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taxation of the obama administration

こちらの天気は、快晴ですね。

Don Nix を聞きながら思ったのは、Dan Penn とかEddie Hinton のことです。
追っかけなので、ダン・ペンとかエディー・ヒントンは、ソロだけではなく、彼らが関ったものを少なからず集めたのです。
ただ、失敗したのは、看板のアーティストごとに並べてあることですね。

全部PCに取り込んで、プレイリストにして聞き比べるというやり方をするべきかなと。それより、楽なのは、彼らが中心となってやっていた頃のサザン・ソウルのコンピを聞くというのが正解かな?

民主党税制改正大綱が出たのです。色々考えているのですが、とにかく、アメリカはどうだったかということで、2月の改正とグリーンブックをまとめたやつを貼り付けておくことにします。

文中、意見に渡る部分は、すべて私見ですし、勘違い、誤り等も、すべて私の責任です。

オバマ政権の税制改革

Ⅰ.はじめに

 2009年1月20日にアメリカ合衆国大統領に就任したバラク・オバマは、2009年2月17日にthe American Recovery and Reinvestment Act of 2009(2009 Recovery Act)署名し、同法が成立した。この法律により、7,870億ドル(78.7兆円)の財政出動が行われることになったが、そのうちには、約3,000億ドル(30兆円)規模の減税措置が含まれている。
 同法のうち、租税に関る部分は、the American Recovery and Reinvestment Tax Act of 2009 と呼ばれる。ここでは、新しい租税軽課措置が設けられるとともに、既存の諸控除、税額控除等に関しては、大きな拡大が行われている。内国歳入法典に300ヶ所以上の変更が加えられている。
*2009年2月13日に、法案提出後、4週を経ずして下院、上院を通過した。大統領選挙で勝利してから作業チームを設けていたとしても、アメリカにおける法律立案能力、議会審議、政治的調整その他を勘案しても極めて迅速な対応であったと考えられる。法律立案機能が霞ヶ関に集中している日本とは大きく異なることに留意しなければならない。
*表紙を含めて407頁の同法のうち、約100頁が税法関連のものである。
   
Ⅱ.連邦税制改革

1.the American Recovery and Reinvestment Tax Act of 2009

(1)個人に対するインセンティヴ

①Making Work Pay Creditの創設
勤労所得の6.2%と400ドル(合算申告者800ドル)のいずれか少ない額を税額控除する。2009年、2010年において適用される。修正調整所得金額(modified adjusted gross income, MAGI)が75,000ドル(合算申告者150,000ドル)を超える部分については、2%の税額控除となる。
Making Work Pay Credit をどう訳すかという点については、雇用を創出しそれによってもたらせる賃金を対象とする税額控除ということであるので、労賃創出税額控除というあたりであろうか。
*立法は、2月17日であり、それ以後に適用されるものと遡及効を認めるものとがこの立法の中には、含まれるが、この税額控除は1月1日に遡るので、遡及効を認めているAdjusted Gross Income(AGI、調整所得金額)とは、総収入金額から必要経費、実額控除される医療費、借入金利息等を控除後の金額(概算控除適用者は、控除後の金額)をいい、これから人的控除を控除後の金額に税率を適用して税額控除等を控除して年税額が計算されることになる。キャピタル・ゲインは、ここには含まれず、別に分離課税される。ことになる。
*修正調整所得金額は、調整所得金額から一定の国外源泉所得を除いたものをいう。
税額0でも、還付あり。要件を満たすものについては、源泉徴収時に適用を受けることと、確定申告により一括還付の選択ができる。6.2%というのは、FICA(the Federal Insurance Contribution Act) 雇用者源泉負担分に相当している。
*FICAとは、老人、障害者、寡婦等を給付対象とする社会保障税をいう。
自営業者(self-employee)が受ける所定の勤労所得についても一定の限度について、適用可能とされる。また、社会保障番号を有さない個人申告者については、適用されない。
後述のFirst Time Home Buyer Tax Credit のところで触れることになるが、扶養控除の対象者のように所得の無いものに対する給付付き税額控除も存在したということでもある。

②$250 Economic Recovery Payment
 2009年に限り、社会保障受給者、鉄道退職者、傷痍軍人等、退職公務員等の定額所得者が対象となり、250ドルの給付が受けられる。他に勤労所得がある場合は、①の税額控除と調整される。
 この制度は、Making Work Pay Creditの対象が、働いた所得を有する納税者なので、年金所得者等は対象外となるということである。

