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CHICAGO POEMS

今日は、Carl Sandberg の CHICAGO POEMS からです。

                CHICAGO

   HOG Butcher for the World,
   Tool Maker, Stacker of Wheat,
   Player with Railroads and the Nation's Freight Handler;
   Stormy, husky, brawling,
   City of the Big Shoulders:

They tell me you are wicked and I believe them, for I
   have seen your painted women under the gas lamps
   luring the farm boys.
And they tell me you are crooked and I answer: Yes, it
   is true I have seen the gunman kill and go free to
   kill again.
And they tell me you are brutal and my reply is: On the
   faces of women and children I have seen the marks
   of wanton hunger.
And having answered so I turn once more to those who
   sneer at this my city, and I give them back the sneer
   and say to them:
Come and show me another city with lifted head singing
   so proud to be alive and coarse and strong and cunning.
Flinging magnetic curses amid the toil of piling job on
   job, here is a tall bold slugger set vivid against the
   little soft cities;

Fierce as a dog with tongue lapping for action, cunning
   as a savage pitted against the wilderness,
   Bareheaded,
   Shoveling,
   Wrecking,
   Planning,
   Building, breaking, rebuilding,
Under the smoke, dust all over his mouth, laughing with
   white teeth,
Under the terrible burden of destiny laughing as a young
   man laughs,
Laughing even as an ignorant fighter laughs who has
   never lost a battle,
Bragging and laughing that under his wrist is the pulse.
   and under his ribs the heart of the people,
   Laughing!
Laughing the stormy, husky, brawling laughter of
   Youth, half-naked, sweating, proud to be Hog
   Butcher, Tool Maker, Stacker of Wheat, Player with
   Railroads and Freight Handler to the Nation
.

シカゴといっても、バンドじゃなくて文字通りシカゴの町の話です。
1916年にこのシカゴを収めたシカゴ・ポエムズは出版されていますから、シカゴ・ブルースより一世代以上前のシカゴの有様を語っています。

サンドバーグは、米西戦争に従軍、ウェスト・ポイントを直ぐに辞め、カレッジへも行ってますが、学位はとっていません。
平易な文体が特徴ですね。労働者の町というか働く町としてのシカゴの様子をヴィヴィッドに描写しています。

経済学ではシカゴ大学というのは保守派の牙城ですが、サンドバーグは社会主義に傾倒していました。

シカゴ・ブルース誕生のはるか前、the Roaring Twenties になだれ込もうとしているシカゴです。

大恐慌、その後の第二次大戦参戦による軍需景気により、シカゴにブルースが根付くようになったと思っています。
働き盛りの白人男性の多くが徴兵により欧州戦線や太平洋戦線に送り込まれた一方、軍需産業その他の産業において大規模な人手不足が発生し、その穴埋めは、女性の職場進出ないし南部から移り住んできたアフロ・アメリカンによって行われたわけですね。

Muddy Waters がインタヴューで当時のシカゴのブラック・コミュニティでは、ハウス・パーティが毎日のように行われ、あるいは、バーなどが盛況でブルース・マンは引っ張りだこだったと語っています。

HOG Butcher for the World という冒頭が当時としてはかなり衝撃的だったかなと思います。東海岸のエスタブリッシュメントの嗜みとしてアメリカの詩というのは存在していたような時代だったわけですから。

Youth, half-naked, sweating, proud to be Hog
   Butcher, Tool Maker, Stacker of Wheat, Player with
   Railroads and Freight Handler to the Nation

ここで描写されているのは、シカゴに多いドイツ、ポーランド、イタリア系移民の若い町ですね。
鉄道の終結地であるわけですが、Illinois Central Railroad で、Missippi, Arkansas からアフリカン・アメリカンがやってくるわけです。

Illinois Central じゃなくて、突然ですがPoco に加わるPaul Cotton のバンド Illinois Speed Press は、ロスというかハリウッドの音がします。シカゴ・ブルース風の曲をやってはおりますが。
さて、このギターは誰でしょう。

しかし、20世紀初頭の製造業が勃興し、中西部の穀物集積地として多くの労働者、その多くは当然、欧州からの移民ですが、がアメリカン・ドリームを夢見て汗を流して働く若い国アメリカの姿が眼前に現れるような詩です。

情報が全てという現代アメリカとはかけ離れていますが、アメリカにもこういう時代があったのです。

日経の経済教室欄のコラムで、情報社会と経済について東大教授が書いています。曰く、人間は情報を利用するものなれど、肉体という、脳といいかえてもいいのですが、その束縛からまだ解き放たれていない。

あまりに単純で馬鹿げた論議です。情報と生体=物質論は生物の誕生と同時に起きていて人類が誕生してからの話ではないのですよ。

逆に、Virus の本質、完成度の高さを知るべきです。ウィルスは、遺伝子情報そのものだけを有する生命体ですが、環境によって生命と物質の境界を行き来するわけですから。
ウィルスの本質は、遺伝子情報そのものであり、環境により生物となったり物質となったりするという意味です。
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by nk24mdwst | 2008-01-31 17:00 | Poetry

Consumption Tax in Japan Ⅳ

続き

③ 青色申告の保存要件との相違
前述の最高裁平成16年12月20日判決においては、滝井裁判官の反対意見が付されています。同反対意見の趣旨は、青色申告承認取消処分は特典の問題であるのに対し、「仕入税額控除は、消費税の制度の骨格をなすものであって、消費税額を算定する上での実体上の課税要件にも匹敵する本質的な要素とみるべきものである」として、安易な消費税における仕入税額控除否認は、付加価値税としての消費税の本質を否定することになるというものです。
青色申告承認取消処分と仕入税額控除否認の法的重要性の違いを強調している点に注目すべきだとは考えます。学者や実務家の中では、この滝井反対意見に対して高い評価をする人も少なからずいるようです。
しかし、青色申告承認取消処分は手続規定であり、その手続規定上においては提示がなかったので帳簿等の保存がなかったとしてその処分を滝井裁判官は認めています。消費税法30条7項の規定は、課税要件規定であるから帳簿等の提示と保存に関しては、違う判断がなされるべきだというのはかえって自己撞着に陥る議論だと個人的には考えています。
 結果的には、最高裁平成17年3月10日判決で滝井反対意見が全く無視される結果となっただけです。

Ⅴ.簡易課税制度

(1) 制度の概要

基準期間の課税売上高5,000万円未満(消費税施行時は5億円未満でしたが、平成3年改正により4億円未満、平成6年改正により2億円未満と段階的に引き下げられ、平成15年改正により、現行の制度となっています。)の課税事業者の特例として簡易課税制度があります。
簡易課税制度とは、課税売上げに一定のみなし仕入れ率を乗じて控除対象仕入れ税額を計算するものです。

小規模事業者の事務負担に配慮するという目的で設けられている特例で、適用課税事業者は、課税売上げの事業区分ごとに集計するだけでよいことになっています。

また、みなし仕入れ率(消費税施行時は、第一種事業(卸売業)と第二種事業でしたが、平成3年改正により第三種事業と第四種事業が設けられ、平成6年改正により現在にいたっています。)は、第一種事業(卸売業)が90%、第二種事業(小売業)が80%、第三種事業(農林業、製造業等)が70%、第4種事業(他の事業以外のもの)が60%、第5種事業(不動産・運輸・サービス業等)が50%です。 

(2)簡易課税制度の法律的問題点

簡易課税におけるみなし仕入れ率は消費税法30条7項において60%と規定されていますが、卸売業その他の業種に係るみなし仕入れ率については、すべて政令に委任されています(消令57②)。また、第一種事業、第二種事業の定義(消令57⑥)、第三種事業及び第五種事業の範囲(消令57⑤)については、政令で規定されています。
納付税額の算出に直接影響を及ぼす重要な数値が行政府の裁量に任されているという点で租税法律主義に反する〔湖東京至『消費税法の研究』(信山社、1999年)15頁〕
という指摘がありますが、この指摘について、検討をする必要があると考えます。。

さらに、政令において示された各種事業の範囲の解釈、取扱いについては、通達において示されているだけです(消基通13-2-2~13-3-10)。特に、各種事業の範囲について日本標準産業分類によるとしてされています(消基通13-2-4)。

国会における消費税法の審議、消費税導入の際、上記の各種事業区分の方法や日本標準産業分類を用いることについての議論はなされていないのです。
政令委任と租税法律主義の問題以上に大きな問題点であるというべきです。

この点に関し、
「日本標準産業分類は、税法における産業の分類のために制定されたものではないとし、租税法律主義の観点からすれば、租税賦課の根拠となるべき租税法中の用語は、他の法令によって定義が与えられていない場合には、原則として、日本語の通常の用語例による意味内容が与えられるべきである。」(名古屋地裁平成17年6月29日判決)
とした判例があります。

上記の判決は、
「日本標準産業分類においてサービス業に分類されている歯科技工所におけるみなし仕入れ率の適用に関しては、その業務の実態から製造業である。」
と判断して、納税者の主張を認め、
「税法ではない日本産業分類による課税は租税法律主義に反すると考えられる。」
としましたが、名古屋高裁において納税者が逆転敗訴しました。

名古屋高裁の判示は、決して説得力のあるものとは思えません。単に、行政の裁量権に追認し、問題の本質を看過しているに過ぎないと感じます。


(3)簡易課税における実務上の問題点

簡易課税制度における事前申請手続きの厳格さについては、消費税の間接税的性格からある程度やむをえないものともいえます。しかし、これらの届出手続きにかかる税理士損害賠償請求事案が多いのは事実です。

また、前記の名古屋地裁における判決も指摘していますが、日本標準産業分類自体が経済の実態に必ずしも即したものではないことも事実です。さらに、納税者の個別事情等を勘案すると決して実務的に簡易といい得る制度とはいえないでしょう。

なお、簡易課税を選択適用できる課税事業者は、基準期間の課税売上高が、5000万円以下のものに限られています。改正前は、2億円以下だったのですが、この基準が高すぎ、事業者に益税が生じているという批判や、諸外国の同様の制度に比べて、適用基準が高すぎるという指摘がありました。
しかし、日本と同様に付加価値税導入において遅れた国であるオーストラリアは、邦貨換算すると2億円程度以下の事業者について簡易課税制度を用いることを認めています。

オーストラリアのGSTに関しては、興味深い制度設計が見られ研究の余地が少なくないと考えています。

Ⅵ.更正の理由附記と推計課税

(1)更正の理由附記

帳簿記載を義務付ける青色申告の特典としての青色申告者に対する更正の理由附記規定があります。それに対し、消費税法においても帳簿等の記帳が求められていることは同様なのですが、更正の理由附記の規定は設けられていません。

更正の理由附記が記帳義務を負う納税者の権利として位置づけられるのであれば、消費税の場合でも更正という行政処分をする限り理由附記をするのは当然(山本・前掲書386頁)
という指摘はそのとおりだと考えます。
また、
青色申告の理由附記を確認規定とし、適正手続の要請からの理由附記の必要性(北野弘久『税法学原論 第五版』(青林書院、2003年)272頁)
を説く考え方あります。

更正の理由附記に関しては、青色申告者の特典規定ではなく、納税者の権利擁護のための手続保証原則として検討すべきだと考えます。

(2)推計課税

消費税法においては、実定法上に推計課税の規定がありません。そこで消費税に関して、推計課税はできるのかという問題があります。

法に規定がない以上推計課税はできないという考えもあるます。例えば、消費税の課税標準の推計そのものに対して
「租税法律主義に反する」(湖東・前掲書83頁)
として完全に否定的な考え方もあります。

また、同書は、さらに、
「課税標準である売上高を推計するために用いた必要経費等をそのまま控除される仕入税額の推計に用いることは論理矛盾である」
として、仕入税額の推計についても否定的です。

しかし、判例(例えば、最高裁昭和39年11月13日判決、訟月11巻2号312頁)、学説は一般に推計課税を認めています〔北野弘久『現代企業税法論』(岩波書店、1994年)414頁、金子・前掲書671頁〕。

