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3月かと思うような日和です。
週末には、氷点下に下がると予報は言っていますが。外れても構わないのだから天気予報って楽な稼業ですね。

先週の的中確率なんて出してくれればいいのに。

世間の先は、暗い。
January 20, 2009, 4:59 pm
We the people …
… have a new, duly elected president.

That’s no small thing, given recent history.

I found the actual ceremony a bit anticlimactic, which may have been inevitable. Election night was hugely emotional, because we didn’t know the outcome for sure; this time we knew what would happen.
http://krugman.blogs.nytimes.com/2009/01/20/we-the-people/
皮肉屋のクルーグマンらしいですね。

Obama Needs A Trillion Dollars for Recovery Operations Without Raising Taxes. No Problem. Here's Where to Get It. (Joe Rothstein's Commentary)
January 14, 2009 By Joe Rothstein, Editor USPoliticstoday.com
は、保守系のEconomist誌系のEIN NEWSが引用しているだけあってお気楽なものです。

アメリカの新政権の財源は、前にこのブログでも引きましたが、タックス・シェルター、タックス・ヘイブンを利用している富裕層に対して課税漏れとなっていたものを課税するば済むって。

この10年あまりの金融バブルは、金融バブルであるが故、手取り額勝負だったわけですね。まともに商売をやって税金を払って、残りを云々ではなかった。
最初から博打だから、博打に勝ったときの儲けから税金なんか払いたくない。税金を払わないこと自体がスキームの中に入っていた。
このスキームを売ること自体がビジネスであり、投資であり、さらに博打の対象となりうるものだった。
循環論に見えますが、結局、ねずみ講と同じで、堂々巡りしていることにみなが気がついたときにはもう遅いというわけです。

民主党税制抜本改革アクションプログラムについて、少し、見てみます。
Fleetwood Mac とPeter Green の話でもするつもりが、気が変わったというか、ブリティッシュ・ブルース・ブームの話をするほうが準備が要るもので。

2008年12月24日に「民主党税制抜本改革アクションプログラム-納税者の立場で『公平・透明・納得』の改革プロセスを築く-」として民主党税制調査会が発表したものです。
2.税制改正プロセスの抜本改革
(2)民主党政権における税制改正プロセスの基本的考え方
○ 無節操な歳出増大を防ぎ、財政規律を堅持して財政の持続可能性を維持する観点から、減税を行う場合はそれに見合った歳出削減若しくは減税措置の見直しを行うことを原則(Pay as you go原則)とする。
Pay as you go. というのは、要るだけ払え、あるいは、払った分だけ使えということで、要するに均衡財政政策、赤字財政はやらないということです。
財務省の主張と結局同じになります。
必要な分だけ払え、つまり納税して下さいというのはともかく、払った分だけしか使えない、つまり、歳入が赤字だったら使えないので公共サービスを低下させるということですね。

1980年代のニュー・ヨーク市などが財政破綻し、警察、消防、学校等の予算を大幅に削減させたことを思い出す必要があります。
3.各税目における改革指針
 各税目について以下の改革指針に基づき、民主党政権の最初の任期中に順次具体的な制度設計を行い、速やかに実行していく。

(1)所得税・相続税
①所得税

 これまでの所得税制において、格差拡大の是正のための所得再分配機能回復策として最高税率の引き上げによる累進性の強化が必要と言われてきた。しかし、担税力の高い者ほど納税する場所を自ら選択できるような状況の中で、最高税率を引き上げることは、再分配機能の回復策として実効性に乏しい。むしろ所得再分配機能の強化のためには、現行の所得控除を手当や税額控除等に転換することの方が、実効性が高い。
所得税の総合課税を累進税率を用いて行うことは、富裕層が海外へ所得を逃避させるだけなのでそれに対する課税を諦め、つまりいわゆる逃げ足の速い所得である、金融性所得(配当・利子所得等)に関しての課税を諦め、低所得者に対しては、従来日本ではなかった租税制度を使った給付によって対処するといっているわけです。
 
