Philip K. Dick の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』で何が面白いというか、おかしいと思うのは、アンドロイド狩りの賞金稼ぎをしている主人公デッカードが、自ら、自分がアンドロイドかどうかの検査をする場面です。
自分の正体を自分自身でわからなくなってしまうということです。アンドロイドかどうかもわからなくなったと。 映画の「ブレード・ランナー」のファンの中では、逃げおおせたもう一人のアンドロイドが存在し、それはデッカードだなどという議論があります。 話がそういうことなら単純なサスペンス・ミステリーでしかないのです。 つまり、誰が人間で誰がアンドロイドなのか自分自身でも認識できない状況が存在しうるということをディックは問題提起していると思うのですね。というか、自身の体験が書かせているのでしょう。 SFマガジンだったかのディック特集号で、精神科医の香山リカさんが、ディックの小説に出てくる精神疾患に関わる事柄は、それほど大して変わったことではないと発言していたのを読んだ記憶があります。 そりゃそうだろうとは思いますけど、30年前の話ですからね。ディックの小説の時代設定では、1990年代なんていうのが未来として描かれているわけで。 『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』についていえば、まあ、アクション満載、ハッピー・エンド(映画と小説の結末は違います。)ですが、それも逆に意味深かもしれません。 Walt Whitman は人間と人生をどう考えていたか。 O Me! O Life! O me! O life!… of the questions of these recurring; Of the endless trains of the faithless—of cities fill’d with the foolish; Of myself forever reproaching myself, (for who more foolish than I, and who more faithless?) Of eyes that vainly crave the light—of the objects mean—of the struggle ever renew’d; Of the poor results of all—of the plodding and sordid crowds I see around me; Of the empty and useless years of the rest—with the rest me intertwined; The question, O me! so sad, recurring—What good amid these, O me, O life? Answer. That you are here—that life exists, and identity; That the powerful play goes on, and you will contribute a verse. いみじくもホイットマンもidentity について言及しています。 この『アイデンティティ』(日本語にできないのです、言葉に不自由で)というものは、それほど自明のものであるのかどうかと言うことですね。 ディックの小説ではいわゆる『アイデンティティ・クライシス』に主人公が陥ることがよくあります。 典型は、’A Scanner Darkly’あたりでしょうか。この後になるともう、何がなんだかよくわからんのです。1960年代後半以後のディックの小説は、大昔、邦訳が全く出てない頃に英語もよくわからずに原書を読んだのでなおさら理解しているなんていえる筋合いはないのですが。 『スキャナー・ダークリー』なんかは、得体の知れないガジェットが登場します。要するに他人に完全に成り代わることができるスーツ。これを着て、秘密麻薬組織に潜入捜査する人物が主役の話です。ディック自身のガサ入れされた経験、妄想がネタなのだと思いますが、追いかけている人物と追われている人物が同じだと気づくという話です。 本当のことを言わない生活を続けているわが身を省み、自分は何だろうなどと思うのは、少し危ないのかもしれませんけど。 Jeff Simmons のソロ・アルバム聞いてます。ルシールなんてやってます。 ガール・フレンドの口車に乗って、FZのおふざけバンドを辞めちゃったのですね。Ruth Underwood なんかはコンセルヴァトワールは退屈で、LAへは連れて行ってもらえず、後で、FZからお呼びがかかったときはうれしくてしょうがなかったって言う奇特な人もいたりするんですが。
by nk24mdwst
| 2008-06-11 09:30
| その他
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