なお、北野、金子両説のよって立つところは、全く異なるので注意が必要です。すなわち、金子説は課税標準である課税売上高を推計により求めそれに税率を乗じ、仕入税額控除は認めないという立場であるのに対し、北野説においては、
「帳簿等によって計算される仕入税額控除は認められるべき」
だという点において両者は大きく異なっています。

法に明文の規定がなくとも推計が認められるとした場合において問題となるのは、推計の対象は何かということでしょう。一般的には、消費税の課税標準である課税売上げを推計し、消費税法30条7項の要件を充たさないので仕入税額控除は認められないとする課税処分が行われているようです。

それに対して、課税仕入れに係る税額の推計も認めるべきという考え方もありえます。このような立場に立つ、仕入税額推計容認論としては、清永敬次「税法(第六版)」171頁があげられますし、さらに、明快に肯定的な立場にたつものとして、田中治「消費税改革の法的問題点」法律時報67巻3号(1995年)19頁があります。

仕入税額控除を認めないと消費税が付加価値税として成立しなくなり、税額相当額が価格に転嫁され、最終的に消費税を負担しているのは一般消費者であるという仮定ないし神話が根本から崩れてしまうのは事実であると考えます。
しかし、消費税30条7項は、仕入税額控除の要件を明確に定めていますから、課税標準である課税売上高を推計されるような場合において、課税仕入れとして仕入税額控除できるものを納税者が反証することは、現実的には非常に困難なことであると考えます。

いずれにしろ、推計課税が必要である場合が予想され、また現実に推計課税がなされているわけですから、消費税法においても推計課税についての規定を設けるべきであると考えます。具体的に、推計課税ができること、推計の対象となるのは何なのかを明文で既定する必要があるということです。

Ⅶ.おわりに

平成17年分から個人の零細事業者が大量に消費税の納税義務者となるが、記帳能力、複雑な税法に対する不知、転嫁の困難さゆえの滞納の増加等々、多くの問題が新たに起こっています。特に大きな影響があるのは、簡易課税制度の縮小に伴い、価格転嫁において立場の弱い中小企業における消費税の滞納の問題でしょう。特に、人件費率の高い業種においてそれが顕著に現れているように感じられます。

消費税が付加価値税であるかどうかという法律論とは別に、付加価値の根本は人件費ですから、消費税の課税標準の基本は人件費、法定福利費等であるということができます。ですから、消費税の税率を引き上げると、それは、雇用を抑制する要因となることに大きな留意が必要だと考えています。ヨーロッパ諸国を見てみると、それぞれの国によって景況は異なりますが、付加価値税の税率と失業率との間に相関関係があることが見て取れるのです

Ralph Waldo Emerson

Experience

The lords of life, the lords of life,—
I saw them pass,
In their own guise,
Like and unlike,
Portly and grim,—
Use and Surprise,
Surface and Dream,
Succession swift and spectral Wrong,
Temperament without a tongue,
And the inventor of the game
Omnipresent without name;—
Some to see, some to be guessed,
They marched from east to west:
Little man, least of all,
Among the legs of his guardians tall,
Walked about with puzzled look.
Him by the hand dear Nature took,
Dearest Nature, strong and kind,
Whispered, “Darling, never mind!
To-morrow they will wear another face,
The founder thou; these are thy race!”


Each And All

Little thinks, in the field, yon red-cloaked clown,
Of thee, from the hill-top looking down;
And the heifer, that lows in the upland farm,
Far-heard, lows not thine ear to charm;
The sexton tolling the bell at noon,
Dreams not that great Napoleon
Stops his horse, and lists with delight,
Whilst his files sweep round yon Alpine height;
Nor knowest thou what argument
Thy life to thy neighbor’s creed has lent:
All are needed by each one,
Nothing is fair or good alone.

I thought the sparrow’s note from heaven,
Singing at dawn on the alder bough;
I brought him home in his nest at even;—
He sings the song, but it pleases not now;
For I did not bring home the river and sky;
He sang to my ear; they sang to my eye.

The delicate shells lay on the shore;
The bubbles of the latest wave
Fresh pearls to their enamel gave;
And the bellowing of the savage sea
Greeted their safe escape to me;
I wiped away the weeds and foam,
And fetched my sea-born treasures home;
But the poor, unsightly, noisome things
Had left their beauty on the shore
With the sun, and the sand, and the wild uproar.

The lover watched his graceful maid
As ’mid the virgin train she strayed,
Nor knew her beauty’s best attire
Was woven still by the snow-white quire;
At last she came to his hermitage,
Like the bird from the woodlands to the cage,—
The gay enchantment was undone,
A gentle wife, but fairy none.

Then I said, “I covet Truth;
Beauty is unripe childhood’s cheat,—
I leave it behind with the games of youth.”
As I spoke, beneath my feet
The ground-pine curled its pretty wreath,
Running over the club-moss burrs;
I inhaled the violet’s breath;
Around me stood the oaks and firs;
Pine cones and acorns lay on the ground;
Above me soared the eternal sky,
Full of light and deity;
Again I saw, again I heard,
The rolling river, the morning bird;—
Beauty through my senses stole,
I yielded myself to the perfect whole.

エマソンは、アメリカの自然の素晴らしさに神を見る。草の根保守の根っことつながるのですね。
でも、コロンブス以前にアメリカには高度に発達した農耕文明が、北米、中米、南米、さらには、アマゾンにもあったのであって・・・。

日本が世界の中心ではないように、アメリカも神から授けられて天地ではないはずです。
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by nk24mdwst | 2008-01-30 18:38 | 租税法(日本)

Consumption Tax in Japan Ⅲ

続き
これに対し
裁判官滝井繁男の反対意見は、次のとおりである。
1 私は、税務調査において、帳簿等の提示を求められた事業者が、これに応じ難いとする理由がないとはいえ、帳簿等の提示を拒み続けたというだけの理由で、法30条7項所定の帳簿等を保管していたのに、同項にいう「帳簿(中略)等を保存しない場合」に当たるとして、同条1項による課税仕入れに係る消費税額の控除を受けることができないと解するのは相当でないと考える。多数意見は結局そのような解釈を採るに帰着するものであるから、これに賛成することはできない。その理由は次のとおりである。
2(1) 我が国消費税は、税制改革法(昭和63年法律第107号)の制定を受けて消費に広く薄く負担を課することを目的とし、事業者による商品の販売、役務の提供等の各段階において課税することとしたものであるが、同法は課税の累積を排除する方式によることを明らかにし(同法4条、10条、11条)、これを受けて、法30条1項は、事業者が国内において課税仕入れを行ったときは、当該課税期間中に国内で行った課税仕入れに係る消費税額を控除することを規定しているのである。この仕入税額控除は、消費税の制度の骨格をなすものであって、消費税額を算定する上での実体上の課税要件にも匹敵する本質的な要素とみるべきものである。ただ、法は、この仕入税額控除要件の証明は一定の要件を備えた帳簿等によることとし、その保存がないときは控除をしないものとしているのである(同条7項)。しかしながら、法が仕入税額の控除にこのような限定を設けたのは、あくまで消費税を円滑かつ適正に転嫁するために(税制改革法11条1項)、一定の要件を備えた帳簿等という確実な証拠を確保する必要があると判断したためであって、法30条7項の規定も、課税資産の譲渡等の対価に着実に課税が行われると同時に、課税仕入れに係る税額もまた確実に控除されるという制度の理念に即して解釈されなければならないのである。
 (2) しかしながら、法58条、62条にかんがみれば、法30条7項は、事業者が税務職員による検査に当たって帳簿等を提示することが可能なようにこれを整理して保存しなければならないと定めていると解し得るとしても、そのことから、多数意見のように、事業者がそのように態勢を整えて保存することをしていなかった場合には、やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明した場合を除き、仕入税額の控除を認めないものと解することは、結局、事業者が検査に対して帳簿等を正当な理由なく提示しなかったことをもって、これを 保存しなかったものと同視するに帰着するといわざるを得ないのであり、そのような理由により消費税額算定の重要な要素である仕入税額控除の規定を適用しないという解釈は、申告納税制度の趣旨及び仕組み、並びに法30条7項の趣旨をどのように強調しても採り得ないものと考える。
 (3) 事業者が法の要求している帳簿等を保存しているにもかかわらず、正当な理由なくその提示を拒否するということは通常あり得ることではなく、その意味で正当な理由のない帳簿等の提示の拒否は、帳簿等を保存していないことを推認させる有力な事情である。しかし、それはあくまで提示の拒否という事実からの推認にとどまるのであって、保存がないことを理由に仕入税額控除を認めないでなされた課税処分に対し、所定の帳簿等を保存していたことを主張・立証することを許さないとする法文上の根拠はない(消費税法施行令66条は還付等一定の場合にのみ帳簿等の提示を求めているにすぎない。)。また、大量反復性を有する消費税の申告及び課税処分において迅速かつ正確に課税仕入れの存否を確認し、課税仕入れに係る適正な消費税額を把握する必要性など制度の趣旨を強調しても、法30条7項における「保存」の規定に、現状維持のまま保管するという通常その言葉の持っている意味を超えて、税務調査における提示の求めに応ずることまで含ませなければならない根拠を見出すことはできない。そのように解することは、法解釈の限界を超えるばかりか、課税売上げへの課税の必要性を強調するあまり本来確実に控除されなければならないものまで控除しないという結果をもたらすことになる点において、制度の趣旨にも反するものといわなければならない。
 (4) 保存の意味を本来の客観的な状態での保管という用語の持つ一般的な意味を超えて解釈することが、制度の趣旨から是認されるという場合がないわけではない。例えば、青色申告の承認を受けた者は所定の帳簿書類の備付け、記録及び保存が義務付けられ、それが行われていないことは青色申告承認の取消事由となるものと定められているところ、納税者が正当な理由なく税務職員による帳簿書類の提示の要求に応じないときは、帳簿書類の備付け、記録及び保存の義務を履行していないものとして青色承認の取消事由になるものと解されている。しかしながら、青色申告制度は、納税義務者の自主的かつ公正な申告による租税義務の確定及び課税の実現を確保するため、一定の信頼性ある記帳を約した納税義務者に対してのみ、特別な申告手続を行い得るという特典を与え、制度の趣旨に反する事由が生じたときはその承認を取り消しその資格を奪うこととしているものである。そして、青色申告の承認を受けた者は、帳簿書類に基づくことなしには申告に対して更正を受けないという制度上の特典を与えられているのであるから、税務調査に際して帳簿等の提示を拒否する者に対してもその特典を維持するというのは背理である。したがって、その制度の趣旨や仕組みから、税務職員から検査のため求められた書類等の提示を拒否した者がその特典を奪われることは当然のこととして、このような解釈も是認されるのである。
 これに対し、法における仕入税額控除の規定は、前記のとおり課税要件を定めているといっても過言ではなく、青色申告承認のような単なる申告手続上の特典ではないと解すべきものである。そして、法は、消費税額の算定に当たり、仕入税額を控除すべきものとした上で、帳簿等の保存をしていないとき控除の適用を受け得ないとしているにとどまるのである。法30条7項も、消費税を円滑かつ適正に転嫁するために帳簿の保存が確実に行われなければならないことを定めたものであり、着実に課税が行われるよう、課税売上げの額を正しく把握すると同時に控除されるべき税額は確実に控除されなければならないという消費税制度の趣旨を考えれば、同項にいう「保存」に、その通常の意味するところを超えて税務調査における提示をも含ませるような解釈をしなければならない理由は見いだすことはできず、そのように解することは、本来控除すべきものを控除しない結果を招来することになって、かえって消費税制度の本来の趣旨に反するものと考えるのである。
 (5) 事業者が帳簿等を保存すべきものと定められ、これに対する検査権限が法定されているにもかかわらず、正当な理由なくこれに応じないという調査への非協力は、申告内容の確認の妨げになり、適正な税収確保の障害にもなることは容易に想像し得るところであるが、法は、提示を拒否する行為については罰則を用意しているのであって(法68条)、制度の趣旨を強調し、調査への協力が円滑適正な徴税確保のために必要であることから、税額の計算に係る実体的な規定をその本来の意味を超えて広げて解することは、租税法律主義の見地から慎重でなければならないものである。
3 以上のような理由で、私は法30条7項についての多数意見には賛成することができないのである。
  同項につき上述したところと異なる解釈を採った原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。そして、同項にいう帳簿等の「保存」の有無につき更に審理を尽くさせる必要があるから、本件は原審に差し戻すべきものであると考える。
(最高裁判所第二小法廷 裁判長裁判官 梶谷玄 裁判官 福田博 裁判官 北川弘治 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野修)
として反対意見がついています。