12月24日の閣議決定の金融所得一体課税論につながる考え方ですね。
さらに、こう続きます。
富裕層、高額所得者優遇税制をやると宣言しています。さらに、所得再分配機能を高めていくためには所得控除を税額控除に替えるだけでなく、「給付付き税額控除」の導入を進める。これは税額控除を基本として、控除額が所得税額を上回る場合には、控除しきれない額を現金で給付する制度である。給付とほぼ同じ効果を有する税額控除を基本とすることから手当と同様に、相対的に低所得者に有利な制度となる。「給付付き税額控除」は多くの先進国で既に導入されており、わが国で導入する場合には、所得把握のための番号制度等を前提に、生活保護などの社会保障制度の見直しと合わせて、以下のいずれかの目的若しくはその組み合わせの形で導入することを検討する。
Refundable Tax Credit 自体は、アメリカのEITC(Earned Income Tax Credit)、カナダのGST控除に既に見られます。
これらの国はどちらも納税者番号があります。しかし、番号があるということとそれがきちんと機能しているということは別の話しですね。

いずれにしろ、「納税者番号制度」の導入に対しては推進派だということです。
イ)消費税の逆進性緩和
消費税の逆進性緩和対策としては「複数税率」もあるが、複数税率の導入は実質的に「消費税の物品税化」につながり、消費税の特性である水平的な公平性を大きく損なう。また軽減税率の対象を選択することが極めて困難であることに加え、課税ベースが大きく侵食されて、結果的に基本税率が高くなることにもつながるため、逆進性緩和策として適当とはいえない。
むしろ逆進性緩和策としては「給付付き消費税額控除」の導入が適当である。この「給付付き消費税額控除」は、家計調査などの客観的な統計に基づき、年間の基礎的な消費支出にかかる消費税相当額を一律に税額控除し、控除しきれない部分については、給付をするものである。これにより消費税の公平性を維持し、かつ税率をできるだけ低く抑えながら、最低限の生活にかかる消費税については実質的に免除することができるようになる。
消費税の逆進性緩和については閣議決定も触れていますが、そこでは、複数税率を示唆しています。つまり食料品等の生活必需品に対する軽減税率の導入ということですね。

これに対して、民主党案では、何が生活必需品か問う定義が難しく、このこと自体は世界中で笑い話のような規定があふれているのは事実ですが、複数税率の導入に否定的です。そして、カナダやケベック州に見られるような消費税に関する税額控除を行うという方針ですね。

給付付き税額控除について少し説明がありますが、こういう仕組みです。
年間所得税額30万円、税額控除金額40万円の場合、現在の日本の所得税や法人税においては30万ー40万=-10万となるのですが、このマイナスはゼロとみなして、戻るのは30万円までです。
給付付きスタイルに変えると、マイナスもカウントして40万円が戻るということですね。だから10万円給付金、補助金といってもいいですが、政府が金をくれるわけです。

このタイプの税額控除の有効性について一定の評価を個人的にはしますが、問題多々ありですね。詐欺が頻発するでしょうね。番号では解決できないでしょう。
ありとあらゆるレベルで不正還付や詐欺が起こるであろうことだけは確実です。官民を問わない問題となるはずです。

次いでサラリーマン税制改革です。
格差是正という観点からは、給与所得控除の見直しも検討の対象となる。サラリーマンの経費の概算控除とされる給与所得控除は所得の上限がないが、サラリーマンの必要経費が所得の増加に応じて必ずしも比例的に増加するとは考えにくく、高所得者により有利な制度になっている。担税力に応じた課税を行う観点から、給与所得控除については、一定の上限額を設けることが適当である。
サラリーマンであっても、本来は実際にかかった経費の実額を控除することが望ましいが、現行の特定支出控除(通勤費など一定の経費の実額を収入から控除する制度)はほとんど機能していない。自己研鑽費用、新聞等購読費、業務上不可欠な衣服費など特定支出の対象を大幅に広げることにより、サラリーマンにとって使いやすい制度とする。
 なお民主党としては、本来、全ての所得を合算して課税する「総合課税」が望ましいと考えるが、当分の間は、金融所得については分離課税とした上で、損益通算の範囲を拡大していくことが適当である。
現在は給与所得者は、給与収入金額に応じて給与所得控除額が機械的に算出され、控除後の金額に対して課税されるということになっています。
大多数の人は年末調整で終わってしまうわけです。