③AMT(Alternative Minimum Tax)の修正
 AMTを計算する際の免税額を拡大。
合算申告者、寡婦(夫)69,950ドル→70,950ドル、単独申告46,200ドル→46,700ドル
2,600万人の中所得レベルの納税者に影響を与え、概算700億ドルの減税になるとされる。
* Alternative Minimum Taxというのは、個人、法人を問わず、高額所得を有するもの
種々の方法で金額の支出を所得計算上控除でき、結果的に所得税負担を軽減することが可能な制度となっているので、それを調整するためのものである。
  現行所得課税において控除可能とされている項目について、一定の控除限度額を設け、それに、28%の税率をかけた税額を求め、それと実際に計算された税額との差額を加算するという考え方の制度である。この制度の適用対象者は、個人だけではなく法人も含まれる。
 本来、高額所得個人納税者、法人納税者に対する課税の公平性を保つことを目的としている制度であるが、ブッシュ政権下において、高額所得者に有利な改正が行われたので、中所得層に対して課税負担が大きくなる矛盾した制度となっている。この欠陥に対する不満が大きかったので、それを手当てするものとされている。

④First-Time Homebuyer Tax Credit
 2008年4月9日以後、2008年12月31日までに、過去3年間に自己所有の住宅を有しないもので初めて住宅を購入したものは、最大7,500ドルの税額控除を受けることができる。
これを延長し、2009年1月1日から11月30日までの住宅購入者に対して、最大8,000ドル(夫婦個別申告の場合は、それぞれ4,000ドル)の税額控除を認める。36ヶ月居住後は、税額控除返還義務は生じない。
AGIが75,000ドル(合算申告150,000ドル)を超えた場合は、漸減する。
*ブッシュ政権時代に導入されたものを拡張、期限を延長したものである。本来、11月末で期限が切れるとされていた。その結果、アメリカの不動産市場においては、8~10月にかけて前年を上回る住宅取得ブームが起きたが、その一方、10月の新規住宅着工件数の大幅な減少が起きた。
この制度の景気刺激効果に対する懐疑的見解、さらに、本来の不動産史上における価格形成をゆがめるものであるという批判があるが、景気回復の明らかな兆しが無い中で、11月5日に2010年4月30日までの期限延長が行われた。さらに、居住用不動産買換えをした個人に対して新たに6,000ドルの税額控除が新設された。
制度の透明性について、財務省首席税務監察官(Treasury Inspector General of Taxation:TIGTA) の9月の報告書が2008年分の個人所得税申告におけるサンプリング調査を行った結果を公表しているが、相当数の適用誤り及び悪質な脱税事案が見られると警告している。例えば、3歳児が住宅を購入した事例等がしめされている。
この幼児が住宅を取得したとする例は、名義借りといえばそれまでであるが、本来申告すべき所得が無いものであっても、つまり扶養控除の対象者であっても適用が受けられるものであったということである。
これに対して、11月の新法においては、16歳以下のもの及び扶養控除の対象者については適用除外としている。

⑤New Car Deduction
概算控除を用いない場合は、州税等の地方税、外国税を控除できる。不動産等に係る州等の地方税、外国税、動産等に係る州税等、所得に係る州税等、外国税等。なお、2001年改正法により、2009年までは、州及び他の地方政府による売上税を上限に達するまで控除できる。
今回の改正により、米国製、輸入を問わず、新車を購入した際に支払った売上税、登録免許税等を控除できる。新車購入価格のうち、49,500ドルが上限(1台につき)、AGIが125,000ドル(合算250,000ドル)に達するまでに漸減する。
概算控除適用者も適用できる。また、新品であれば車の種類を問わない(8,500ポンド以上の車体重量が要件)。二輪車、モーター・ホームの購入であっても適用ができる。
ただし、2009年2月17日以後の購入のものに限る。つまり、遡及適用はない。

⑥Education Credit
 2009、2010年のみにおいて有効であったHope Education Credit は、1,800から2,500ドル(4年間)を上限として、所定の学費の支出が対象であった。80,000ドル(合算160,000ドル)の所得に達するとゼロに漸減した。また、適用対象期間は、入学後2年間であり、再入学の場合は適用除外であった。
 American Opportunity Tax Credit と改称され、最大2,500ドル/年、40%は、還付可能となった。
例えば、支出4,000ドルの場合は、2,000ドル×100%+2,000ドル×25%=2,500ドルの税額控除を受けることができる。

⑦Child Tax Credit
 暦年12月末現在17歳未満の子、一人に対して1,000ドルの税額控除(2009、2010年)。2006年法では、2011年から500ドルに削減予定だった。
 Child Tax Credit の額が控除前の税額を越える場合は、還付されることになるが、還付可能額が拡大された。2008年は、勤労所得8,500ドル(2007年は、110,000ドル)を超える部分の15%が限度だったものが、3,000ドルを超える部分の15%が限度とされた。

