を含む)がなされない限りは、仕入れを裏付ける証拠を欠いており、仕入税額控除を受けられないことになる(水野・前掲書741頁)という見解もあります。この見解に対しては、消費税法30条7項を実体法上の義務規定と解するか、手続法上の義務規定と解するかについては、個人的には実体法上の義務規定と解すべきだと考えますが、仮に手続法上の義務規定であると解釈してもその位置づけ、判断基準が変わるものではないはずです。先の見解とは逆に、保存と提示は異なるものだという結論に立ち返るだけです。

続く
by nk24mdwst | 2008-01-29 11:29 | 租税法(日本)