ガソリン税の暫定税率引き上げを盛り込んだ租税特別措置法改正案が年度内成立しなかったわけです。道連れになって、4月28日以後の衆議院での再可決まで期限が切れたものがあるのは新聞等が報じるところです。
ガソリン税率の暫定税率と道連れになったものに一覧、つまり、5月31日まで暫定延長とならなかったものは財務省のHPに列挙されています。 民間国外債等の利子・発行差金の課税の特例H20.3.31 措6、41の13、67の16 試験研究を行った場合の法人税額の特別控除(控除率の加算措置に係る部分) H20.3.31 (個人はH20年分) 措10、42の4、68の9 エネルギー需給構造改革推進設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除H20.3.31 措10の2、42の5、68の10 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除H20.3.31 措10の3、42の6、68の11 情報基盤強化設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除H20.3.31 措10の6、42の11、68の15 教育訓練費の額が増加した場合の法人税額の特別控除 H20.3.31 (個人はH20年分) 措10の7、42の12、68の15の2 公害防止用設備の特別償却H20.3.31 措11、43、68の16 地震防災対策用資産の特別償却H20.3.31 措11の2、44、68の19 特定電気通信設備等の特別償却H20.3.31 措11の4、44の4、68の23 再商品化設備等の特別償却H20.3.31 措11の6、44の6、68の26 障害者を雇用する場合の機械等の割増償却等H20.3.31 措13、46の2、68の31 優良賃貸住宅の割増償却H20.3.31 措14、47、68の34 金属鉱業等鉱害防止準備金 H20.3.31 (個人はH20年分) 措20、55の5、68の44 特定災害防止準備金H20.3.31 措20の3、55の7、68の46 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例H20.3.31 措28の2、67の5、68の102の2 海外投資等損失準備金H20.3.31 措55、68の43 交際費等の損金不算入H20.3.31 措61の4、68の66 使途秘匿金の支出がある場合の課税の特例H20.3.31 措62、68の67 欠損金の繰戻しによる還付の不適用H20.3.31 措66の13、68の98 退職年金等積立金に対する法人税の課税の停止H20.3.31 措68の4 住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税制度の特例H19.12.31 措70の3、70の3の2 清酒等に係る酒税の税率の特例H20.3.31 措87 ビールに係る酒税の税率の特例H20.3.31 措87の6 移出に係る揮発油の特定用途免税H20.3.31 措89の3 石油化学製品の原料用特定揮発油等に係る石油石炭税の還付H20.3.31 措90の5 特定の重油を農林漁業の用に供した場合の石油石炭税の還付H20.3.31 措90の6 沢山あるわけですが、少し考えて見ます。 中小企業等が機械等を取得した場合の特別償却(措法42の6等)は、機械等の取得して事業供用する期間要件を平成10年6月1日から平成20年3月31日と定めているので、4月に入った今は、失効しているわけですね。 青色申告法人の欠損金の繰戻しによる還付(法人税法80)の規定は、平成4年改正により、原則として不適用とされている(措置法66の13)のですが、この条文は、平成4年4月1日から平成20年3月31日までに終了する事業年度についてとあるので、現時点では例えば平成20年4月20日決算法人には適用されないことになります。 もう一つ、法人税における交際費等の損金不算入規定(措置法61の4)ですが、この規定も昭和20年代の終わりから半世紀も延長されてきている化石かもしれませんが、条文によれば、平成18年4月1日から平成20年3月31日に開始する事業年度が適用対象です。 仮に、4月28日以後に、租税特別措置法の政府原案がそのまま可決された場合の遡及効の問題が生じます。 特別償却等の場合は、納税者に有利だから遡及効を認める、交際費等の損金不算入規定のような納税者に不利な規定の遡及効が認められるかという問題が生じます。 福岡地裁と東京地裁とで全く正反対の判決が出た所得税における不動産譲渡損失の損益通算と遡及効と同様の問題です。 交際費等に対する課税の問題は、遡及効が認められないとなれば、3月決算(4月1日事業年度開始)の大法人には素晴らしい贈り物ですね。 ただ、政府としては、当然のこととして遡及効を狙ってくるはずです。