⑧Earned Income Tax Credit
 二人以上の子供のいる納税者につき、勤労所得12,570ドルの40%の税額控除を三人以上の子供のいる納税者に関して、45%に引き上げた。所得に応じて漸減するEITCは、1,880ドルに引き上げられた。マリッジ・ペナルティを減らす目的がある。
*マリッジ・ペナルティというのは、夫婦共働きの場合に、夫婦が個別申告と合算申告のいずれを選択した場合においても、条件によっては、片稼ぎ夫婦で同じ年収のものよりも税額負担が大きくなる場合があったことを、ここではいう。それを解消する手当てを行うということである。

⑨ Unemployment Compensation
 連邦所得税では、失業手当も課税対象とされているが、2009年は、2,400ドルが非課税とされた。
*オバマ大統領の受賞したノーベル賞の賞金も課税対象。全額を連邦に寄付することも可能であるが、寄付金を所得控除する場合の制限があり、寄付はできない。国外源泉所得であることが問題となる。

 ⑩ Transit Benefits Parity
  通勤用の定期券、駐車料等のフリンジ・ベネフィットの非課税枠が120ドル/月から、230ドル/月に引き上げられた。
*医療保険の雇用者負担分課税論が浮上してきている。医療保険制度改革の財源として。
  この場合、アメリカにおける雇用者が負担する医療保険は、日本のように労使折半ではなく、全額雇用者負担であることに留意。さらに、GMの破綻原因のひとつであったことからもわかるように、雇用者(企業)は、現在の従業員だけではなく、資格を充たす退職者の医療保険に関しても全額負担していることにも留意が必要である。 
*この部分は、医療制度改革法案が形になる前に書いたもので、医療保険制度改革とその財源については、別個に検討する必要がある。

 ⑪ Qualified Tuition Programs
  大学等へ進学(再入学)した納税者が無償貸与を受けるPCに対する非課税措置。

  個人に対する租税制度上のインセンティヴ、減税措置の特徴は、給付付き税額控除が多く見られることだけではく、一種の個人に対する補助金(手当て)として租税制度を用いて直接的な給付を行う点に特徴があると考えられる。さらに、新車購入控除のように従来の常識では考えられないような、控除を導入していることにも留意。自動車業界救済意識が明確にされていた。

(2)ビジネス・インセンティヴ

 ① Bonus Depreciation
  資産取得初年度において、50%の加速償却を認める。2009年1月1日に取得した資産に対しても適用されるので遡及効を認めていることになる。

 ② NOL Carryback(NOL=Net Operating Loss)
  通常の事業においては、2年間の損失の繰戻還付が可能。平均年商1,500万ドル未満の小規模事業に関して、2008年において生じた損失がある場合、最大5年間の繰戻還付を認める。3年、4年、5年については、納税者が選択できる。
* 2009年2月に成立した法律において、2008年に生じた損失の繰戻還付を認めるということは、これも遡及効を認めていることにナル。また、確定申告期限は、4月15日なので、この法律成立前に既に確定申告書を提出している納税者に関しては、先に提出した申告書を取り下げ、新たに、この制度を利用して繰戻還付を求める申告書を提出することができた。

 ③ Estimated Tax Payments
  所得の50%以上が小規模事業から得たものである個人は、四半期ごとの予定納税を前年税額の90%を基礎として計算する。日本における、予定納税と同様の制度である。なお、小規模事業とは、平均雇用者500人以下の事業をいうので、零細事業者にとどまっていないことに留意が必要か。

 ④ Work Opportunity Tax Credit
  対象となる新規雇用者の範囲が拡大された。新たに職を失った人、職に就いたことの無い若者も対象とされた。もともと、障害者等の雇用促進目的であった。
  新規雇用者に対して支払う給与の一定割合を税額控除できる。
  新規採用された個人も同様に個人の所得税申告において一定額の税額控除ができる。

 ⑤ Small Business Stock
  資産5,000万ドル以下の企業の株式で2009年2月17日から2010年12月31日までに取得したものを5年以上保有して売却した場合は、売却益の75%は課税されない。
*中小企業に対する投資家の投資インセンティヴとして設けられた。

(3)エネルギー・インセンティヴ

 ① 電気自動車
  10%の税額控除を認める。対象となるのは、ソケットから電気を充電する自動車。
 ② 自家用発電設備等
  非事業用の太陽光、風力、地熱等を利用したエネルギー施設に対しての税額控除の拡大。500ドルの上限の撤廃。
 ③ その他石油以外によるエネルギー関連施設に対する税制優遇措置
 *ソケットから充電して走れる自動車は、まだ市販されてないのだが。

続く
by nk24mdwst | 2009-12-24 11:22 | 租税法(アメリカ)


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