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comparatible aproach

各国の税制比較において、税率だけの比較は、無意味ですね。
欧州諸国の付加価値税率と日本の消費税率を20%だ、5%だというのは簡単で、日本には、まだ15%くらいあげる余地があるというのは子供だましです。

食料品等の生活必需品に関して軽減税率が存在することがありますし、そもそも、課税ベース自体の比較が厳密に行われていなければ無意味でしょう。
有意のものがあるとすれば、GDP比に対する付加価値税収割合、ないし、税収全体に占める付加価値税率の割合の比較でしかないと考えます。

イギリスでは、CD、DVDにはVATが課税されていますが、書籍には課税されてませんからね。
VAT導入前に仕入れに対して課税する仕入税が存在したイギリスでさえこの状態です。というか、イギリスは、例外だらけの制度ですけれど。

法人税率がアジア諸国の平均に比べて日本は高い。世界的に見て日本と同水準はアメリカだけであるという議論についてですが、これも、課税ベースを抜きにして税率だけの議論は意味がないです。
それから、財務省の資料に出てくるアメリカの場合は、例として通常カリフォルニア州とかニューヨーク州の州法人所得税率を加味しています。
これは、アメリカの多くの大企業法人がデラウェア州法人だということを考えないのですね。デラウェア州には、州法人所得税がありませんから。

それから、アメリカの場合も、非常に複雑多岐にわたる税額控除その他の法人所得課税の特例が存在するので単純な比較は、余り意味がないです。それから、この法人所得課税における税額控除等の特例は州レベルにおいても存在することも事実ですし。

番号制度による所得把握を強めれば強めるほど現金取引によるアングラ経済が大きくなる傾向があるように思われます。囚人国家的なスウェーデンとオーストラリアでの個人的な経験からの推測なのですが。
GDPから推計される現金流通量と実際の通貨流通量との乖離があれば、それがアンダーグラウンドだということになります。
欧州でアンダーグラウンドのマネーが一番多いのは、イタリアなんかではなくスウェーデンだという研究が存在します。日本とアメリカは、アングラ・マネーの少ない方に属します。

という辺りは、有体物の売買ないし役務提供取引におけるアングラ・マネーの話です。アングラ役務提供取引というのは、要するに課税されないアルバイトを念頭においています。

これに対し、証券市場等における巨額のいわゆる「マネー」取引は、表に出るので、香港あたりのペーパー・カンパニー経由でスイスその他のタックス・ヘイブンに隠すということなんでしょうね。

恐らく、現在の税務執行上の最大の問題は、投機による利益に対する課税が上手く行えないことでしょう。これについては、1990年代から21世紀の初めにかけて、課税自体を諦めるような法制、執行が行われてきたように思います。
そして、失われた税源の代替となるのは、社会的文化的制約によって国内にとどまらざるを得ない普通の人たちの労働に対する所得課税の強化でしかなかったように思えます。あるいは、国内消費に課税する、つまり付加価値税課税の強化ということだったように思いますね。

日本でも見ていると税制について一番詳しいのは、財務省主税局というよりは、経団連であったりして。
by nk24mdwst | 2010-05-13 19:18 | 租税法(日本)


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