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消費税の仕入税額控除否認をめぐる租税訴訟において、税務調査時における納税者の帳簿等の提示が無かった場合が、帳簿等の保存が無かった場合に条件に該当するという課税処分は、平成16年12月から17年3月にかけての三つの最高裁判例で決着がついたことになっています。
例外的に、平成16年12月20日最高裁判決においては、当時の滝井繁雄裁判官の反対意見がついています。これは、基本的には、大阪地裁平成10年8月10日判決と同じ考え方に立っているものだと考えています。帳簿等の後出しを認めた唯一の判決です。
この大阪地裁判決は、原告鑑定書の考え方を受け入れているいます。この鑑定書を当時書かれたのは、三木義一立命館大学教授(当時)だったと記憶しています。

以前、このブログで、青色申告取消し処分においては、帳簿の不提示が帳簿の保存が無いことに該当することを認めながら、同様の文言を用いている消費税において違う論理を展開するのは矛盾していると批判しています。

この考え方の分かれ目は、青色申告取消し処分は、手続法上の問題であるのに対し、消費税における課税仕入の否認は、実体法上の問題であるので、ことなるというのですね。
この考え方が矛盾すると私は、考えていますが、少なくともどのような背景を持つのかということについて、少し解ったような気がするのでメモします。

個別の税法、個別の事案の問題ではなく、税法における納税者と課税処分庁との法律関係について対等であるかどうかという論点があります。

三木先生がかつて研究されたドイツのヘンゼル的思考によれば、租税実体法関係においては対等であるが、租税手続法関係は権力的関係として把握するというのですね。
このとらえ方がいいのかどうか、別にして、少し例をあげます。

国税通則法15条が課税要件充足を納税義務の成立を定めているので、対等な権利関係を基礎とする法律構成を持っていると考えられます。
他方、租税手続法関係では、申告納税方式を明らかにしていますが(国税通則法16条)、自力執行権を広く認めた法規定が整備されています。具体的には、不利益な課税処分に一般的な理由付記の義務を課さず、青色申告者の特典としていること、更正の請求の除斥期間と課税処分の除斥期間の違い、加算税等の制裁による課税強制などがあります。

青色申告承認取消し処分を例に採れば、納税者が一定の義務を負うことを理解して自分で制度を選択した結果としての特典が与えられているということですね。
だから、その特典を取消す課税処分についてのハードルは低くなるということですね。

この論理でいうと、課税要件、つまり実体法関係である仕入税額控除否認において同じハードルでよいわけではないという理屈なのですね。

この理屈が理解できなかったのは、私の勉強不足でした。

どちらも同じように、正しい帳簿等が保存されているのに不提示という理由付けをなされて、青色申告承認取消し処分がなされることも、仕入税額控除の否認をすることもなされるべきではないと考えます。
ここは、ですから、滝井反対意見とは違います。

しかし、現在の法規定、法解釈では、そのあたりが限界なのだということもわかってきました。

そこで、結局、手続法における権利関係を対等にするということを行わなければ、整合的な結論が出るような論理は組み立てられないのですね。
手続豊穣の権利関係を対等にするというのは、手続規定を明確化し、きちん整備しろという話です。納税者の権利保障論そのものですね。
権利憲章と権利章典という名前の文書ができるかどうかが問題なのではなく、まだ、十分に整備されているとはいえない手続規定をきちんと整備するべきだと。具体的には、国税通則法の改正を手始めにするということなのでしょう。
by nk24mdwst | 2010-05-10 11:07 | 租税法(日本)


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