この事案は、税理士関与の青色申告者である法人が上告人です。帳簿等の提示がなかったことを理由として青色申告も取り消されているのですが、上告受理されたのは消費税の仕入税額控除否認の部分だけです。そして、滝井反対意見はあるものの税務調査時の帳簿等の提示がなかったことを理由に仕入税額控除の否認がなされているわけです。

この滝井反対意見は大勢の学者、実務家から評価を受けたものではありますが結果的にはさらに納税者に苛酷な最高裁判決が直後に出されることになります。

消費税法における帳簿等の保存に調査時の提示が含まれるという考え方は、帳簿保存義務を課している所得税・法人税の青色申告承認取消し処分の判例(例えば、東京地判平3.3.27、税資182号714頁)、学説(例えば、金子・前掲書656頁)に基づくものと考えられます。
この判決が出た時点において、調査時に帳簿等の提示がなかった場合は青色申告承認取消事由に該当するということ、つまり帳簿等の保存には調査時の提示が含まれるという考え方は下級審の判断、ないし学説に止まっていたわけですが、次に掲げる事案において最高裁も同様の判断を下すにいたりました。

平成17年3月10日最高裁第一小法廷判決(平成16(行ヒ)278消費税更正処分等取消請求事件)の判示要旨は、
青色申告の承認を受けた法人が帳簿書類を税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合の法人税法(平成11年法律第160号による改正前のもの)127条1項1号所定の青色申告承認の取消事由該当性
について、要旨
青色申告の承認を受けた法人が,法人税法(平成12年法律第97号による改正前のもの)126条1項に規定する帳簿書類を税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は,法人税法(平成11年法律第160号による改正前のもの)127条1項1号所定の青色申告の承認の取消事由に該当する。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25067&hanreiKbn=01
と判示しました。
ここでは、青色申告承認取消しのみが要旨とされているのですが、消費税についても同様のことを判決文で述べています。以下判決文は、本件上告を棄却する理由について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,平成8年6月1日から同9年5月31日までの事業年度(以下本件事業年度」という。)の法人税について,被上告人に対し,青色の申告書により確定申告書を提出した。また,上告人は,同8年6月1日から同9年5月31日までの課税期間及び同年6月1日から同10年5月31日までの課税期間(以下本件各課税期間」という。)の消費税及び地方消費税について,被上告人に対し,それぞれ確定申告書を提出した。
 (2) 被上告人の職員は,平成10年2月3日,上告人の税務調査のため,事前に通知することなく上告人の宇土支店事務所(以下「上告人事務所」という。)に臨場し,調査に協力するよう要請した。これに対し,上告人の代表者は,税務に関する事務を委任していた税理士が調査に立ち会えないことを理由に調査を延期す
るよう申し入れて,上記要請に応じなかった。そこで,上記職員は,上記税理士と日程を調整して改めて臨場することとした。
 被上告人の職員は,上記税理士と調整した日程に従い,同年4月22日に上告人事務所に臨場し,同事務所に隣接する建物の2階の会議室に案内された。室内には,帳簿書類等が段ボール箱に入れて積み重ねてあったものの,上告人関係者からはその提示や提示の申出はなかった。上告人関係者は,上記職員が調査を開始すると,あらかじめ室内に設置していたビデオカメラによる撮影を開始し,上記税理士は,調査理由の開示等を求めた。これに対し,上記職員は,調査理由を所得金額の確認のためであると説明し,撮影の停止を要求したが,上告人関係者は,これに応じなかった。そこで,上記職員は,上告人が調査を拒否したものと判断して,上告人事務所を辞去した。
 その後,被上告人の職員は,同年6月から同11年4月までの間に,上告人の代表者や上記税理士に繰り返し電話して調査に協力するよう求めたほか,7回にわたり上告人事務所を訪ね,少なくとも同10年9月9日,同11年1月13日及び同年4月12日に上告人事務所を訪ねた際には,帳簿書類等の提示を求めた。し
かし,上告人関係者は,調査理由の開示がなく,最初の臨場調査の際に上記税理士の代理権を侵害する発言がされたなどと主張して,調査に協力せず,被上告人の職員は,帳簿書類等の内容を確認することができなかった。
 (3) そこで,被上告人は,平成11年7月2日付けをもって,青色申告に係る帳簿書類の備付け,記録及び保存が法人税法(平成12年法律第97号による改正前のもの。以下同じ。)126条1項に定めるところに従って行われておらず,同法127条1項1号の規定に該当するとの理由で,上告人の本件事業年度以降の法人税に係る青色申告の承認の取消処分(以下「本件青色取消処分」という。)をするとともに,上告人の本件各課税期間に係る消費税及び地方消費税について,消費税法(平成9年3月31日以前の課税期間については平成6年法律第109号による改正前のもの,平成9年4月1日以降の課税期間については平成12年法律第26号による改正前のもの。以下同じ。)30条1項の定める課税仕入れに係る消費税額の控除につき,同条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間については帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を保存しない場合に該当するとして,これをしないで税額を算出し,第1審判決別紙1の「更正処分等」欄記載のとおりの各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税賦課決定(以下,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)をした。
 (4) その後,本件に関する上告人の異議申立てに係る調査において,上告人が本件各課税期間に係る帳簿等及び本件事業年度に係る法人税法126条1項に規定する帳簿書類を保管していることが確認されている。また,本件に関する審査請求が審理されている際にも,上告人が上記帳簿類等を保管していることが
確認されている。
 2 本件は,上告人が,被上告人に対し,① 本件青色取消処分,② 上告人の平成8年6月1日から同9年5月31日までの課税期間に係る消費税の更正処分のうち納付すべき税額147万3600円を超える部分及び地方消費税の更正処分並びにこれらに係る過少申告加算税の賦課決定,③ 上告人の平成9年6月1
日から同10年5月31日までの課税期間に係る消費税の更正処分のうち納付すべき税額346万4000円を超える部分及び地方消費税の更正処分のうち納付すべき税額73万3100円を超える部分並びにこれらに係る過少申告加算税の賦課決定の各取消しを請求する事案である。
 3 上告代理人内田光也の上告受理申立て理由第1,第5について
 事業者が消費税法30条1項の適用を受けるには,消費税法施行令(平成9年3月31日以前の課税期間については平成7年政令第341号による改正前のもの,平成9年4月1日以降の課税期間については平成12年政令第307号による改正前のもの)50条1項の定めるとおり,同法30条7項に規定する帳簿等を整
理し,これらを所定の期間及び場所において,同法62条に基づく国税庁,国税局又は税務署の職員(以下「税務職員」という。)による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要し,事業者がこれを行っていなかった場合には,同法30条7項により,事業者が災害その他やむを得ない
事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書),同条1項の規定は適用されないものというべきである(最高裁平成13年(行ヒ)第116号同16年12月16日第一小法廷判決・民集58巻9号登載予定,最高裁平成16年(行ヒ)第37号同年12月20日第二小法廷判決・裁判集民事215号登載予定参照)。
 前記事実関係によれば,上告人は,被上告人の職員から上告人に対する税務調査において適法に帳簿等の提示を求められ,これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず,帳簿等の提示を拒み続けたということができる。そうすると,上告人が,上記調査が行われた時点で帳簿等を保管していたとしても,同
法62条に基づく税務職員による帳簿等の検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて帳簿等を保存していたということはできず,本件は同法30条7項にいう帳簿等を保存しない場合に当たり,上告人に同項ただし書に該当する事情も認められないから,被上告人が上告人に対して同条1項の適用がないとしてした本件各更正処分等に違法はないというべきである。
 これと同旨の原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。
 4 上告代理人内田光也の上告受理申立て理由第6について
 (1) 法人税法が採用する申告納税制度が適正に機能するためには,納税義務者たる法人等が帳簿書類を備え付け,これにすべての取引を正確に記帳し,これを基礎として申告を行うことが必要である。そこで,同法は,法人等に対し,帳簿書類の備付け等を義務付け(同法150条の2第1項),申告の正確性を担保する手段として,税務職員に対し,法人の帳簿書類を検査する権限を付与し(同法153条),この検査を拒み,妨げ,若しくは忌避し,又はこの検査に関し偽りの記載をした帳簿書類を提示した者に対する罰則を定めている(同法162条2号及び3号)。そして,同法は,帳簿書類を基礎とした正確な申告を奨励する趣旨で,一
定の帳簿書類を備え付けている者に限って,税務署長の承認を受けて青色申告をすることを認め,上記の者に対し課税手続や税額計算等に関する各種の特典を与えている。青色申告の承認を受けている法人は,
同法150条の2第1項とは別に,同法126条1項によって帳簿書類の備付け等が義務付けられているが,その帳簿書類が上記の検査の対象となることは当然のことである。
 税務署長は,青色申告の承認を行うに当たって,青色申告の承認を申請した法人の帳簿書類の備付け,記録及び保存が大蔵省令で定めるところに従って行われていることを確認し(同法123条),青色申告の承認を受けている法人に対しても,帳簿書類について必要な指示をすることができ(同法126条2項),この指
示に従わなかった法人や,帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載した法人に対しては,青色申告の承認を取り消すことができるとされている(同法127条1項2号及び3号)。また,税務署長は,青色申告に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合には,その法人の帳簿書類を調査
し,その調査により当該課税標準又は欠損金額の計算に誤りがあると認められる場合に限り,更正をすることができるとされている(同法130条1項本文)。さらに,同法の委任を受けた法人税法施行規則(平成16年財務省令第27号による改正前のもの)59条1項は,青色申告の承認を受けている法人は,帳簿書類を7年間保存しなければならないと規定しているが,この保存期間は,国税通則法(平成16年法律第14号による改正前のもの)70条5項所定の更正の制限期間に符合するものである。これらの各規定は,すべて,税務職員が,青色申告の承認を受けた法人の帳簿書類を適時に検査することができるように,その備付け,記録及び保存がされるべきことを当然の前提としているものということができ,そのようにして上記検査の円滑な実施が確保されることは,青色申告制度の維持に不可欠なものということができる。
 (2) そうすると,法人税法126条1項は,青色申告の承認を受けた法人に対し,大蔵省令で定めるところにより,帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録すべきことはもとより,これらが行われていたとしても,さらに,税務職員が必要と判断したときにその帳簿書類を検査してその内容の真実性を確認することができるような態勢の下に,帳簿書類を保存しなければならないこととしているというべきであり,【要旨】[]法人が税務職員の同法153条の規定に基づく検査に適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて当該帳簿書類を保存していなかった場合は,同法126条1項の規定に違反し,同法127条1項1号に該当するものというべきである。[]
 (3) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,上告人は,被上告人の職員から上告人に対する税務調査において適法に帳簿書類の提示を求められ,これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず,帳簿書類の提示を拒み続けたということができる。そうすると,上告人は,上記調査が行われた時点で所定の帳簿書類を保管していたとしても,法人税法153条に基づく税務職員による帳簿書類の検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存することをしていなかったというべきであり,本件は同法127条1項1号に該当する事実がある場合に当たるから,被上告人が上告人に対してした本件青色取消処分に違法はないというべきである。
 これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 泉 德治 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/BB5C1EEBD7A316914925705200269139.pdf
という内容です。
この事案は、税理士関与の優良法人に対する無予告現況調査に対して関与税理士と税務調査担当者との間で意見の齟齬が生じ信頼関係を築けず、実際に帳簿等が存在していること自体は裁判所が認めているにもかかわらず、消費税の仕入税額控除、青色申告承認取消し自由の装用について全く同じ論理で課税庁の処分を認めているわけです。