現在国会で審議されている法案に手を加えずに遡及効が自動的に可能なのか、一文盛り込むかなどと考えたりするのですが。 ただ、不動産譲渡損失のときと同様期間税論をすると、上記に掲げた法人税上の問題は、明らかに全て純粋に期間税の議論の範疇に入ります。新版が出たばかりの金子大先生の租税法13版を錦の御旗にするのでしょうかね。 しかし、期間税だの随時税だのというのは、講学上の議論です。現実の経済取引に適合しているのか、あるいは、租税法律主義を論ずるときに意味のある議論かと疑念を覚えます。 金子租税法でも北野税法学原論でもこの期間税論は、租税法律主義と遡及効のところで出てくるのですが。 租税法律主義において事後法の遡及効が認められるのだとすれば、それは、経済的取引等が行われた時点において、それに関する課税について予見可能性が判断できることがメルクマールとされているわけです。 しかし、行為が行われた日においては課税されないものが、課税される税が期間税である、つまり、行為の行われた日に納税義務が確定するのではなく、納税義務が確定するのは事業年度終了のときで先のことであり、納税義務の確定までには立法はなされていたから課税されることには問題はないという議論は正しいのでしょうか。 逆に、期間税論を根拠とする遡及効を認めると租税法律主義論自体の意味がなくなるのではと考えます。 これとはまったく別の議論として、租税法における遡及効そのものの効果を認めるかどうかという議論がなされるべきなのではないでしょうか。 例えば、ドイツでは遡及効が認められていると記憶しています。成文法にあるということでしょう。 東京地裁判決は、農地法の最高裁大法廷判例を持ち出し論拠としています。しかし、持ち出された判例自体は、農地を巡る私人間の取引であり、租税のような官と民の問題ではありません。 日本においては、租税訴訟のような行政訴訟は民事訴訟の延長線上にあるととらえられているようですが、この考え方は正しいのでしょうか。 租税は、財産権の侵害であり、租税法はその意味で侵害規範として位置づけられ、憲法論は振りかざしたくは無いですが、基本的人権に関する問題です。 したがって、アメリカのように刑事訴訟と同様手続規定、遡及効については、消極的であるべきだと考えます。 Emily Dickinson です。 8 A WOUNDED deer leaps highest A WOUNDED deer leaps highest, I ’ve heard the hunter tell; ’T is but the ecstasy of death, And then the brake is still. The smitten rock that gushes, The trampled steel that springs: A cheek is always redder Just where the hectic stings! Mirth is the mail of anguish, In which it caution arm, Lest anybody spy the blood And “You ’re hurt” exclaim! ディキンソンは、口直し、です。 FZが1970年代の終わりごろから80年代初頭にかけて、つまり、カーター政権からレーガン政権時代に変わる時期のアメリカにおける宗教右翼を批判していることを記しておきます。 昨日、東京のある図書室でCCHのシステム検索を利用してとても便利だと感じました。時間を作って東京へ行かないと行けないようです。Church of Scientology なんてキー・ワードでやってみました。租税関連書籍の図書室で普通の人も利用できるところではナンバー・ワンの図書室ですが、この春から入れたCCHのシステムを利用してみたのは私が初めてだったそうでして。 宗教右翼は、草の根保守と結びついてアメリカにおける反税運動の基礎票であることが見えてきました。日本と左右逆転です。 FZは、Tax the Church!と。 金子租税法では、納税義務の成立についても変なことを書いているような気がします。 Gas Tax や、消費税のことも含めて検討してみなければ。 最近、物忘れがひどいので心覚えです、このあたりは。 エーっと、消費税は、今や日本政府では基幹税として位置づけられていて、法人税は基幹税といえるのかどうか。金子租税法によれば、消費税における納税義務の成立は、課税資産の譲渡の時点だと考えられるのだそうですが、いずれにしろ、課税期間終了時点を納税義務の確定としているので、消費税は期間税なのでしょうか。 消費税の期間税性、あるいは、遡及効を考える上では、税率が3%から5%に上げられたときの一定の取引おける経過措置が設けられたことを検討の手がかりすることができるのでしょう。
by nk24mdwst
| 2008-04-05 12:06
| 租税法(日本)
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