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2008年 01月 11日 ( 1 )

Taxpayers' Bill Of Rights III-5

第三次納税者権利憲章の区切りを付けておきたいので、納税者権利宣言の最後のところを。
VII. Appeals and Judicial Review

If you disagree with us about the amount of your tax liability or certain collection actions, you have the right to ask the IRS Appeals Office to review your case. You may also ask a court to review your case.

Ⅶは、不服申立て及び訴訟についてですね。
課税処分ないし徴収手続に異議がある納税者は、IRSの一部門である不服審査部門に不服申立てができます。

独立性の問題に関して、日本の国税不服審判所は、閉鎖的だし独立性に問題があるのだけど、そうではないと当事者はいいたいようです。
IRSのAppealsの独立性の問題については、内部組織とされていますし、監督権限は、IRS長官が持っているので、その意味では独立組織では全くないわけです。1998年改革法制定後の混乱状態の中では、不服審査部門がどこに位置するかもはっきりしていなかったようですが、現在は、IRS内の独立した部局となっています。

いずれにしろ、税務問題については、現実はかなりの部分がここで解決されているのも事実ですし、どのように機能しているかきちんとした研究は、日本ではないようです。アメリカでの評価は、わからないということで留保、検討課題。
特に、これもIRS内で独立した組織として存在するChief Coucil とその下の法律部門とのかかわりがどうなのかというあたりを注視すべきなのでしょう。組織編成の仕方からいうと、不服審査部門にいるのはIRSキャリアであると考えられますから。

日本の場合は、青色申告者を除き、課税処分等を行った当該税務署長(国税局長)を相手にして、異議申立て、棄却された場合に国税不服審判所に審査請求という二重の訴願前置主義を採っています。

これに対し、アメリカ連邦税法においては、訴願前置主義をとっていませんから、不服申立てを経ずに直接、訴訟に持ち込むことが可能です。ということで、いきなり裁判所に訴訟提起してもいいよと。

合衆国租税裁判所、連邦請求裁判所、連邦地方裁判所の三つのうち、どれを選ぶかは納税者が自由に選択できます。

租税裁判所は、租税訴訟に特化していること、税額納付が判決が出るまで猶予されることといった特徴がありますが、どれが個々の納税者にとって有利なのかという選択は、非常に難しい問題であるようです。

同じ事案でも裁判所のどれを選ぶかによって勝ち負けが分かれる可能性は少なからずあるということです。租税専門性を持っているから納税者が有利な場合もあれば、地域性を理解してもらった方が有利な場合もあるでしょうし。

合衆国の租税訴訟制度全般についても検討が必要です。

なお、日本では、現在行政不服審査法の改正について検討されています。
国税関連の不服申立てに関しては、国税通則法が、原則として行政不服審査法の規定の適用除外であると定めています。

単純に制度の国際比較は学問的にはともかく現実論としては慎重になるべきですが、少なくとも、二重の訴願前置が必要なのかということは大きな問題としてとらえなければいけません。

それと、国税不服審判所の独立性の問題に関しては、建前として、独立した第三者機関であるべきという議論をしてもいいのですが非現実的でしょう。審判官の登用に関して、民間から積極的に行うということも簡単ではないようには思います。
ただし、昨年は、全国で数人の税理士が国税不服審判所の審判官に任用されました。審判官は国家公務員ですから、当然のこととして、副業は禁止、つまり、税理士はやめる必要があります。

最大の問題は審理の仕方でしょう。異議申立ては争点主義なのですが、審査請求になると争点主義的総額主義などというわけのわからない理屈を持ち出して、審判所独自の調査権限を機能させたりするのはどう考えてもおかしいと思いますが。
VIII. Relief From Certain Penalties

The IRS will waive penalties when allowed by law if you can show you acted reasonably and in good faith or relied on the incorrect advice of an IRS employee. We will waive interest that is the result of certain errors or delays caused by an IRS employee.

Ⅷは、一定の加算税等の免除についてです。
納税者の行為が公正かつ誠実であること、あるいは、IRS職員の誤指導を信じた結果であることを証明できれば、法の許す範囲において加算税は課さないといっています。さらに、IRS職員の誤った処理ないし処理の遅滞が原因であるときは、延滞税も免除すると。

このあたりの加算税関係のくだりは、一連のストック・オプション訴訟において、従来、一時所得とされていたものが、国税当局の見解変更により給与所得とする課税処分が行われる用になった事件を想起させます。

所得区分に係る問題に関しては藤山、鶴岡コートにおいて一時所得とする判決が出たものの、最終的には最高裁において給与所得該当性を認める判決が出ました。一方、一時所得で申告したものに対して給与所得として課税処分が行われることになり、それに伴い生じた加算税等については、従来の当局の取扱いをいきなり変えたということで、過少申告加算税を課さないとことする正当な理由があるとした最高裁判決が思い出されるわけです。

いわゆる、信義則ないし禁反言の法理は、日本では訴訟においては余り重視されていないのですが、上記は例外的事例です。

アメリカの連邦政府レベルにおけるThe Taxpayer Bill of Rights についてみてきましたが、同様の納税者の権利保障法制は、州政府あるいはそれ以下の地方政府レベルでも存在します。

例えば、州政府レベルでいうとミズーリ州のMissouri Taxpayer Bill Of Rights は、
The purpose of this Bill of Rights is to inform you, the Missouri taxpayer, of your rights under Missouri laws.
Missouri statutes include strong incentives for voluntary tax compliance, but at the same time, provide taxpayers protection against inappropriate tax collection efforts. The General Assembly constructed these laws to promote fairness,confidentiality, and consistency in application.
http://dor.mo.gov/tax/misc/forms/3097.pdf
で確認できます。
所得課税だけではないことに注意ですね。

州の下の市レベルのものとしてニュー・ヨーク市のThe NYC Taxpayer Bill of Rights は、
Respecting your rights is as important as collecting your taxes. Since a fair and just tax system is the cornerstone of good government, we are working hard to earn your confidence in the system's integrity, fairness, and efficiency.
The NYC Department of Finance ("Finance") strives to protect the rights of each taxpayer:
http://www.nyc.gov/html/dof/html/about/about_rights.shtml
で確認できます。

他の国の例としてカナダでは、
TAXPAYER BILL OF RIGHTS(CHARTE DES DROITS DU CONTRIBUABLE)
1. You have the right to receive entitlements and to pay no more and no less than what is required by law.
http://www.cra-arc.gc.ca/E/pub/tg/rc4417/rc4417-e.pdf
という形で出されています。
フランス語があるところに注意でしょうか。

オーストラリアでは、the Taxpayers’ Charterと呼ばれています。
What is the Taxpayers’ Charter?
The Taxpayers’ Charter sets out the way we conduct ourselves when dealing with you. It will help you understand:
* your rights as a taxpayer under the law
* the service and other standards you can expect from us
* your important taxation obligations, and
* what you can do if you’re dissatisfied with our decisions, actions or service, or you want to make a complaint.
http://www.ato.gov.au/corporate/content.asp?doc=/content/33822.htm
上記のページにアクセスすると詳細な情報が入手できます。
オーストラリアの特徴としては権利と義務を並べているということでしょうか。
権利と義務を平等に扱うというのは当然のようにも見えますが、納税者と課税庁が持っている力の大きさが桁違いに違うということを前提にすると違うものが見えてくるはずです。
by nk24mdwst | 2008-01-11 16:06 | 租税法(アメリカ)