東京は晴天です。しかし、風が冷たい。
朝一番に起きて出てきたときは、うっすら雪化粧していました。午前6時半でもまだ暗く、ライトを点灯。 シャーベット状の雪のある高速は、怖いです。富士山が実にきれいでした。 昔、ある国家試験の受験校で受験指導をアルバイトでしていたことがあります。 不況になると国家公務員を目指す人がまた増えるのでしょうね。それから、国家資格等の資格を取って自立を目指す人も増えるのでしょうか。 誰がいったのか知りませんが、こんな言葉がありました。 曰く「〇〇資格というのは、足の裏についたご飯粒と同じだ。取らないと食えない。取ったからといって食えるものではない。」 弁護士等の資格がないと弁護士は、できません。しかし、司法試験に合格し、司法修習所を経て弁護士登録したところで、それで飯を食えるということが保障されているわけではないというのはそのとおりなのですね。 これは、あらゆる資格を要件とする職業についていえることでしょう。ただし、法が、特定の業務に関して一定の資格を持つものにしかその業務を行うことを規制している仕事というのは少なくありません。 しかし、その法に触れない範囲というと変ですが、資格がなくてもその特定の業務に隣接した範囲の職域において営業的に成功する人というのはいるものです。 いわゆる業法と業法違反の線引き、つまり無資格者の問題については深く言及しないことにします。 さて、受験校で講師をしていた頃の話に戻ります。 当たり前の話ですが、ある日、みなは思い立ち、その資格を取ろうと思い受験校の門をたたくわけですね。当然、半年とか一年分の受講料と教材費を納め、受講初日に臨みます。 受講生が一番多いのは受講初日です。期間の半分を過ぎたあたりで受講生は半分になります、といいたいのですが、三分の一になりますね。最初の一ヶ月で半分になります。 講師が悪かったからということは別にして、教材を手にし授業が始まって、自分が向いていない、あるいは、ついていけない、勉強する時間が無い等のことに気づくのでしょう。 とにかく、最初の講義の日が全てなので風呂敷を広げます。 みなさん、これから私が合格三原則をお教えします。これさえできれば、合格、絶対間違いありません、などというのです。 必要充分条件としての合格三原則なのですがね。 合格三原則その一は、まず、受験の願書を出すことです。 ここでたいてい大きな笑いが起きます。何を馬鹿なことをいうのだというわけですね。いわゆる「つかみ」としてはべたですが。 しかし、一年間以上も一所懸命、勉強してきていたにもかかわらず、うっかりして願書を出し忘れたという話は現実にあるのですね。それも少なからず。願書には当然締切日がありますし。 いずれにしろ、願書を出さなければ試験は受けられない。 原則、その二は、試験日に会場へ行って受験することです。 また、たいてい笑いが起きます。 受講初日ですから当然ですが、現実には次回の講義以後来なくなる人もたくさんいるはずです。もちろん、自学自習で受験すればよいのでそれはよいのですが、この受験しないというのもあるのですね。 合格レベルに達していても、当日何が起こるかわかりません。遅刻すれば受験できません。 いずれにしろ、上記の二つは試験に合格するための必要充分条件であるのは間違いないのです。そして、それができない人が少なからずいるのも間違いない話です。 さて、合格絶対三条件、その三は、試験で「合格答案を書くことです。」と締めくくるのです。まあ、サービスでその合格答案の書き方はこれから試験までに私がみなさんに伝授します、くらいのほらは吹きますが。 合格答案の書き方の伝授を私ができるかどうかは別の話ですが、合格答案が書ければ、合格します。 受験までの時間や受験者の能力にはみな限界がありますから、できるだけ効率的に合格答案を書けるようになりませんが、その合格答案がなにかということがわからなければ書けるはずがありません。 問題は、合格答案とは何かということです。 答えは簡単でそのときのその試験で合格点を超える点数を獲得する答案です。笑う人半分、白ける人半分ですね。当然でしょう。 ただ、合格答案は、循環論法ですが合格する答案としかいえません。試験委員をやったことがないので本当のことはわかりませんが、いくつか確実に指摘できることがあります。 まず、受験者が無意識に目標としているであろう満点答案と合格答案は違うということです。点数でいうなら、不合格者で最高点の人より1点多い答案が合格答案です。 運転免許試験のように受験者の答案を採点し一定の点数を超えた人を合格するような試験もあります。