Consumption Tax in Japan Ⅳ

続き

③ 青色申告の保存要件との相違
前述の最高裁平成16年12月20日判決においては、滝井裁判官の反対意見が付されています。同反対意見の趣旨は、青色申告承認取消処分は特典の問題であるのに対し、「仕入税額控除は、消費税の制度の骨格をなすものであって、消費税額を算定する上での実体上の課税要件にも匹敵する本質的な要素とみるべきものである」として、安易な消費税における仕入税額控除否認は、付加価値税としての消費税の本質を否定することになるというものです。
青色申告承認取消処分と仕入税額控除否認の法的重要性の違いを強調している点に注目すべきだとは考えます。学者や実務家の中では、この滝井反対意見に対して高い評価をする人も少なからずいるようです。
しかし、青色申告承認取消処分は手続規定であり、その手続規定上においては提示がなかったので帳簿等の保存がなかったとしてその処分を滝井裁判官は認めています。消費税法30条7項の規定は、課税要件規定であるから帳簿等の提示と保存に関しては、違う判断がなされるべきだというのはかえって自己撞着に陥る議論だと個人的には考えています。
 結果的には、最高裁平成17年3月10日判決で滝井反対意見が全く無視される結果となっただけです。

Ⅴ.簡易課税制度

(1) 制度の概要

基準期間の課税売上高5,000万円未満(消費税施行時は5億円未満でしたが、平成3年改正により4億円未満、平成6年改正により2億円未満と段階的に引き下げられ、平成15年改正により、現行の制度となっています。)の課税事業者の特例として簡易課税制度があります。
簡易課税制度とは、課税売上げに一定のみなし仕入れ率を乗じて控除対象仕入れ税額を計算するものです。

小規模事業者の事務負担に配慮するという目的で設けられている特例で、適用課税事業者は、課税売上げの事業区分ごとに集計するだけでよいことになっています。

また、みなし仕入れ率(消費税施行時は、第一種事業(卸売業)と第二種事業でしたが、平成3年改正により第三種事業と第四種事業が設けられ、平成6年改正により現在にいたっています。)は、第一種事業(卸売業)が90%、第二種事業(小売業)が80%、第三種事業(農林業、製造業等)が70%、第4種事業(他の事業以外のもの)が60%、第5種事業(不動産・運輸・サービス業等)が50%です。 

(2)簡易課税制度の法律的問題点

簡易課税におけるみなし仕入れ率は消費税法30条7項において60%と規定されていますが、卸売業その他の業種に係るみなし仕入れ率については、すべて政令に委任されています(消令57②)。また、第一種事業、第二種事業の定義(消令57⑥)、第三種事業及び第五種事業の範囲(消令57⑤)については、政令で規定されています。
納付税額の算出に直接影響を及ぼす重要な数値が行政府の裁量に任されているという点で租税法律主義に反する〔湖東京至『消費税法の研究』(信山社、1999年)15頁〕
という指摘がありますが、この指摘について、検討をする必要があると考えます。。

さらに、政令において示された各種事業の範囲の解釈、取扱いについては、通達において示されているだけです(消基通13-2-2~13-3-10)。特に、各種事業の範囲について日本標準産業分類によるとしてされています(消基通13-2-4)。

国会における消費税法の審議、消費税導入の際、上記の各種事業区分の方法や日本標準産業分類を用いることについての議論はなされていないのです。
政令委任と租税法律主義の問題以上に大きな問題点であるというべきです。

この点に関し、
「日本標準産業分類は、税法における産業の分類のために制定されたものではないとし、租税法律主義の観点からすれば、租税賦課の根拠となるべき租税法中の用語は、他の法令によって定義が与えられていない場合には、原則として、日本語の通常の用語例による意味内容が与えられるべきである。」(名古屋地裁平成17年6月29日判決)
とした判例があります。

上記の判決は、
「日本標準産業分類においてサービス業に分類されている歯科技工所におけるみなし仕入れ率の適用に関しては、その業務の実態から製造業である。」
と判断して、納税者の主張を認め、
「税法ではない日本産業分類による課税は租税法律主義に反すると考えられる。」
としましたが、名古屋高裁において納税者が逆転敗訴しました。