この事案では、上告人である納税者が負担した消費税額をこの関与税理士が弁償し、これらに関して国家損害賠償請求訴訟も提起しています。
国賠訴訟自体においては、税理士は敗訴しますが、その判決の中でこの調査の異常性が浮かび上がってきており、裁判官もその事情を斟酌しています。

さらに、この事案の調査時おいてこの上告法人のグループ会社に関しても同様の処分が行われたのですが、こちらは簡易課税適用法人であったためその仕入税額控除否認処分は全部取消しとされています。
適用条文が異なるためです。

保存という用語は税法の中では一義的に解釈すべきですし、税額控除も税法用語としては特典という共通の解釈しかありえないのかということについては検討の余地があると考えます。

帳簿等の保存と消費税の納税義務の確定上の重要性に着目し、帳簿等の保存義務が実体法上の義務であるか、手続法上の義務でのいずれあたると解するかにかかわらず、帳簿等の保存(提示を含む)がなされない限りは、仕入れを裏付ける証拠を欠いており、仕入税額控除を受けられないことになる(水野・前掲書741頁)という見解もあります。この見解に対しては、消費税法30条7項を実体法上の義務規定と解するか、手続法上の義務規定と解するかについては、個人的には実体法上の義務規定と解すべきだと考えますが、仮に手続法上の義務規定であると解釈してもその位置づけ、判断基準が変わるものではないはずです。先の見解とは逆に、保存と提示は異なるものだという結論に立ち返るだけです。

続く
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by nk24mdwst | 2008-01-29 11:29 | 租税法(日本)

Consumption Tax in Japan Ⅱ

(3)仕入税額控除の要件

消費税法は、仕入税額控除の適用について、「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。」と規定しています。(消法30⑦)

仕入税額控除の要件は、EU諸国等ではインボイスの保存です。それに対し、日本では、帳簿方式が用いられているわけです。ただし、その帳簿方式の内容についてですが、消費税の導入当初は帳簿「又は」請求書等の保存という規定でした。それが、消費税の税率引上げに伴う平成6年改正で帳簿「及び」請求書等の保存とその要件が加重されました。

これは、単に法文上の規定からすると、事業者番号は用いられないものの、日本の仕入税額控除の要件は、最も厳しいと理解することも可能なのです。もちろん、少なくとも現時点での課税の現場の執行面においてそのような取扱いが一律に行われているということではないことは指摘しておきます。

いずれにしろ、事業者番号制度のない帳簿方式をもちいているわけですから、一般消費者や免税事業者からの仕入れについても仕入税額控除が認められるという点で、前段階税額控除の不透明性という根本的欠陥の解決はなされていないことになります。
(4)帳簿及び請求書等の保存(消法30⑦)

① 消費税法30条7項の性格・意義

消費税法30条7項は、同条1項の仕入税額控除の規定について「事業者が当該課税期間に係る帳簿及び請求書等(略)の保存をしない場合には」、保存がない課税仕入れ等の税額については、適用しないと規定しています。

30条7項の条文構成は、仕入税額控除の適用がされない場合を規定しています。しかし、消費税を付加価値税として位置づけると消費税における課税においては、納税義務者である事業者の納税義務と仕入れに係る税額控除の権利は、一体不可分だと考えられます。権利としての仕入税額控除を当然の前提として、帳簿及び請求書等の保存が義務として課されることを規定していると考えます。

つまり、消費税法30条は、課税要件を規定している条文であるというべきです。

また、仕入税額控除は所得税、法人税における外国税額控除のような税額控除という意味において同一であると考えることはできません。

税制改革法10条2項の「税の累積を排除」という文言から、消費税の本質が付加価値税であると解釈できます。また、課税仕入れに際し事業者が支払った消費税相当額は過不足なく控除されなければなりません。過大な控除が認められないと同時に、過少な控除も法は予定していないはずなのです。

② 帳簿等の保存と提示
 
帳簿等の保存の意義に関し、青色申告者に義務付けられている帳簿保存要件における場合と同様に税務調査時にの正当な理由のない帳簿等の提示拒否があった場合は、帳簿等の保存がないものとする課税処分が平成4年ごろを境にして厳格に行われるようになりました。
 
仕入税額控除は「特典」であり、保存の要件を充たさない以上、仕入税額控除の全額を否認することができるという論理がもちいられだしたのです。結果として、消費税法30条7項の解釈、特に、帳簿等の保存の意義を争点とする税務争訟が多発するようになったわけです。

課税庁が仕入税額控除の否認を行うためには、税務調査を行い、帳簿等の保存がないことを課税庁は、立証しなければなりません。
たしかに、調査時において帳簿等の提示がない場合は、課税庁としては、帳簿等の保存の確認ができないことになります。しかし、それは、税務調査時において帳簿等の保存がなかったことを立証したことにはなりません。あくまで、帳簿等の保存の確認ができず、帳簿等の保存がないことが推認されるということにしか過ぎないわけです。

上述のように、課税庁は、帳簿等の保存がないことを推認することと、帳簿等の保存がないことを立証していることとは異なります。

しかし、課税庁が帳簿等の保存がないと推認して課税処分を行った場合においては、仕入税額控除の要件である帳簿等の保存に関する立証責任は、納税者に帰すことになるというべきでしょう。

一般常識的には税務調査時に帳簿等を提示することによって帳簿等の保存が証明され、その帳簿等の内容について税務調査が行われるということになります。
しかし、税務調査に関しては、色々な事情により様々な状況が起こることがあります。それら全てが、悪意ある納税者による調査妨害であるのなら話は、簡単なのでしょうが、必ずしも想とはいいきれないところに、問題の奥深さが存在します。

そして、納税者と課税庁の調査担当職員との間において意思の疎通や、通常の税務調査は、質問検査権に基づく間接強制力を伴う任意調査という性格を持つので、双方の間で信頼関係が築けない場合においては、感情的な対立が起きることもありえないことではないわけです。

そのような場合に、課税庁側が形式的な法解釈論に依拠して、納税者から適時に帳簿等の提示がなかったことは、帳簿等の保存がなかった場合に該当するとして仕入れ税額控除を否認する処分を行うことがあります。

しかし、調査時において帳簿の提示がなかった場合であっても、故意による調査妨害であるような例外を除けば、課税処分後において提示された帳簿等を検討することによって帳簿等の保存の実態を確認できることもありえるはずです。

逆に、調査時に提示がなかった場合において、その時点で帳簿等の保存がなかったという判断を税務調査に基づく処分の可否を判断する国税不服審判所や裁判所が行ってしまうと納税者としては、帳簿等の保存を立証する機会が全く失われることになるわけです。

論理的には、帳簿等の保存がないときはその提示もできません。しかし、帳簿等の提示がない場合すべてが、帳簿等の保存がない場合に該当するということにはならないはずです。もちろん、税務調査を行う立場からすれば、提示がなければ保存を確認できず、保存がないものとして仕入税額控除の否認を行うという論理が成立することは理解できます。

しかし、消費税法30条7項は帳簿等の保存義務を定めているだけであって、提示の義務、時期を規定しているわけではありません。課税処分後の、不服申立て、あるいは、訴訟の段階で帳簿等の提示がなされた場合は、その帳簿等を検討しそれが明らかに後日作成された帳簿等であるかどうかを検討すべきでしょう。その上で、帳簿保存要件に合致すると判断されるときは、その帳簿等の記載内容についての検討が行われるべきと考えます。

「保存という文言の通常の意味からしても、また、法全体の解釈からしても、税務調査の際に事業者が帳簿又は請求書等の提示を拒否したことを、法30条7項の保存がない場合に該当する、あるいはそれと同視した結果に結び付ける課税庁の主張は、もはや法解釈の域を超えるもの」(大阪地判平10.8.10、税資237号1007頁)

という判断は極めて常識的なものであるはずです。

納税者は申告書作成当時から一貫して帳簿等を保存していたことを立証する責任を負うことになります、その立証時期を正当な理由がない限り適法な税務調査時に限定することに関しての明文の規定は存在しないのです。

それにもかかわらず、判例は、納税者に対し正当な理由の存在、あるいは、税務調査の違法性の立証責任を負わせています。しかし、論理的にはともかく、現実の税務調査の場合において納税者がこれらを立証することは限りなく困難であるといえます。

前述のように質問検査権が間接強制力を課税庁の当該職員に対して認めているものである以上、納税者には税務調査に対する受忍義務があります。

ですから、本来、課税庁が行う処分のあるべき形に関しては、正当な理由なくして税務調査に協力しなかったり、従わない納税者がいる場合は、消費税法の調査受忍義務違反について処分をし、その上で仕入税額控除等の否認を行うというのが適正な手続であると考えられるわけです。

消費税の税務調査において税務職員に対して正当な理由なくして帳簿の提示がなかった場合は、帳簿の保存がなかったと解するべきであるという判決(最判平16.12.16、判タ1175号135頁、16.12.20、判時1889号42頁、17.3.10、判タ1179号171頁)最高裁で相次ぎました。