しかし、試験の目的が受験者の能力を見ることだけではなく、合格者の数はあらかじめ決まっており、選別をする、つまり上位10%を採る試験だとしたら合格答案の意味は違ってきます。 上位10%に入る答案が合格答案です。もちろん、満点は入るでしょうが、私が受験指導をしていた資格試験は満点はおろか、時間内に全ての回答をすることも不可能であるような試験でした。 逆説的ですが、この場合の合格答案では、誰も解けない難しい問題に正解することに大きな意味はなくなります。 時間的に解ける問題を取捨選択し、棄てる問題を作る必要があります。出題者も意地が悪いので、従来出たことのない問題を必ず出してきたりしますが、これは満点者を出さないためくらいに割り切ることが必要です。 要するに合格レベルにあると思われる人が正解を書くであろう問題を速やかにみつけだし、それら全てに関しては時間内に正解を書くということが必要になります。 受験技術論ですね。ただ、少なくとも、どの問題は誰でもでき、どの問題はほとんどの人ができるか、そしてどの問題が合格レベルの人が必ずできる問題家ということすばやく判断し、時間配分を決め答案作成にかかる必要があります。 受験者のレベルは毎年、変わるはずなのですが、合格率がある一定率であるという結果から見ると採点がどのように行われるかの想像はつきます。 問題のレベルを見極めることは自分でそれなりに勉強しないと当然できませんけれど。 税理士試験とその試験は呼ばれています。 この試験の受験者の中にはかなり多くの税理士事務所勤務者が含まれています。経験者も含みます。 この人たちは、実務と試験は違うという切り替えが必要です。実務でやっていることと試験の正解が違うということが往々にしてあります。それ以前に、実務では問題とされない枝葉末節が試験では重要になってきます。 逆に実務では金額の桁間違いなどすれば致命的ですが、試験はそんなことありません。 税理士試験は、思考力を問うというよりは、暗記力と短時間の計算能力、判断能力、筆記能力が問われます。 ここでいう判断能力というのはどの問題を棄てるか、それから、文意をどうすばやく読み取るかということです。税法科目の計算問題であれば、どの通達が問題となっているのかということをすばやく判断する能力です。 どの通達かということまで知っている必要があるかどうかも不要かもしれません。受験テキストのどのパターンか、自分はそれが解けるか、解くのにどれくらい時間がかかるか、他の人は解けるか、どれくらい時間がかかるか、棄てるかどうか、という判断です。 この税理士試験のシステムは非常によくできていて、受験生の思考能力を奪う試験問題スタイルです。とにかく分量が多いので、計算問題を解きながら、論文問題という名の条文の丸写し問題の構成を考える必要があるくらいですから。 日本の試験問題一般にいえることですが、基本的に正解があります。少なくとも出題者が想定している正解はあり、通常、受験者にもそれはわかります。つまり、法令や通達の条件のどれに当てはまるかの判断をすればよいのかというレベルだからです。 しかし、現実の社会は全く違います。法令、通達を全てそらんじていたとしてもそれで現実に全て対処できるわけではありません。 試験においては事実は明示されていてそれに関してどのような処理が必要かという判断ができるどうかを試されているだけだからです。それに対し、現実社会においては、行われた、あるいは行われようとしている一定の経済的取引が法令等の要件に適合しているかどうか自体が判断の対象となるからです。 さらに、法令等の条文自体の解釈の問題も生じます。 試験では、条文を知っているかどうかを問われるだけです。 常に正解がどこかにあるはずだという考え方で受験し、合格したとしても現実はそうではないのですね。そのときに、自分で判断する能力があるかどうかということですが、税理士試験を通り抜けてくるときにその能力を一度棄て去る必要があるのですね。 自分でその能力を捨て去ったという意識がないとどうなるかというと、権威のある人、役所に質問をする、あるいは、とまれの線の100メートル手前で止まるというようなことが起きないわけではないのですね。 いわゆるセンター試験スタイル導入以後、社会全体に正解をどこかから探してくるという風潮が強まったように思います。 このような空気は、小学校において既に充満していて、結果的にそれが不登校やいじめにつながっているような気がするのですけれど。 最後のところは、途中省略で飛躍くしているのですけれど。
by nk24mdwst
| 2008-12-27 15:06
| 租税論
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