名古屋高裁の判示は、決して説得力のあるものとは思えません。単に、行政の裁量権に追認し、問題の本質を看過しているに過ぎないと感じます。


(3)簡易課税における実務上の問題点

簡易課税制度における事前申請手続きの厳格さについては、消費税の間接税的性格からある程度やむをえないものともいえます。しかし、これらの届出手続きにかかる税理士損害賠償請求事案が多いのは事実です。

また、前記の名古屋地裁における判決も指摘していますが、日本標準産業分類自体が経済の実態に必ずしも即したものではないことも事実です。さらに、納税者の個別事情等を勘案すると決して実務的に簡易といい得る制度とはいえないでしょう。

なお、簡易課税を選択適用できる課税事業者は、基準期間の課税売上高が、5000万円以下のものに限られています。改正前は、2億円以下だったのですが、この基準が高すぎ、事業者に益税が生じているという批判や、諸外国の同様の制度に比べて、適用基準が高すぎるという指摘がありました。
しかし、日本と同様に付加価値税導入において遅れた国であるオーストラリアは、邦貨換算すると2億円程度以下の事業者について簡易課税制度を用いることを認めています。

オーストラリアのGSTに関しては、興味深い制度設計が見られ研究の余地が少なくないと考えています。

Ⅵ.更正の理由附記と推計課税

(1)更正の理由附記

帳簿記載を義務付ける青色申告の特典としての青色申告者に対する更正の理由附記規定があります。それに対し、消費税法においても帳簿等の記帳が求められていることは同様なのですが、更正の理由附記の規定は設けられていません。

更正の理由附記が記帳義務を負う納税者の権利として位置づけられるのであれば、消費税の場合でも更正という行政処分をする限り理由附記をするのは当然(山本・前掲書386頁)
という指摘はそのとおりだと考えます。
また、
青色申告の理由附記を確認規定とし、適正手続の要請からの理由附記の必要性(北野弘久『税法学原論 第五版』(青林書院、2003年)272頁)
を説く考え方あります。

更正の理由附記に関しては、青色申告者の特典規定ではなく、納税者の権利擁護のための手続保証原則として検討すべきだと考えます。

(2)推計課税

消費税法においては、実定法上に推計課税の規定がありません。そこで消費税に関して、推計課税はできるのかという問題があります。

法に規定がない以上推計課税はできないという考えもあるます。例えば、消費税の課税標準の推計そのものに対して
「租税法律主義に反する」(湖東・前掲書83頁)
として完全に否定的な考え方もあります。

また、同書は、さらに、
「課税標準である売上高を推計するために用いた必要経費等をそのまま控除される仕入税額の推計に用いることは論理矛盾である」
として、仕入税額の推計についても否定的です。

しかし、判例(例えば、最高裁昭和39年11月13日判決、訟月11巻2号312頁)、学説は一般に推計課税を認めています〔北野弘久『現代企業税法論』(岩波書店、1994年)414頁、金子・前掲書671頁〕。

なお、北野、金子両説のよって立つところは、全く異なるので注意が必要です。すなわち、金子説は課税標準である課税売上高を推計により求めそれに税率を乗じ、仕入税額控除は認めないという立場であるのに対し、北野説においては、
「帳簿等によって計算される仕入税額控除は認められるべき」
だという点において両者は大きく異なっています。

法に明文の規定がなくとも推計が認められるとした場合において問題となるのは、推計の対象は何かということでしょう。一般的には、消費税の課税標準である課税売上げを推計し、消費税法30条7項の要件を充たさないので仕入税額控除は認められないとする課税処分が行われているようです。

それに対して、課税仕入れに係る税額の推計も認めるべきという考え方もありえます。このような立場に立つ、仕入税額推計容認論としては、清永敬次「税法(第六版)」171頁があげられますし、さらに、明快に肯定的な立場にたつものとして、田中治「消費税改革の法的問題点」法律時報67巻3号(1995年)19頁があります。

仕入税額控除を認めないと消費税が付加価値税として成立しなくなり、税額相当額が価格に転嫁され、最終的に消費税を負担しているのは一般消費者であるという仮定ないし神話が根本から崩れてしまうのは事実であると考えます。
しかし、消費税30条7項は、仕入税額控除の要件を明確に定めていますから、課税標準である課税売上高を推計されるような場合において、課税仕入れとして仕入税額控除できるものを納税者が反証することは、現実的には非常に困難なことであると考えます。