特に、最高裁平成16年12月20日及び17年3月10日判決は、調査段階から税理士が関与している事例なので、その意味で非常に重要な意味をもっていると考えられます。

先ず最初の最高裁第一小法廷平成16年12月16日判決(平成13(行ヒ)116)は、要旨
事業者が帳簿又は請求書等を税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合の消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの)30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」該当性について、事業者が,消費税法施行令(平成7年政令第341号による改正前のもの)50条1項の定めるとおり,消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの)30条7項に規定する帳簿又は請求書等を整理し,これらを税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように所定の期間及び場所において態勢を整えて保存していなかった場合は,同項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たる。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25083&hanreiKbn=01
としました。
判決文によると
1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,大工工事業を営む個人事業者であるが,平成2年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税について確定申告をしなかった。また,上告人は,昭和63年分,平成元年分及び同2年分の所得税についてそれぞれ確定申告をしたが,その申告書に事業所得に係る総収入金額及び必要経費を記載せず,その内訳を記載した書類を添付しなかった。
 (2) 被上告人の職員は,上告人が本件課税期間について納めるべき消費税の税額を算出するため,また,上記の所得税に係る申告内容が適正であるかどうかを検討するため,上告人の事業に関する帳簿書類を調査することとした。
 上記職員は,平成3年8月下旬から上告人の妻と電話で数回話をするなどして調査の日程の調整に努めた上,その了承を得て,同年10月16日,同月25日,同年11月18日,平成4年1月21日及び同月31日の5回にわたり上告人の自宅を訪れ,上告人に対し,帳簿書類を全部提示して調査に協力するよう求めた。しかし,上告人は,上記の求めに特に違法な点はなく,これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず,上記職員に対し,平成2年分の接待交際費に関する領収書を提示しただけで,その余の帳簿書類を提示せず,それ以上調査に協力しなかった。上記職員は,提示された上記の領収書312枚をその場で書き写したが,その余の帳簿書類については,上告人が提示を拒絶したため,内容を確認することができなかっ
た。
 (3) そこで,被上告人は,上告人の本件課税期間に係る消費税につき,調査して把握した上告人の大工工事業に係る平成2年分の総収入金額に103分の100を乗じて得た消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの。以下「法」という。)28条1項所定の課税標準である金額に基づき消費税額を算出した上で,提示された上記の領収書によって確認された接待交際費に係る消費税額だけを法30条1項により控除され
る課税仕入れに係る消費税額と認め,その余の課税仕入れについては,同条7項が規定する「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に該当するとして,同条1項が定める課税仕入れに係る消費税額の控除を行わないで消費税額を算出し,平成4年3月4日付けをもって第1審判決別紙2の「原処分の額」欄記載のとおりの決定処分及び無申告加算税賦課決定処分をした。 
 (4) 上告人は,上記各処分について被上告人に異議の申立てをした上で国税不服審判所長に対して審査請求をしたところ,国税不服審判所長は,平成7年3月30日付けで,第1審判決別紙2のとおり,上記各処分の一部を取り消す旨の裁決をした(同裁決により一部取り消された後の上記各処分(別紙処分目録記載の各処分)を以下「本件各処分」という。)。
 2 本件は,上告人が,被上告人に対し,本件各処分等の取消しを請求する事案である。
 3 所論の点に関する当審の判断は,次のとおりである。
 (1) 消費税の納付すべき税額は,納税義務者である事業者が課税期間ごとにする「課税資産の譲渡等に
ついての確定申告」により確定することが原則とされており(法45条1項,国税通則法16条1項1号),その申告がない場合又はその申告に係る税額の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった場合その他当該税額が税務署長等の調査したところと異なる場合に限り,税務署長等の処分により確定する(国税通則法16条1項1号,24条及び25条)。
 このような申告納税方式の下では,納税義務者のする申告が事実に基づいて適正に行われることが肝要
であり,必要に応じて税務署長等がこの点を確認することができなければならない。そこで,事業者は,帳簿を備え付けてこれにその行った資産の譲渡等に関する事項を記録した上,当該帳簿を保存することを義務付けられており(法58条),国税庁,国税局又は税務署の職員(以下「税務職員」という。)は,必要があるときは,事業者の帳簿書類を検査して申告が適正に行われたかどうかを調査することができるものとされ(法62条),税務職員の検査を拒み,妨げ,又は忌避した者に対しては罰則が定められていて(法68条1号),税務署長が適正に更正処分等を行うことができるようにされている。
 (2) 法が事業者に対して上記のとおり帳簿の備付け,記録及び保存を義務付けているのは,その帳簿が税務職員による検査の対象となり得ることを前提にしていることが明らかである。そして,事業者が国内において課税仕入れを行った場合には,課税仕入れに関する事項も法58条により帳簿に記録することが義務付けられているから,税務職員は,上記の帳簿を検査して上記事項が記録されているかどうかなどを調査することができる。
 法30条7項は,法58条の場合と同様に,当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等が税務職員による検査の対象となり得ることを前提にしているものであり,事業者が,国内において行った課税仕入れに関し,法30条8項1号所定の事項が記載されている帳簿を保存している場合又は同条9項1号所定の書類で同号所定の事項が記載されている請求書等を保存している場合において,税務職員がそのいずれかを検査することにより課税仕入れの事実を調査することが可能であるときに限り,同条1項を適用することができることを明らかにするものであると解される。同条10項の委任を受けて同条7項に規定する帳簿又は請求書等の保存に関する事項を定める消費税法施行令(平成7年政令第341号による改
正前のもの。以下同じ。)50条1項は,法30条1項の規定の適用を受けようとする事業者が,同条7項に規定する帳簿又は請求書等を整理し,所定の日から7年間,これを納税地又はその取引に係る事務所,事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならないことを定めているが,これは,国税の更正,決定等の期間制限を定める国税通則法70条が,その5項において,その更正又は決定に係る国税の法定申告期限等から7年を経過する日まで更正,決定等をすることができると定めているところと符合する。
 法30条7項の規定の反面として,事業者が上記帳簿又は請求書等を保存していない場合には同条1項が適用されないことになるが,このような法的不利益が特に定められたのは,資産の譲渡等が連鎖的に行われる中で,広く,かつ,薄く資産の譲渡等に課税するという消費税により適正な税収を確保するには,上記帳簿又は請求書等という確実な資料を保存させることが必要不可欠であると判断されたためであると考えられる。
 (3) 以上によれば,【要旨】事業者が,消費税法施行令50条1項の定めるとおり,法30条7項に規定する帳簿又は請求書等を整理し,これらを所定の期間及び場所において,法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、法30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たり,事業者が災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書),同条1項の規定は,当該保存がない課税仕入れに係る課税仕入れ等の税額については,適用されないものというべきである。
 (4) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,上告人は,被上告人の職員から帳簿書類の提示を求められ,その求めに特に違法な点はなく,これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず,上記職員に対し,平成2年分の接待交際費に関する領収書を提示しただけで,その余の帳簿書類を提示せず,それ以上調査に協力しなかったというのである。これによれば,上告人が,法62条に基づく税務職員による上記帳簿又は請求書等の検査に当たり,適時に提示することが可能なように態勢を整えてこれらを保存していたということはできず,本件は法30条7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合」に当たり,本件各処分に違法はないというべきである。
 これと同旨の原審の判断は正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 4 以上の次第であって,本件上告のうち,本件各処分の取消請求に関する部分はこれを棄却すべきである。
 なお,その余の部分に関する上告については,上告受理申立書及び上告受理申立て理由書に上告受理申立て理由の記載がないからこれを却下すべきである。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 泉 德治 裁判官 横尾和子 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 島田仁郎 裁判官 才口千晴)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/7D1C03C3B88DA77F4925702900268912.pdf
この判決において、注意しなければいけないのは、原告である納税者が所得税法において帳簿作成を義務付けられていない白色申告者であることが一つあります。
所得税法上、帳簿記載が義務付けられていないとしても、その事業者が消費税の課税事業者に該当する場合は、消費税法により帳簿等の記載保存が義務付けられているのは事実ですが。
それから、この事案の場合、きちんと整理された帳簿等の存在に関する蓋然性は必ずしも高くないと思われるのですが、一部だけ税務調査に際して提示した領収書にかかる消費税の仕入税額控除に関してはそれを認めているということにも留意が必要です。
いい方は良くないかもしれませんが、最も筋の良くないものに関して調査時における帳簿等の提示がなかったことを理由にする消費税の仕入税額控除否認の判決が最高裁で下されたといえるかもしれません。

次に、最高裁(第二小法廷)平成16年12月20日を見ます。平成16年(行ヒ)第37号法人税更正処分等取消請求上告事件(棄却)(確定)【税務訴訟資料254号順号9870】判決は、本件上告を棄却するとしその理由として、
【判示(1)】1 消費税法(平成9年3月31日以前の課税期間については平成6年法律第109号による改正前のもの、平成9年4月1日以降の課税期間については平成12年法律第26号による改正前のもの。以下「法」という。)が採る申告納税制度の趣旨及び仕組み並びに法30条7項の趣旨に照らせば、事業者は、同条1項の適用を受けるには、消費税法施行令(平成9年3月31日以前の課税期間については平成7年政令第341号による改正前のもの、平成9年4月1日以降の課税期間については平成12年政令第307号による改正前のもの)50条1項の定めるとおり、法30条7項に規定する帳簿又は請求書等(同日以降の課税期間については帳簿及び請求書等。以下「帳簿等」という。)を整理し、これらを所定の期間及び場所において、法62条に基づく税務職員による検査に当たって適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要するのであり、事業者がこれを行っていなかった場合には、法30条7項により、事業者が災害その他やむを得ない事情によりこれをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書)、同条1項の規定は適用されないものというべきである(最高裁平成13年(行ヒ)第116号同16年12月16日第一小法廷判決・裁判所時報1378号参照)。
【判示(2)】
2 原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人は、被上告人の職員が上告人に対する税務調査において適法に帳簿等の提示を求め、これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず、上記職員に対して帳簿等の提示を拒み続けたというのである。そうすると、上告人が、上記調査が行われた時点で帳簿等を保管していたとしても、法62条に基づく税務職員による帳簿等の検査に当たって適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて帳簿等を保存していたということはできず、本件は法30条7項にいう帳簿等を保存しない場合に当たるから、被上告人が上告人に対して同条1項の適用がないとしてした別紙処分目録記載の各処分に違法はないというべきである。
  これと同旨の原審の判断は是認することができる。論旨は採用することができない。
 なお、その余の請求に関する上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとする。
 よって、裁判官滝井繁男の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
としています。

細かい状況は下級審判決を見ればわかりますが、いずれにしろ税理士が関与している青色申告法人が原告なので、消費税法にいう帳簿等が全く存在しなかったとはいえず、所定の帳簿等があったであろうという蓋然性はたかいわけです。その意味で、前掲の12月16日判決とは異なることに注意が必要です。

続く

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by nk24mdwst | 2008-01-28 11:27 | 租税法(日本)

Consumption Tax in Japan

Acknowledgement for foreign readers

I'm studying the taxation in Japan and learning the taxation in the U.S. and other countries, though I'm not a scholar.
Someday I will translate some articles about the income tax and the consumption tax, which I've written. I wrote those in point of the comparative view. I want to know what cause some controversial issues by the comparative method.

For foreign readers, who may not know the taxation in Japan and the Japanese tax ministration and/or Japanese legal procedures I have to rewrite my articles.

Someday I want to bring out my articles under my own name.

日本の消費税について考える

Ⅰ.はじめに

平成元年に導入された消費税は、国民の間に定着したといわれています。しかし、消費税についての納税者と行政処分庁である課税庁との間でトラブルが生じることも少なくありません。その一方、消費税率の引上げは、不可避であると思われます。

政府税調答申を消費税率の引上げを当然の前提としています。また、民主党も消費税を年金財源としての福祉目的税とするという考え方であり、その場合、当然、税率の引上げの問題が出てきます。

ガソリン税の問題でも明らかなように、特定の税を目的税とすること自体は、財政学の基本的な考え方からすると財政の硬直化につながると考えられるので、消費税の福祉目的税としての特定財源化に関しては、あまり賛成できないと考えています。消費税の適正税率がどれくらいであるかどうか以前の問題です。
ここでは、現行消費税の課題を立法上の問題点も含めて検討したいと思います。
 
Ⅱ.消費税の沿革

1.付加価値税の沿革

消費一般に対する課税の方法としては、小売売上税、累積型取引高税、付加価値税等があります。
小売売上税、累積型取引高税は、いずれも、企業間取引における税の累積の問題を排除できない(水野忠恒『租税法 第2版』(有斐閣、2005年)663頁以下)
という問題点があるとされています。
小売段階までを対象とする前段階税額控除型付加価値税は、1967年のEU一次指令に基づき、1968年1月にフランス・旧西ドイツにおいて初めて導入されました。

EU型付加価値税の特徴は、事業者間取引における税の累積を防ぎ、最終的に税を消費者に負担させるために、インボイス(納品書を意味します。)を用いることにより、事業者が仕入段階で支払った付加価値税額を控除する仕組をもつことです。インボイスの記載事項として求められるのは、発行者が課税当局に登録した事業者番号を除くと、日本の消費税法が帳簿及び請求書等において求めている記載事項と基本的に同じと考えてかまいません。日本の場合は、5%の単一税率ですから不要ですが、複数税率を用いる場合にはインボイスにその取引の適用税率の記載が求められることになります。

EU型付加価値税はその後急速に世界各国で導入されるようになりました。ただし、アメリカにおいては、レーガン政権時代にその実施に向け詳細な検討が行われました
(アメリカ財務省編・塩崎潤訳『公平・中立・簡素および経済成長のための税制改革』(今日社、1986年)は、その検討報告の邦訳です。)
しかし、結果的には導入が見送られ、現在に至っています。

アメリカにおいて連邦レベルにおける付加価値税導入論は常に行われているのですが、前述の報告では、付加価値税の有する逆進性の問題が課税の公平に反すること、州やその下の地方政府レベルにおいて主な財源とされている小売売上税(Sales Tax, Use Tax)等と並存することとなり制度が複雑化することとそれに対する行政コスト面からメリットがないと結論付けているわけです。
なお、カナダにおいては、アメリカ同様、州レベルの小売売上税が存在するわけですが、連邦レベルの付加価値税としてのGSTも課税されています。

2.日本の消費税の沿革

日本における一般消費税導入は、昭和53年の一般消費税法(仮称)案及び昭和62年の売上税法案挫折を経て、昭和63年12月の消費税法成立によっています。また、消費税法は、成立・施行に際し、その立法趣旨を説明する税制改革法の立法を伴っていたことは極めて異例のことであるといえます。