ただし、特定支出控除といって実額経費を控除できる制度が存在しますが、この制度の利用者は年間数名だとされています。

格差の観点から云々ということで、現在上限のない給与所得控除の上限を設けるのだと考えられます。これは、閣議決定と同じ。
ただし、給与所得控除全体の設定の仕方によっては低所得者に対する増税にもなりえます。

サラリーマンの必要経費として例えば、業務上不可欠な衣服費という表現があります。これを見て、スーツやネクタイ、ワイシャツが経費で落ちると思ったら大間違いです。
その業務に特に必要な衣服ということですから、消防士の耐火服を自費で買ったといったようなものに限定されることになります。アメリカ等の例ではそうですから。

「金融所得については分離課税とした上で、損益通算の範囲を拡大していくことが適当である。」としているわけで、二元的所得税論をまたも展開しています。どこが閣議決定と違うのか、といいたいわけです。

次いで法人税についてです。
(2)法人税
民主党は租税特別措置の抜本的な見直しを行うこととしているが、これを進めて課税ベースが拡大した際には、企業の国際的な競争力の維持・向上などを勘案しつつ、法人税率を見直していくこととする。なお、租税特別措置の見直しにあたっては、研究開発の促進など真に必要な措置については、現在の時限措置から恒久措置へと転換していく。
租税特別措置というのは全て時限立法ですが、どれも現実的には恒久化していて陳腐化しているものもあります。それよりも、特定の利益集団を利するものが多いことが問題です。

これに関しては、「抜本的な見直し」といいながら、課税ベース拡大を前提としていますが「法人税率を見直していく」ということで、課税ベース拡大、法人税率引下げ論ですね。
それと、「企業の国際的な競争力の維持・向上などを勘案」するわけですから、国際的な大企業優遇は続けるということです。

言うに事欠き、一番根拠のあやふやな研究開発促進税制に関しては廃止どころか恒久化を言うんだから閣議決定よりひどいかもしれません。

租税特別措置についてこういっています。
しかし、税収を減ずる租特は、財政負担の増加という意味では歳出と全く同様の効果になる。また、それが特定の対象に、特定の政策を実現するために講じるのであれば、実態は補助金と何ら変わることはない。つまり、租特は「隠れ補助金」なのである。
北野弘久先生のいうところと同じで、私もそう思いますが、前段の租税特別措置の恒久化と矛盾極まれり、です。

補助金と租税特別措置による隠れた補助金の違いですが、補助金であれば、どこの何と言う企業にどういう目的でいくら交付したかが明らかになりますが、租税特別措置による租税の減額だと統計資料として出てくるだけで透明性が確保できません。
(4)消費税
 消費税に対する国民の信頼を得る第一歩は、その使途を明確にすることである。そのためには消費税収を財政赤字の穴埋めには使わないことを約束した上で、最低限のセーフティネットとしての年金、医療、介護など国民に確実に還元することになる社会保障以外に充てないことを法律上も会計上も明確にすることが必要である。
 また消費税の制度自体にも国民不信の原因があると考えられることから、インボイスの導入などにより制度の透明性を高め、また逆進性対策として「給付付き消費税額控除」の導入を図ることが必要である。
消費税の福祉目的税化、インボイス導入論です。
なお、民主党は複数税率に否定的であることに留意ですね。

もっと問題なのがこの後です。
4.執行体制の改革指針
(1)社会保障番号制度と歳入庁設置
民主党は、社会保障制度の効率化を進めつつ、真に手を差し伸べるべき人に対する社会保障をより手厚くするために、正しい所得把握体制の環境整備が必要不可欠であり、そのためには番号制の導入が必要と考える。
 このような考え方に立ち、社会保障給付と納税の双方に利用できる番号制度の早急な導入を進める。
利用する番号として最も望ましいのは、「消えた年金」「消された年金」の再発を防ぐため国民全員に交付する「年金通帳」の番号であるが、早急な番号制度の導入が必要なことから、政府が現在検討している社会保障番号も含めて検討していく。
またもや番号制度導入論です。