いずれにしろ、推計課税が必要である場合が予想され、また現実に推計課税がなされているわけですから、消費税法においても推計課税についての規定を設けるべきであると考えます。具体的に、推計課税ができること、推計の対象となるのは何なのかを明文で既定する必要があるということです。

Ⅶ.おわりに

平成17年分から個人の零細事業者が大量に消費税の納税義務者となるが、記帳能力、複雑な税法に対する不知、転嫁の困難さゆえの滞納の増加等々、多くの問題が新たに起こっています。特に大きな影響があるのは、簡易課税制度の縮小に伴い、価格転嫁において立場の弱い中小企業における消費税の滞納の問題でしょう。特に、人件費率の高い業種においてそれが顕著に現れているように感じられます。

消費税が付加価値税であるかどうかという法律論とは別に、付加価値の根本は人件費ですから、消費税の課税標準の基本は人件費、法定福利費等であるということができます。ですから、消費税の税率を引き上げると、それは、雇用を抑制する要因となることに大きな留意が必要だと考えています。ヨーロッパ諸国を見てみると、それぞれの国によって景況は異なりますが、付加価値税の税率と失業率との間に相関関係があることが見て取れるのです

Ralph Waldo Emerson

Experience

The lords of life, the lords of life,—
I saw them pass,
In their own guise,
Like and unlike,
Portly and grim,—
Use and Surprise,
Surface and Dream,
Succession swift and spectral Wrong,
Temperament without a tongue,
And the inventor of the game
Omnipresent without name;—
Some to see, some to be guessed,
They marched from east to west:
Little man, least of all,
Among the legs of his guardians tall,
Walked about with puzzled look.
Him by the hand dear Nature took,
Dearest Nature, strong and kind,
Whispered, “Darling, never mind!
To-morrow they will wear another face,
The founder thou; these are thy race!”


Each And All

Little thinks, in the field, yon red-cloaked clown,
Of thee, from the hill-top looking down;
And the heifer, that lows in the upland farm,
Far-heard, lows not thine ear to charm;
The sexton tolling the bell at noon,
Dreams not that great Napoleon
Stops his horse, and lists with delight,
Whilst his files sweep round yon Alpine height;
Nor knowest thou what argument
Thy life to thy neighbor’s creed has lent:
All are needed by each one,
Nothing is fair or good alone.

I thought the sparrow’s note from heaven,
Singing at dawn on the alder bough;
I brought him home in his nest at even;—
He sings the song, but it pleases not now;
For I did not bring home the river and sky;
He sang to my ear; they sang to my eye.

The delicate shells lay on the shore;
The bubbles of the latest wave
Fresh pearls to their enamel gave;
And the bellowing of the savage sea
Greeted their safe escape to me;
I wiped away the weeds and foam,
And fetched my sea-born treasures home;
But the poor, unsightly, noisome things
Had left their beauty on the shore
With the sun, and the sand, and the wild uproar.

The lover watched his graceful maid
As ’mid the virgin train she strayed,
Nor knew her beauty’s best attire
Was woven still by the snow-white quire;
At last she came to his hermitage,
Like the bird from the woodlands to the cage,—
The gay enchantment was undone,
A gentle wife, but fairy none.

Then I said, “I covet Truth;
Beauty is unripe childhood’s cheat,—
I leave it behind with the games of youth.”
As I spoke, beneath my feet
The ground-pine curled its pretty wreath,
Running over the club-moss burrs;
I inhaled the violet’s breath;
Around me stood the oaks and firs;
Pine cones and acorns lay on the ground;
Above me soared the eternal sky,
Full of light and deity;
Again I saw, again I heard,
The rolling river, the morning bird;—
Beauty through my senses stole,
I yielded myself to the perfect whole.

エマソンは、アメリカの自然の素晴らしさに神を見る。草の根保守の根っことつながるのですね。
でも、コロンブス以前にアメリカには高度に発達した農耕文明が、北米、中米、南米、さらには、アマゾンにもあったのであって・・・。

日本が世界の中心ではないように、アメリカも神から授けられて天地ではないはずです。
[PR]
by nk24mdwst | 2008-01-30 18:38 | 租税法(日本)


<< CHICAGO POEMS Consumption Tax... >>