税制改革法においては、消費に広く薄く負担を求める消費税を創設(同法10①)」し、「消費税は、事業者による商品の販売、役務の提供等の各段階において課税し、経済における中立性を確保するため、課税の累積を排除する(同法10②)」ものであると規定されています。また、「事業者は、消費に広く薄く負担を求めるという消費税の性格にかんがみ、消費税を円滑かつ適正に転嫁する(同法11①)」とも規定しされています。

これらの規定から、消費税は、消費に広く負担を求める一般消費税であり、付加価値税として制定されたという立法趣旨を読み取ることができます。

税制改革
法の性格に関してですが、消費税法に対する関係において、「講学上のいわゆる上位規範に当たるものではない。」(東京地裁平成2年3月26日判決(税資175号194頁))における被告・国側主張
とされています。
この裁判において、判決はこの点について明確な判断を下していません。

消費税導入当初の段階において、税制改革法の租税法体系上の位置づけ、さらに消費税の本質が付加価値税であるか否かについて、裁判所は、明確に判断すべきであったと考えられます。インボイスを用いるか、帳簿を用いるかというような点は本質的議論では全くないのです。

実際に商取引を行ったことのない、旧大蔵官僚や、裁判官には取引における価格決定メカニズムを理解することは決定的に不可能です。
戦後の日本は、長い間、価格統制経済であったというべきですが、規制緩和、厳密には規制撤廃というべきですが、自由に市場が核を決定するシステムが広く導入されると同時に付加価値税である消費税が施行されたことは、特に留意が必要だと考えます。

社会主義経済のような統制経済、あるいは、戦時下の日米のような統制経済下において消費税は導入されたのではないのです。

Ⅲ.消費税の課税対象の問題点

1.納税義務者

(1)事業者

消費税の納税義務者は、国内において課税資産の譲渡等を行った事業者であって(消法5)、一般消費者ではありません。

消費税における消費者、納税義務者である事業者等の関係について判例は、
「消費税法及び税制改革法には、消費者が納税義務者であることはおろか、事業者が消費者から徴収すべき具体的な税額、消費者から徴収しなかったことに対する事業者への制裁等についても全く定められていないから、消費税法等が事業者に徴収義務を、消費者に納税義務を課したものとはいえない。」(前掲東京地裁平成2年3月26日判決)
と判示し、消費税の納税義務者は、事業者であり、消費者が納税義務者、事業者は徴収義務者と解釈する余地はないとしています。
最高裁平成5年9月10日判決(税資198号813頁)も、【判示(5)】として
「また、消費税法5条1項、税制改革法11条1項の規定によれば、消費税は、課税資産の譲渡等を行う事業者を納税義務者として課される間接税であり、事業者は、消費者が支払う消費税相当額の金員を、売買等の契約という法律上の原因に基づいて取得するものであるから、上告人と被上告人国との間で、上告人が売買契約の相手方である事業者に支払つた消費税相当額の金員につき不当利得関係を生ずるものではない。したがって、所論違憲の主張は、原判決の結論に影響のない事項について原判決を論難するものにすぎない。論旨はいずれも採用することができない。」と
しており事業者が納税義務者であるという点で同旨です。

また、
「事業者が消費税を転嫁すること自体は、経済取引における力関係によって決定されるのであり、税制改革法や消費税法によって担保されているわけでもない。」(大阪高判平6.12.13、税資206号679頁)
と判例が示すとおり、消費税の転嫁を担保する法規も存在しないわけです。

消費税の納税義務者が事業者であること、転嫁の保障も義務付けもなされていないことから消費税は、あくまで間接税的性格の税というべきでしょう。事業者は全ての取引において消費税相当額の価格上乗せが可能であり、最終的に消費税の負担をするのは消費者だとする消費税の転嫁論、あるいは、事業者は消費税相当額を取引の相手から預るという預り金的性格論などは、消費税法本法の解釈から導き出されるものとはいえないのです。

ただ、消費税を価格転嫁することが難しい中小零細事業者が平成に入ってからの長期デフレ経済の下、諸費税の滞納をすることが多発し、それに対して、かなり強権的な徴収事務が行われているという事実があります。その際の行政処分庁の言い分としては、消費税は預り金的性格のものとして「国民から」預っているものであるという見解が強調されます。都合のよいときだけ、預り金論を持ち出すわけです。

現在の日本は統制経済では、ありません。2008年4月初めからのガソリン税の暫定税率の期限切れを巡るガソリン小売価格においては、本来、個別消費税であり、それも、蔵出し税であって価格に上乗せしないと販売事業者が損失を蒙ることが明らかであるにもかかわらず、市場の価格競争の結果として、ガソリン税の暫定税率分を販売事業者が負担するということが起こっています。

このように、机上の論議としての転嫁論と現実の経済取引とは全く異なることに留意が必要です。

また、平成16年4月1日から課税事業者が一般消費者に対して行う価格表示に関して税込みで表示する総額表示が義務付けられました(消法63の2)。EU型付加価値税においては、付加価値税を表示価格に含む総額表示が一般的な原則です。

商品の実際の購入価格が表示されてわかりやすいとされる総額表示方式は、逆に、一般消費者から消費税額が見えにくくなり、一般消費者の税負担感、事業者における転嫁の可能性といった問題を曖昧にするという側面があることを見逃すべきではありません。税率引上げに向け布石を打っているというところでしょうか。

 (2)免税事業者

事業者のうち、課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下である者については、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき消費税の納税義務が免除されています(消法9①)。このような事業者が免税事業者と呼ばれます。これは、中小事業者の事務処理能力・徴税コスト等を配慮した制度とされています。

免税事業者に該当するかどうかは、基準期間における課税売上高により判定されることになっています。基準期間とは個人事業者については課税期間の前々年、法人については課税期間の前々事業年度をいいます。

課税期間の前々年又は前々事業年度という二年前に基準期間をおいた理由としては、
消費税が転嫁を予定する税であることから、課税期間の納税義務はその課税期間の開始前に判定されなければならず、課税売上高の計算期間を考慮して前年又は前事業年度ではなく、前々年又は前々事業年度とするのが適当と判断されたことによる(畠山武道・渡辺充『新版 租税法』(青林書院、2000年)242頁)
というように説明されています。

この基準期間という考え方自体が、実際に事業者であってもなかなか理解をするのが難しい点であるのは事実です。

また、基準期間の課税売上高の計算について、その基準期間において課税事業者であった場合は、税抜きで計算し、免税事業者であった場合は、税込みで計算することになっています。

一見矛盾するこのような判断基準を認める最高裁平成17年2月1日判決(事件番号 平成12(行ヒ)126・事件名 消費税決定処分等取消請求事件・年月日 平成17年02月01日・法廷名 最高裁判所第三小法廷 ・ 判決・ 棄却・判例集 第59巻2号245頁 )は、
事業者が,消費税法(平成15年法律第8号による改正前のもの)9条1項に該当するとして,課税期間に係る基準期間において課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務を免除された場合に,消費税法(平成6年法律第109号による改正前のもの)9条2項,28条1項を適用して当該基準期間における課税売上高を算定するに当たっては,免除される消費税相当額を控除することなく,課税資産の譲渡等の対価の額を算定すべきである。http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25073&hanreiKbn=01
としています。
判決は 
3(1) 法9条1項は,課税期間に係る基準期間(事業者が法人の場合は,法2条1項14号により,その事業年度の前々事業年度をいう。)における課税売上高が3000万円以下である事業者について,その課税期間中の課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務を免除するものと規定する。
 法9条1項に規定する「基準期間における課税売上高」とは,事業者が小規模事業者として消費税の納税義務を免除されるべきものに当たるかどうかを決定する基準であり,事業者の取引の規模を測定し,把握するためのものにほかならない。ところで,資産の譲渡等を課税の対象とする消費税の課税標準は,事業者が行う課税資産の譲渡等の対価の額であり(法28条1項),売上高と同様の概念であって,事業者が行う取引の規模を直接示すものである。そこで,法9条2項1号は,上記の課税売上高の意義について,消費税の課税標準を定める法28条1項の規定するところに基づいてこれを定義している。
 すなわち,法9条2項1号は,上記の課税売上高とは,基準期間が1年である法人の場合,基準期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額(法28条1項に規定する対価の額をいう。)の合計額から所定の金額を控除した残額をいうものと規定する。そして,同項は,「課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は,課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し,又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし,課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税に相当する額を含まないものとする。)とする。」と規定する。
 法28条1項の趣旨は,課税資産の譲渡等の対価として収受された金銭等の額の中には,当該資産の譲渡等の相手方に転嫁された消費税に相当するものが含まれることから,課税標準を定めるに当たって上記のとおりこれを控除することが相当であるというものである。したがって,消費税の納税義務を負わず,課税資産の譲渡等の相手方に対して自らに課される消費税に相当する額を転嫁すべき立場にない免税事業者については,消費税相当額を上記のとおり控除することは,法の予定しないところというべきである。
 以上の法9条及び28条の趣旨,目的に照らせば,法9条2項に規定する「基準期間における課税売上高」を算定するに当たり,課税資産の譲渡等の対価の額に含まないものとされる「課されるべき消費税に相当する額」とは,基準期間に当たる課税期間について事業者に現実に課されることとなる消費税の額をいい,事業者が同条1項に該当するとして納税義務を免除される消費税の額を含まないと解するのが相当である。
 (2) 前記事実関係によれば,上告人は,本件基準期間において,売上総額が3000万円を超えており,かつ,免税事業者に該当していたというのである。そうすると,上告人は,本件課税期間において,免税事業者に該当しないこととなるから,本件各決定が違法であるとはいえない。
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/5A366038EB92879A49257052002690D6.pdf
と結論付けています。

例えば、上告人の主張にあるように、課税売上高が毎年税込み1,040万円の事業者を仮定すると、二年ごとに免税事業者と課税事業者を交互に繰り返すことになるという矛盾に対して説得的な説明はなされていないのです。

上記税込み、税抜きによる免税事業者の判定は、通達(消基通1-4-5)によらず、法令で規定するべきです。また、その場合、規定においては、帳簿方式を用いている限り、基準期間において課税事業者であるか否かに関らず、税抜きで判定する又は税込みで判定するといういずれかに統一すべきでしょう。

2.課税対象

(1)課税取引

① 国内取引

消費税の課税対象は「国内において事業者が行った資産の譲渡等」です(消法4①)。また、「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」とされています(消法2①八)。

事業者が事業として行う取引ですが、消費税法は、事業の意義について、

「対価を得て行われる資産の譲渡等の行為を反復、継続、独立して遂行することと解するのが相当であり、消費に広く負担を求める消費税においては、所得税と異なりその規模までは問わない。」(平成5年7月1日裁決、裁事46号225頁)
とする裁決があり、その範囲を所得税よりも広く捉えていることに注意が必要です。課税事業者と免税事業者に関する規定振りも同様の考え方に立っていると考えられます。

また、法人税の場合は、財団法人・社団法人のような公益法人等や人格のない社団等(公益法人等)に関しては、限定列挙された収益事業を営む場合においてのみ課税されることになっています。しかし、消費税の場合は、収益事業という概念は存在しません。それよりも広い意味の事業を行う公益法人等に対して課税されることになるのです。

特に、免税事業者の課税売上高が1000万円以下と引き下げられたことにより、これらの公益法人等の課税事業者が増加することとなりました。公益法人等の中の人格のない社団の例としては、学校のPTAなども含まれることになり、仮に利益が出ていないとしても、そのPTAや町内会等が行う事業による課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務者になるということです。

国等が行う事業の場合と同様に、公益法人等に関しては、特定収入に該当する収入によって運営が成立しているところが少なくないと考えられます。この特定収入に関する法令を正しく理解し適用、計算を行なうことに関しては、専門性・特殊性が高いにもかかわらず、経理担当者等が法令等に関する十分な理解をしていない場合が少なくありません。そこで、課税当局との争いや、法令の適用誤りの増加が懸念されます。

② 非課税取引

日本の消費税法は、課税取引の範囲をEU諸国に比べて狭くしている点に特徴があります。

非課税取引に該当する取引であってもその前段階において消費税が課税されているときは、消費税相当額を実質的に価格に上乗せして転嫁することは可能ですが、上乗せが不可能な場合は、逆に仕入税額控除をする権利がないので消費税相当額を事業者が自己負担する結果となるわけです。

