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Globalization

包括的所論得税は、第二次大戦後の世界経済の成長がオイル・ショックにより終焉を迎えたとき、再考の必要に迫られペックマンらによる一連の検討がなされました。

さらなるターニング・ポイントは、1989年のベルリンの壁崩壊に象徴される東西冷戦の終結なのであったと考えられます。これにより、市場主義経済は世界のすみずみまで行きわたることとなったからです。

このことは、資本の国際化(無国籍化)がさらに拡大しただけではなく、世界の労働市場が倍になったという本質なったという意味でもあるわけです。この労働市場の国際化は、当初未熟練労働 の分野で顕著であったのですが、近年は熟練労働者、あるいは、専門職従事者をも含めて、最も効率よく低賃金でえられる労働の提供を求めて。資本の論理により世界中の賃金所得者が競わされる状況になったということができます。

かつて、高率の所得税率が有能な人材の国外流出を招く としていたスウェーデンにおいて、資本の流出を恐れるが故 の二元的所得税の導入ということは、一種象徴的な意味を持つと感じられます。

すなわち、冷戦の終結により、スウェーデン国内の大企業は高い社会保障負担や所得税負担を伴う国内の労働者(熟練、非熟練を問わない)から、東欧諸国におけるより低賃金労働者(熟練度、専門性を有する)に雇用のシフトを行っているという背景があると考えられるからです。

西欧諸国が第二次大戦後達成した福祉国家体制(それぞれの国によって程度の違いはありますが)は、政治的意味、経済的意味双方から冷戦体制がもたらしたものということができるのかもしれません。冷戦という一種の虚構は、壮大なケインズ政策であったというべきでしょう。

冷戦終結によるグローバライゼーションは、21世紀初頭の世界に19世紀末と同様の裸の資本主義を現出させることになったのです。それは、二つの側面を持つことになります。

一つは、先進工業諸国内における所得の再分配以前に、先進工業諸国内における賃金所得者の所得が旧ソ連圏や東南アジア諸国の賃金所得者に移転しつつあるということです。
第二は、国際的な労働市場を縦横に利用して利益をあげる無国籍化した大企業(ファンドに名を借りた匿名の少数個人群 )による国際的租税回避行為です。無国籍化した大企業は、各国政府に対して有形無形の圧力をかけることができるのです。

このような状況を考えたとき、一国内の所得の再分配(当然に雇用の確保が前提となりますが)と国際的な所得の再分配の問題(貧しい国の国民にとっては、その国内における所得の再分配以前に所得を得られることだけで充分でしょう。)をどう解決するかが、福祉国家体制に課せられた命題だと考えます。

課税最低限の引き下げ、負の所得税の導入可能性と包括的所得税理論との整合性はどこかに見出せるのかという所得税に関する本質的議論を抜きにして、金融所得の一体課税という異形の二元的所得税もどきの導入をわが国は行おうとしているようです。

日本の所得税は、多数の分離課税所得があるので実質的には、分類所得税とほとんど同じであると考えるべきでしょう。
by nk24mdwst | 2007-12-14 22:07 | 租税論


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