さらに租税と社会保険料の賦課徴収の一元化を述べています。
②歳入庁の創設
税金も社会保険料も国が賦課徴収を行うという意味では国民にとって同じであり、その納付先が異なることは国民にとって利便性に欠け、国にとっても非効率である。また公的機関で最も所得捕捉能力の高い徴税当局が保険料を徴収することによって公平性も確保できることになる。
民主党は、現在年金の保険料の徴収を担っている社会保険庁を廃止し、その機能を国税庁に統合する。統合された機関の名称は「歳入庁」とし、「歳入庁」が税と社会保険料の賦課徴収を一元的に行うこととする。
 歳入庁は、国税と国が管掌する社会保険料の徴収を行うこととなるが、国税と徴収対象や賦課基準が類似の税について自治体が希望する場合、地方税等の徴収事務を受託することも検討する。
地方税まで一元化するというのだから歳入庁は強大な権限を握りますが誰がハンドルを取るのですか?

番号制度については、既に、住民基本台帳制度、基礎年金番号がありますが、後者は、未成年が入っていないので納税者番号としては適しませんね。後、税務署単位の整理番号というのがあります。納税者番号と称していないのが味噌ですが。

少しはいいことも書いてあるので褒めます。
(2)納税者の権利等

①「納税者権利憲章」の制定と更正期間制限の見直し
 国民の納税者としての意識を高め、より強固な民主主義を構築していくための第一歩として、確定申告を原則とし、給与所得者については年末調整も選択できるという制度を導入する。また、これを実現するにあたって、納税者の権利を明確にするために「納税者権利憲章」を制定する。
納税者の権利を守るための具体的な改革として、更正等の期間制限が課税庁からの更正と納税者からの修正で異なる点について見直していく。特に課税庁の増額更正(事後的な納税額の増額)の期間制限が5年であるのに対して、納税者からの更正の請求(事後的な納税額の減額)の期間制限が1年であることは納税者の理解を得られにくく、早急に見直す必要がある。
納税者権利憲章を定めるといっている点については、二重丸ですかね。
給与所得者が確定申告と年末調整を選択する云々に関しては、私が、過去に英語で書いたものがこのブログにあります。
更正の期間制限については、当たり前です。権利憲章は中身に踏み込んでいないのですが。
○いわゆる「特殊支配同族会社」の役員給与に対する損金不算入措置は廃止する。
この馬鹿げた法人税改正を元に戻すというのも丸です。

一体何様だといいたいのがこの部分です。
(5)徴税の適正化
○毎年、1兆円弱の新規滞納が生じている現状に鑑み、徴税の適正化を図る。また個人・法人合計で1000億円近くも加算税が生じている状況を是正するため、罰則の強化や重加算税割合の引き上げを行う。
○消費税の還付額が年間3兆円にも達しているが、その中に相当額の不正な還付が存在すると考えられる。これを防止するため、還付に係わる調査機能を強化する。
納税者の権利拡大と同時に義務の強化というのは当然の話だとは思います。
しかし、この書き方、なんですか一体。課税庁の保守派ゴリゴリ顔負け、役所の人間の言い草です。

課税強化の中で滞納に触れている部分に関しては、アメリカのタックス・ギャップ論につながりますが、徴収を強化するということですね。
加算税等に関する税率アップは先進国に共通して見られることだとだけ指摘しておきます。

最後は、国税庁トップのような言い分で、このネタ全体、書いたのは本当は誰かって疑いたくなります。

権利憲章に触れている以外は、閣議決定の方がまだましだと私には思えます。

財務省もこんなことをいっている民主党なら大歓迎でしょう。

Derek Trucks がいいソロしています。

Gov't Mule はやっぱり好きです。
by nk24mdwst | 2009-01-21 14:01 | 租税法(日本)


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