非課税取引を少なくすることは、執行上の便宜を図ることになるといえますが、反面、課税の公平は、犠牲となります。簡潔、簡便な制度は運用が楽といえるしょうが、課税の公平とトレード・オフの関係になるというのは所得税等の他の税目においても同じことが言えます。

逆進性が強いという欠点を有する消費税の税率引上げに際しては、非課税取引の範囲の見直しが必要でしょう。さらに、輸出以外の取引に対するゼロ税率や、生活必需品等の軽減税率適用を含む複数税率の導入を検討する必要もあるでしょう。これらは、特に、税率引き上げの反対意見に対して政治的な折合いをつけるための手段として、あるいは、見せかけの公平性の確保を主張するためにどうしても必要になると考えられます。

③ 免税取引

消費税は、内国消費税なので物品等を輸出した場合には、免税が適用されることになります。輸出に関しては、消費税のような付加価値税固有の問題として、国境税調整が必要です。国境税調整を行わないと原産地国と消費地国の二箇所で課税される場合、あるいは、どちらでも課税されない場合があり得るからです。

国境税調整に関しては、仕向地主義と原産地主義があり、日本の場合は仕向地主義を採用しています。つまり、輸出の際、免税となり、輸入の際に課税される仕組です。

仕向地主義のもとでは、税制の国際的競争中立性が確保されるといわれます。
「原産地国と仕向地国が同様の税率・課税範囲等が同じ付加価値税を有しているということが前提となる」(金子宏『租税法 第十版』(弘文堂、2005年)542頁)
とされています。

これに対し、アメリカのように輸出免税の適用される付加価値税を持たない国からは、輸出免税は、輸出補助金に該当するという批判がなされています。

WTOは、インボイス方式の付加価値税における輸出免税を輸出補助金の例外として認めているわけです。しかし、
日本のように帳簿方式による仕入税額控除方式を用いている場合は、その実質は仕入控除型付加価値税であり、輸出免税に名を借りた補助金である(水野忠恒『消費税の制度と理論』(弘文堂、1989年)186頁))
いう批判もあります。

なお、国境税調整に関し、実物財の移動を伴わない国際的電子取引に対する課税権が、どこの国に存するのかという問題が生じえます。例えば、インターネットのサーバーは、恒久的施設に該当するか等と見ることができるか等について、検討する必要があるでしょう。 

Ⅳ.仕入税額控除
 
(1) 仕入税額控除

仕入税額控除は、付加価値税としての消費税の生命(大島隆夫・木村剛志「消費税法の考え方・読み方(四訂版)」245頁、(税務経理協会、2004年))
であり、理論的本質であるとされています。

消費税法は、国内取引における仕入税額控除について「事業者(免税事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れについては、課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額につき課された又は課されるべき消費税額の合計額を控除する。」(消法30①)と規定しています。

(2)仕入税額控除の方法

仕入税額控除は、課税資産の譲渡等に対応する課税仕入れに係る税額が控除され、非課税取引、課税対象外取引に対応する部分は控除されません。しかし、実務上の便宜のため、課税売上割合が95%以上の場合は、課税仕入れに係る消費税の全額の控除が認められています。課税売上割合が95%未満の場合は、課税売上高に対応する仕入税額をプロラタ方式により計算する必要があります。さらに、個別対応方式と簡便法である一括比例配分方式の選択が認められています。

この課税売上割合95%以上の企業すべてが消費税の全額控除を認められていることについては、
大企業で課税売上高が大きい場合は、この部分の金額が大きくなりいわゆる簡易課税制度による益税よりも多額になる(山本守之『租税法の基礎理論』(税務経理協会、2004年)346頁以下)
という指摘があります。

簡易課税制度は、中小企業の事務負担軽減措置ですが、大企業は、帳簿組織等の整備、電子化が行われていて優遇する必然性に欠けると考えられます。

以下続く
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by nk24mdwst | 2008-01-27 15:02 | 租税法(日本)

It's snowing.

雪がちらついていて、寒い一日になりそうです。

Robert Frost の詩です。

"All poetry is a reproduction of the tones of actual speech." というフロストの言葉どおり、詩は、声に出して何度も読んで味わうものと思っています。

彼の詩集"New Hampshire"からです。私が始めてフロストに触れたのはこの詩です。

Stopping By Woods On A Snowy Evening

Whose woods these are I think I know.
His house is in the village though;
He will not see me stopping here
To watch his woods fill up with snow.
My little horse must think it queer
To stop without a farmhouse near
Between the woods and frozen lake
The darkest evening of the year.
He gives his harness bells a shake
To ask if there is some mistake.
The only other sound's the sweep
Of easy wind and downy flake.
The woods are lovely, dark and deep.
But I have promises to keep,
And miles to go before I sleep,
And miles to go before I sleep.


英詩の時間にMs. Phillips が最初に取り上げた題材でした。易しい言葉、目に浮かぶ情景、きれいな韻の踏み方、英詩入門にぴったりです。
季節感からいうとクリスマス、ないし冬至の頃なのだと思いますが、冬の森の小道を抜け、目的地に向かう情景が目に浮かびます。
中学で習わない単語は、queer 位でしょう。

30年前には、気にも留めませんでしたが

He will not see me stopping here
To watch his woods fill up with snow.

という二行で思わず、立ち止まります。

The woods are lovely, dark and deep.
But I have promises to keep,
And miles to go before I sleep,
And miles to go before I sleep.

この終わりの4行は、シンプルですが美しいと感じます。

もう一つ、詩集"Mountain Interval"からです。

THE ROAD NOT TAKEN

Two roads diverged in a yellow wood,
And sorry I could not travel both
And be one traveler, long I stood
And looked down one as far as I could
To where it bent in the undergrowth;
Then took the other, as just as fair,
And having perhaps the better claim,
Because it was grassy and wanted wear;
Though as for that the passing there
Had worn them really about the same,
And both that morning equally lay
In leaves no step had trodden black.
Oh, I kept the first for another day!
Yet knowing how way leads on to way,
I doubted if I should ever come back.
I shall be telling this with a sigh
Somewhere ages and ages hence:
Two roads diverged in a wood, and I-
I took the one less traveled by,
And that has made all the difference.


こちらの詩の方が先に書かれています。
30年以上前に初めて読んだフロストの詩です。
30年以上、自分が来た道を振り返り、この先30年の命なぞ望むべくもないことを知りつつ、思いは変わらない。
頚木はきつくなり、我が身の力の程も余程解っているのに。

Two roads diverged in a wood, and I-
I took the one less traveled by,
And that has made all the difference.

人生折り返したがゆえ、この三行が身に沁みます。

Lowell George のドラッグ・ソングなんかよりずっと心に沁みます。
逆に、あの時代は何だったのか。あの後、本当は何が起こっているのか。
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by nk24mdwst | 2008-01-26 11:48 | Poetry

Fairport Family Tree

Fairport Convention は、イギリス版の Grateful Dead だというと、数多のお叱りを受けそうではありますが、共通点があるのも事実です。

どちらも30年以上のキャリアを持つバンドであること、Sandy Denny 時代のフェアポートを除くと、ともに強力なリード・シンガーを持っていないことが同じだと。デッドは、リード・シンガーもいないのに長続きしたのはヒッピーのバンドだからなどと馬鹿なことを言ったのは、私ではなく、Dave Marsh です。

フェアポートとデッドは、バンド歴が長いということを除くと、決定的に大きな違いがあります。デッドは、メンバーが亡くなって抜けたということ以外においてメンバーが固定していたのに対して、フェアポートの方は、オリジナル・フェアポートのドラマーMartin Lamble が自動車事故で亡くなるということがありましたが、同じライン・ナップで同じアルバムを二度出したことがないのです。

25年ほど前のマーシュの記事を覚えているということは、マーシュに影響されていた時代が私にあるということではありますけれど。
逆にマーシュがけなしたものを探すといいのかと最近は思っています。

Amazon.Com のThe Rolling Stone Record Guide(1979)の読者レヴューですが、私も同じ体験をしました。
The only record guide at the time (unfortunately), February 27, 2007, By G. Bower
Back when I was growing up and discovering music, all "serious" music fans read The Rolling Stone Record Guide (and later the "blue" edition from 1983).
There was lots of information about a lot of records in these books. Unfortunately, there was way too much Dave Marsh. Dave Marsh's reviews are the weakest (and most prevalent) of anyone's in these books. He was so wrong about so much music (and so self-righteously smug about it) that he ticked a lot of people off, myself and all my music fan circle included. It really was poor analysis, often quite lazy and shallowly dismissive of anything he didn't "get," and overly praising of many critical flavor-of-the-month acts that went commercially (and critically) nowhere after the fact.
http://www.amazon.com/Rolling-Stone-Record-Guide-Currently/dp/0394410963/ref=sr_1_26?ie=UTF8&s=books&qid=1214811608&sr=1-26


Django Reinhardt がギタリストしてのRichard ThompsonJerry Garcia に与えている影響云々とClarence White の話は、今回はよします。

デッドのも膨大な音源がありますが、フェアポート一派も伊達に長くやってないわけで沢山アルバムがあります。フェアポートないしブリティッシュ・フォーク系のアーティストのボックス・セットについて若干というところです。

Fairport Unconventional [Box set] ~ Fairport Conventio
1966年のラジオ録音から90年代のCropedyあたりまで網羅しています。音は、ばらつきあり、メンバーはみんなが集まっている。いわゆるベスト盤を期待するとちょっと違うかなという感じです。あえて「普通じゃない」といってるわけで。ブック・レットその他盛り沢山。

Cropredy Capers: 25 Years of Fairport Convention and Friends at Cropredy Festival [Box set] [Live] ~ Fairport Convention
Jethro Tull のIan Anderson、オリジナル・メンバーのJudy Dyble まで登場。楽しいと感じられればいいのでしょう。
これも、ブックレット充実、おまけもいっぱい。

Live at the BBC [Live] [Box set] ~ Fairport Convention
貴重な音源、良い演奏多し。シリアスでクロペディの対極ですね。
マーティン・ランブル時代の演奏が貴重です。

A Boxful of Treasures [Box set] [Live] ~ Sandy Denny
フェアポートを出たり入ったりしたサンディ・デニーのボックス。最初期の飲んだくれ看護学生時代の歌声もあります。Fotheringay 時代のも入ってます。必死になってFotheringay の唯一のアルバムを探していたこともありましたっけ。
ブックレット充実、おまけいっぱい。

Live At The BBC [Live] [CD+DVD] [Box set] ~ Sandy Denny
これも良い演奏多し。貴重な音源。

RT - The Life and Music of Richard Thompson [Box set] ~ Richard Thompson
リチャード・トンプソンのボックスも他とかぶりがなくていい演奏ぞろい。サンディ・デニーのボックスに「最近は、Nick Drake なんてやつがもてはやされて、サンディが忘れられてる」と怒りの一言を載せてました。
ブックレット充実、おまけいっぱい。

Swarb: Forty Five Years of Folk's Finest Fiddler [Box set] ~ Dave Swarbrick
スウォーブリック・ファンでもコアな人向けですね。いわゆるベスト盤的な編集ではないので。
Ian Campbell やBert Lloyd の歌声が聴けるのは貴重かな。ブリティッシュ・フォーク・リヴァイヴァルは、この二人あたりから始まるわけですから。
これまた、ブックレット充実、おまけいっぱい。

A Box of Pegg's [Box set] ~ Dave Pegg
デイヴ・ペグがジェスロ・タルに加入したりするものだから、クロペディにイアン・アンダーソンがが出てくるというほど話は単純ではないようで。Ashley Hutchigs が抜け、ペグがベーシストとして加入するわけです。Robert Plant なんかとバンドやってたりするのでロック系の人かと思ってしまうのですが、八チングズの方が、ジャズ、ロック系で、ペグはフォーク畑。

実は、このボックスが大穴です。音、演奏がいい、これでしか現在聞けないものがほとんどす。それと、ベーシストのコンピなのでビート・グループ時代の音からBob Dylan Projectまであって、共演アーティストが実に多彩。
それと、フェアポートと名乗ってやっているものが、他では入手が難しいこと、さらに、フェアポート・コンヴェンションというバンド自体が、常にライン・ナップが変動しているということで、演奏の幅がフェアポートのボックス以上に広くて、フェアポートを俯瞰するには、こっちがいいのじゃないかなどと思ったりします。
ただし、条件があって、オリジナル・フェアポートのメンバーじゃなかったペグのアンソロジーですから、オリジナル・フェアポート時代の欠落は致し方なし。その代わり、なぜ、フェアポートが今に続くバンドなのかという点において大事かなという感じです。

The Carthy Chronicles [Box set] ~ Martin Carthy
Steeleeye Spanの創設メンバーというよりは、ブリティッシュ・フォーク・リヴァイヴァルの中心人物ですね。スウォーブリックのボックスのコンパニオンという感じでしょうか。
ブック・レット充実、おまけいっぱい。

Mighty River of Song [4CD + DVD] [Box set] [Enhanced] [CD+DVD] ~ Watersons
マーティン・カーシーは、フォーク・ソング一家のウォータソン家のNorma Watersonと結婚し、その間に生まれたのがEliza Carthyですね。

The Time Has Come: 1967-1973 [Box set] ~ Pentangle
オーソドックスなベスト盤コンピですね。逆説的ですが、なるがゆえにコンプリースト向きか。自嘲気味です。Bert JanschやJohn Renbourne のソロ、それも個別のCDで入手可能なものが入っていたりしますが、BBCライブ音源は貴重かな。

Pentangling: the Collection [Box set] ~ Pentangle
こっちは、以前CD"On Air”で出ていたBBCセッションの拡大版というところですが、On Air にしかない演奏もあります。これはいい演奏だと思います。

Always [Box set] ~ June Tabor
The Journey [Box set] ~ Ralph McTell
Try for the Sun: The Journey Of Donovan [Box set] [Enhanced] ~ Donovan
なんてのもありますが、息切れしてきました。


Fruit Tree: +DVD [Box set] [CD+DVD] ~ Nick Drake
ニック・ドレイクは項を改めてということでしょう。

*ブリティッシュ・フォーク・リヴァイヴァルとブリティッシュ・ブルース・ブーム、さらにはいわゆるイギリスのプログレッシブ系の連中との関わり、Class の問題と、源流であるアメリカのフォーク・リヴァイヴァル、アメリカ東海岸の60年代初頭のインテリ左翼によるフーテナニー(フェイクの極致だと思いますが。)との関連等々を遡る必要があります。「Folk Blues」というこれまた厄介なフェイクを片付けないといけないし。

John Fahey は、Folk Blues がフェイクだと解っていて、フェイクのフォーク・ブルースのフェイクをやっていたりするのですね。フェイクのフェイクだから本物か・・・架空のブルース・マンなんか作っていたりするのですね。

Bert Jansch は、Big Bill Broonzy に影響を受けたフォーク・ブルースからスタートするわけですが、ブルージー自身は、イギリスに渡った頃フォーク・ブルース・シンガーでないわけで。

イギリスでは60年代初頭の結節点にいたのは、Alexis Korner とかLong John Baldry だったりして。
ロング・ジョン・ボールドリーは、二流のブルース歌手だと思いますが、It Ain't Easy(1971)は、同時期のRod Stewart のアルバムが好きな人は気にいるかもしれません。
バックが基本的に同じでロッドとElton John がプロデュースしています。
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by nk24mdwst | 2008-01-25 19:01 | 音楽

It's Cold.

雪がちらつき寒いです。今冬、やっと冬の一日が来たという感じですね。

Lowell George は、Frank Zappa のMothers にいました。アンチ・ドラッグのザッパに薬の密輸譚である Willin' をやろうといって、バンドを追い出されたと回想しているわけです。
Wikipedia は、そう書いてますね。Wikipedia なんか引用しているくらい程度の低いブログであいすみません。

ロウェル・ジョージとFZとの関係というのは、マザーズのレコード・デヴュー以前に遡るわけで、The Factory の唯一のアルバムのプロデュースの前からロウェルは、FZの取り巻きの一人だったわけですね。Little FeatのメンバーとなるBill Payne もそのような中にいたわけですが、マザーズに入れてもらえなかった。Paul Barrereは、そのまた取り巻き、なんて書いたら、叱られそうな気もします

ロウェル・ジョージに限らず、当時のサザン・カリフォルニアは、みんな薬漬けだったわけですが、FZは、ドラッグと教会に関しては強い拒否反応を常に示しています。

リトル・フィート のセカンド・アルバムSailin' Shoesは、Neon Parkがジャケット・デザインをしていて、アイシャドウの濃いショート・ケーキが、ハイヒールを履いてブランコに乗っているという代物です。ドラッグ・ソングが少なからずあります。

ファーストに続いて、Willin' の違うヴァージョンを入れてますが、Cold, Cold, ColdとかSailin' Shoes あたりが典型的なドラッグ・ソングですね。もし、FZがWillin' に拒否反応を示したのだとしたら、ドラッグの問題よりも、密輸の方に反応したのではないかと思ったりします。

Cold, Cold, Cold の歌詞は、リトル・フィートのオフィシャル・ページにあるので、それを引っ張ってきて解釈してみてもいいのですが。訳詩なんて大それた真似はする気はないですけれど、相当性根を入れてかからないとと。それと、copyright の問題はどうなるんだろうとか。

Anyhow, it's too cold to interprete the song titled "Cold, Cold, Cold".というわけです。

リトル・フィートのファーストのジャケットは、ハリウッドのオープン・セットの書割の前で、メンバーがコートを着込んで寒そうにしてましたっけ。

Wikipedia は、ロウェル・ジョージをロック音楽におけるスライド・ギターのパイオニアの一人なんて書いてますが、ECがパイオニアなんかじゃないのは当然ですけれど、本当のパイオニアは誰かって大きな問題ですね。
コンプレッサーをかけた独特のハイ・トーン自体はロウェルの専売特許ではありましたが。

白人ギタリストで最初にボトル・ネックをやりだしたのは、ブルースの系譜という意味ではJohn Fahey あたりになるはずなんですが。エレクトリック・ブルースの文脈で考えるとどうなるかという話です。
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by nk24mdwst | 2008-01-24 13:39 | 音楽

Deep Blues

Deep Blues: A Musical and Cultural History of the Mississippi Delta by Robert Palmer は,個人的には,もっとも刺激を受けたブル-スに関する本です.

入手は、ちょっと難しいですが、Rock & Roll: An Unruly History by Robert Palmerというロックの歴史本も書いてます。

故ロバ-ト・パ-マ-は、イギリス生まれのロック・シンガ-とは同名異人です。ハイ・スク-ル時代のバンド仲間が若くしてハリウッドへ移り、セッション・ミュ-ジシャンを経てLittle Feat に加わる Fred Tackett だったりするのですけどね。

Arkansas 生まれのブル-ス研究家、ブル-ス・フェスティヴァル主催者です。ブル-ス本は,あまたありますが、デルタ・ブル-スとその延長線上のシカゴ・ア-バン・ブル-スの形成、と変成について、地に足のついた説得力のある解釈を提示してます。

ブル-ス自体に対する個人的な感想、経験、評価は皆違うので、何ともいえませんが、少なくとも私には、非常に説得力のある本でした。Muddy Waters とのインタヴュ-も、Joe Boyd がWhite Bicycleで語っていた60年代初頭イギリスにおけるブル-ス・ブ-ムの話と符合しています。

Sonny Boy Williamson Ⅱ(a.k.a. Rice Miller)が重要な登場人物であるのは、当然ですが、彼を巡る話についても、同じア-カンソ-出のLevon Helm が語る話と辻褄が合っています。

パ-マ-は、Charlie Pattonに始まり,Muddy Waters あるいは、Howlin' Wolf を経て Elmore Jamesへとつながる系譜を非常に重視しています。異論は、多々あるでしょうけれど。

1999年6月にシカゴのブル-ス・クラブで見たブル-ス・バンドの印象に直結する論理です。
もっとも最大の問題は、そのブル-ス・クラブ,Buddy Guy がやってるやつとは違いましたが、日本人観光客が数名、後は全部ホワイト中産階級が観客でありました。

ア-カンソ-というのは、クリントン以前に非常に音楽的には、重要な州だと思います。

グリ-ンスパンは、クリントンのことをサックスを吹くだけじゃなくて頭のいいやつだってほめてましたね,日系連載中の私の履歴書で。
あれを読んでいると、グリ-ンスパンというやつは、すごく hunch のきく人なのだと思いました。

身近な小さな事象の積重ねから、マクロ的全体像を描くことのできる希有の才能の持ち主だと。
まあ、深さがどれほどあるか未だに不明のサブ・プライム・ローン問題の確信犯的戦犯第一号でしょうけれど。
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by nk24mdwst | 2008-01-23 13:03 | 音楽の本

Earl Warren

Earl Warren(March 29, 1891 – July 9, 1974)は、アメリカの法律家です。

アラメダ郡のDAを務めたあと、アール・ウォーレンは、カリフォルニア州司法長官になります。
この司法長官時代に、太平洋戦争が勃発し、カリフォルニアに日系アメリカ人の収容所を作った張本人です。

ウォーレンは、その後連邦最高裁長官となり、そのWarren Courtは一連の人種差別、公民権、州と教会の分離等に関し重要な判決を下しています。
重要なものとして挙げられるのは、Brown v. Board of Education事件 347 U.S. 483 (1954)でしょう。この判決が、公立学校における人種分離策を違憲としたのです。
ちなみに、Elvis Presleyが、"That's All Right (Mama)"をSam PhillipsのSun Recordsで録音し、南部でヒットしだすのもこの1954年のことです。

南部の人種隔離政策を否定する連邦最高裁判決とプレスリーによるR&Rヒットの出現に因果関係を見出すかどうかというのは、50年後の日本の片田舎の在日日本人ごときが、簡単に下せる判断ではない事はよく承知していますが、偶然ではないのだと思います。

いずれにしろ、この1954年にアメリカの1960年代は始まったのだと思います。終点はどこか。1970年代の初めという見方が一般的かもしれません。1977年には、終わっていたというべきでしょう。

アール・ウォーレンはもう一つ、JFK暗殺事件の調査を目的としたWarren Commisionとして知られるThe President's Commission on the Assassination of President Kennedyの委員長でした。この委員会は結局、Lee Harvey Oswaldの単独犯という結論を出すわけです。
メンバーは、連邦最高裁長官のEarl Warren, ジョージア州選出上院議員Richard B. Russell,ケンタッキー州選出上院議員John Sherman Cooper, ルイジアナ州選出下院議員Hale Boggs,ミシガン州選出下院議員(後年大統領になります。)Gerald R. Ford, 前CIA長官Allen W. Dulles, 前世界銀行総裁John J. McCloyです。
この中では、ダレスとマクロイが間違いなく大物です。

オズワルドは、ダラス市警の駐車場で組織犯罪と関わりがあったとされるJack Ruby (a.k.a. Rubinstein)に射殺されてしまい真相は闇の中です。

ジャック・ルビーはニュー・オーリンズでキャバレーなんかを経営していたということです。

The BandのLevon HelmのHawks時代の回想なのですが、オクラホマの片田舎の酒場で演奏下のにギャラがもらえず、ホークス一党は、腹いせに店に火をつけて逃げたそうです。
店のピアノが消失して呆然としていたのがLeon Russell, 酒の出る所へ入れる年になっていなかったけれどいつも覗きに来ていたのがJesse Ed Davisだったそうです。

この店の経営者がジャック・ルビーだった。

1950年代中ごろ、白人と黒人が同じ酒場で演奏したりするのは基本的に南部では駄目だったようですが、ギャングがやっているところは警察も目こぼししていたんだそうです。
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by nk24mdwst | 2008-01-22 18:21 | 記憶